2.ギルド始動?
「――正直に言いますと、我々に依頼が持ち込まれることは希望薄ですね」
「な、何故でしょう……」
朗らかな陽光が降り注んでいたはずの事務所内。
気づけば日は陰り、シルティさんの美しき銀髪も鈍色に。
陰に佇むシルティさんもお美しいですが……。
「……我々は現在、評判が非常に悪いです。考えてもみてください。大手ギルドが分裂し、残ったのはたったの二名。傍目から見て、明らかにこちらに非があったと映るでしょう。」
「全面的に私が悪いのでその通りなんですが……申し訳ありません……」
「そのうえ二名ではギルドとしての体裁をなしていません。こんな所に仕事を持ち込む人も珍しいでしょう」
「……もしかしてギルドを維持する意味ってあんまりなかったのでしょうか……?」
「国の制度として『冒険者』登録されている訳ですから、フリーと違って社会的立場が遥かに良いですよ。この御時世、最低限の身元保証がされているというのはかなり重要です。昨今、ギルドも冒険者も氾濫してはいますが……。それでも『自称冒険者』よりはるかにマシです。他にも税の優遇ですとか、武具の割引特典ですとか……」
「制度……。こう言うのもなんですが……自由なイメージの『冒険者』とはちょっと違いますよね」
「過去には一つの冒険者ギルドしかなかったそうですが……。結局は我の強い者たちの集団、様々な問題が起きて分裂、ギルドが多数発生するようになったとか。そこに国が管理を始めて軛をかけた、と。数多の武装集団が野放しなんて、国としては厄介極まりないでしょうから」
なんだか世知辛き世情を感じてやみません。
思えばクレインさん、机の上で唸っていた時の方が多かった気もしますし……。
壮大なる冒険と地道なる生活、自由の謳歌と制度の束縛。全てが地続きなのだということを思い知らされます……。
ギルド運営、マスターとして頑張っていけるのでしょうか……。
「話が脱線しましたが、二名のギルドに依頼の持ち込みは望むべくもない、ということですね」
「仲間を増やすしかない、ということでしょうか……?」
「仕事のないギルドに登録する人はいないでしょう」
「では仕事を……あれ?」
「人のいないギルドに仕事を依頼する者はおりません」
「……堂々巡りじゃないですか?」
「堂々巡ってますね」
「お、お疲れ様でした……本日は解散……」
「だからまだ疲れてませんよリリデス」
お疲れ出来ない状況が続きます……。
堂々が巡ったうえ八方すら塞がっているようで、どうにもならない気がしてくるのですが……。
ああ、この閉塞感からお助けくださいシルティさん。私の導きの光……。
「まあ、それらの面倒事は一旦置いといて。まずは気ままに冒険を楽しんでみませんか、リリデス」
「……気ままに?」
「問題は追々解決していきましょう。冒険者の本分は冒険そのものですから。先にあなたが言った『自由なイメージ』で、何かやってみませんか? あなたの、やりたいことを」
「やりたいこと、ですか?」
「ええ。リリデスのやりたいことをやるんです。お金にならずとも、それらを活動実績として報告していけば……いずれは仕事も増えるかもしれませんし」
「な、なるほど」
「なにより私が……リリデスのやりたいことにお付き合いしてみたいな、と」
「……」
私自身の、やりたいこと。
信仰に関することを除けば、ほとんど考えてこなかったような。
それにシルティさんが、付き合ってくださる。
……。
「でしたら、その――」




