7.ギルドの冒険①
――馬車に揺られて三十分。
やってきたるは蒼々とした森の中。
王都周辺といえど、案外緑に囲まれたものです。
「ここには初めてきますねえ」
「冒険者にはあまり見所のある場所ではありませんから。薬草探しには悪くないんですが」
「ということは今回の目的は採集でしょうか?」
「いえ。この先に目的地があるんですが……。まあ、採取でもしながら行きましょうか」
シルティさんの先導により、緑の中をずんずんと突き進みます。
思えば最近、二人きりでの行動が続いております。冒険に関しては初のペア行動。
改めて考えると、なんというかこう……いいですね! とても、その……いいですね! とても!!
「ふふふふ」
「ご機嫌ですねリリデス」
「いえいえ。ふふふ」
小柄ながらも力強く、緑の世界をまっすぐ進むシルティさん。
それに大柄の私がつつ、と付き従います。
小さき背中、されど大きな背中が、否応なく私の視界を占領いたします。
「ふふふふ、ふふ」
「……本当にご機嫌ですねリリデス」
「い、いえいえ。お気にせふふふ」
「お気にせざるを得ないのですが……」
「そ、そんなことよりシルティさん、あれふふふ薬草じゃないですかねふふ」
「おや。よく見つけましたね、採っていきましょう」
「ふふふ」
解熱作用のある薬草を二人で採集です。
ぷちぷちと手折っていくシルティさん、危うく私の手が触れそうになります。こういうのはいけません、いけませんよ。
心をしっかりと保ち、採集作業を続けます。
……ちらとシルティさんに視線を向けてみますと。
木漏れ日を銀な御髪で反射させ、えも言われぬ麗しき光の束を作り出しております。
アンニュイな御顔がまたそれに映えて、なんともなんともな。ああ、ああ。それはもう。
「お美しい……」
「え?」
「……え!? いえ……え!!?」
「そうですね。美しい光景だと思います。手つかずの自然というのは」
「そ、その通りですね! ふふ、ふ……!」
……シルティさんに救われてからというもの、様々な想いが募って仕方ありません。
信仰の下に生きてきた私にとって、これ程まで他者に感情を抱いたことなどなかったのです。
いつまでもこの方に付き従いたい、導かれたい、お守りしたい。今までにない感情の迸りを感じます。
とはいえ、目下の願いはただ一つ。
この「冒険」の時間が少しでも長く続けば良い。ただそれだけを願うのみです。
ほんの少しでも長く。願わくばいつまでも、いつまでも。
いつまでも……。
「……あれ? ……」
「? どうしましたシルティさん」
「……着きました」
「……え?」
「……」
「つ、着いたとは?」
「……目的地に」
「……え!?」
早すぎる冒険終了の合図。
まだ二十分程度しか経っておりません。馬車に揺られていた時間の方が長い冒険……。
その終着点には……。




