2章おまけ「蜂の巣コレクター」
「――御覧くださいシルティさん! この蜂の巣……凄まじい巨大さですッ!」
「本当に大きいですね……」
「いやあ、これは……! 私が今までに駆除したどの巣より大きいです! すごい……!」
「はあ、そんなにですか」
「ええ! 記録更新です! 持ち帰って保管せねば……!」
「先日も保管しておりましたが……。これで三つ目ですよ」
「勲章のようなものですからね! では壊さぬよう、丁寧に運びます……! あ、そちらをお持ちください……!」
「はあ……」
「んふふ、んふふふふ」
「ご機嫌ですねえリリデス」
「なにせ蜂の巣ですし!! んふふ」
(わからない……)
「――リリデス。あのですね……」
「はい?」
「巣の持ち帰りはもういい加減にしませんか……?」
「え!? 何故!?」
「棚に壁に机に椅子に、巣、巣、巣……。ギルドが蜂の巣だらけではありませんか……」
「し、しかしどれも立派な巣ですから。捨てるのも忍びなく……」
「限度というものが……。既に10を超えておりますよ……」
「え、縁起物ですし……」
「というかここ、王都のくせにスズメバチ多すぎません……? どうなってるんですかリリデス……。大丈夫なんですかこの国は……」
「それは私に言われましても……」
「とにかく。全部とは言いませんが、多少は整理しましょう」
「は、はい。では少々お待ち下さい。今から鑑定を行いますので……」
「鑑定」
「ううーん……。やはり大きさで考えるとこの巣は確保……」
「……」
「横幅からいきますとこちらの巣も確保……。こちらは大きさは不十分ですが、形が素晴らしい……。確保……」
「…………」
「あ、これはいいですね! 色艶に形、完璧です。確保……。こちらは大きさが惜しいですが、ユニークな形ですね、確保……」
「………………」
「こちらは壊れてしまっていますが……。しかし内部構造が見える点は素晴らしい……確保……」
「リリデスどきなさい。私が全部捨てます」
「ッ!!? な、な、なんてことをするんですかシルティさん!!?」
「捨てましょう……。時間がもったいない……」
「最高の時間じゃないですか!? お、おやめくださ……! ああ! ああーッ! ッあああああーッ!!!?!?」
「――わ、わかりましたシルティさん、こうしましょう! 巣の扱いに関して、正式なるギルド規則を定めようと思います!!」
「規則を定める程のものなのですか……?」
「まずは保管数ですが……。最大保管数を十個までとします!」
「多い。一個」
「……な、七個! 七個で……!」
「多い。二個」
「……五個! 五個で何卒……!」
「多い。三個」
「い、一個刻みの交渉術はおやめくださいシルティさん……ッ!」
「で、では最大保管数はシルティさんのご希望どおり三個で……」
「ご希望から言えば一個だけなのですが……」
「次にですが! 巣の良し悪しを見極めるにはある程度の時間も必要! よって巣を処分するまでの保留期間を定めます!」
「保留期間」
「新たに巣を獲得してから、1ヶ月間を保留期間としましょう! それを過ぎた物は容赦なく捨てるということで!」
「長い。一日」
「……は、二十日! 二十日間! 二十日間で!!」
「長い。二日」
「……じゅ、十五日! 十五日間!」
「長い。三日」
「ですから一日刻みの交渉術はおやめくださいシルティさん……ッ!」
「わ、わかりました。では保留期間は七日ということで……」
「長い。四日」
「七日で何卒……! 何卒ォ……!」
「その蜂の巣への執念はどこからきてるんですか……」
「では七日を過ぎた後! 七日を過ぎた後!! 捨てるということで!! よし七日!!」
「しょうがありません、ここは譲りましょう……。では今から七日の後、三個を残して全て処分するように」
「かしこまりました! ……今回制定したギルド規則は明文化し、第一条として壁に貼っておきますね!」
「記念すべき第一条が蜂の巣でいいんですか……?」
「――うう、さようなら……。さようなら皆さん……。今日で、お別れです……」
「決まりましたかリリデス」
「は、はい……。これらは全て……。廃棄いたします……」
「ええ。よろしくおねがいします」
「さようなら、ハッチー……。ごめんなさいねハチモス……。忘れませんからねスズッチー……」
「名前つけとる……」
「では今から掘ってきますね……」
「……? 掘る?」
「? もちろん埋めるんですけども……」
「可燃ゴミでいいじゃないですか」
「……可燃ゴミッ!!? 可ッ…………可燃ゴミッ!!?」
「? 可燃でしょうこれ。すごい燃えそうですけど」
「そういうことではなくてですね!? ゴ、ゴミだなんて罰当たりな……!?」
「ば、罰当たり……? もしかして蜂の巣云々はカルラン教の教義か何かで……?」
「そ、そういう訳ではありませんが……! 例えば大事なペットが亡くなった時、可燃ゴミには出しませんでしょう!?」
「ペットと同格なんですか蜂の巣……!? そ、そこまで入れ込んでいたとは……っ」
「当然ですよ!!」
「あの、リリデス……。そこまで言うのであれば……」
「はい?」
「これ、あなたの自宅で全部引き取ればよいのでは……? 持っていって構いませんが……」
「……」
「……」
「…………」
「…………」
「いや、それは邪魔になりますし……」
「なんでやねん」
~FIn~




