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3.クレインと使者

「――んああああぁぁぁああ痛っでえええぁ……」


 頭痛。

 時刻は午前9時。

 飲みすぎた。昨晩なにしたんだかもう覚えてない。

 覚えてないのにギルドがやばいことだけは覚えてる。

 これだから酒は駄目だ。馬鹿の飲む汁だ。人類は馬鹿だ。お前らのことだ。



「くっそぁ全人類死ね……。ええええと、夕方にまた会議だったな……今度こそはマジに進めないと……」



 昨日の自分に任された悩み事を処理しねばならぬ。

 なんて野郎だ昨日の自分。糞髭が過ぎる。親の顔が見てみたい。

 とりあえず顔を洗って……。



「……んん?」



 ノックの音。

 めんどくさい時に限って来客は来るもんだ。世界の法則だ。

 ドンドンドンドン頭に響く。なんだってんだ全く。



「はあいはいはい、どなたぁ?」


「おはようございますクレイン殿。……おや、いまお目覚めのご様子ですね」


「ん? 誰……。…………」



 見知らぬオールバックの青年。外には妙に立派な馬車。

 誰かは知らんが、この立派な服装ならよく知っていた。

 「城」の人間だ。

 ……。



「はああああぁぁぁぁ…………。なんなのさぁもう…………。めんどくさいいいいぃ……。」


「え? いかがされましたか」


「はああぁぁぁあぁんもおおおおおん……。『使者』がなんの用ですかね……?」


「ああ、いえ。実は」


「いや、やっぱいいや、わかるから……あと三十分ぐらい待ってくださいよ、しっかり準備するから……」


「ええ、お願いします」




 あっという間の三十分。

 身なりを整え連行されて。

 馬車に乗せられどこまでも。




「――いやはや、改めまして……お目にかかれて光栄ですクレイン殿」


「お世辞でも嬉しいよお……。しかし見ない顔だね、新入り君かい?」


「ええ。アンスと申します。お見知り置きを」


「君、冒険者に興味ない? もしくはデスクワーク全般」


「は? い、いえ。申し訳ありませんが……」


「おしごと嫌んなったら来なよお、歓迎するよお。まだギルドできてないんだけどもねんっふふふふ」


「ははは。お気持ちは嬉しいですが、重要な責務がありますゆえ」


「責務ねえ。冒険者には縁遠い言葉だよ」


「そうなのですか?」


「嘘。責任ばっかり」


「そんなものでしょうね、どこも」


「そんなものなんだよねえ、どこも」



 そんなものばかりのあれやこれを酒で洗い流したり、流せなかったりな人生。

 酒ではどうにもならぬ問題が迫りつつ、それとは別な目的地が迫りつつ。

 やってきたるは、王城――。


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