1.ギルド始動
――朗らかな陽光が降り注ぐ事務所内。
銀の御髪をきらきらと輝かせるシルティさん、今日も美しく佇んでおります。
見とれてばかりではいけないと背を正し、本日のお仕事を――ギルドマスターとしての責務を果たすため、精一杯声を張ります。
「それでは会議を始めます!」
「よろしくお願いします」
「はい、よろしくおねがいしますシルティさん!」
たった二人のギルドです。
それでも正式なギルドなのです。シルティさんのおかげで成ったギルドです。
この方がここにいらっしゃる限り、どこへだって行ける気がしてくる、そんな心強いギルド。
ああ、本日も凛として、気品に溢れて、まるで後光が差しているような……。ああ、ああ、ああ……。
「……リリデス?」
「し、失礼しました……。それでは、ええと、ギルドの今後の方針に関してですね……」
……私は大きな過ちを犯しました。
良かれと思った行動が、多くの方々の心を乱してしまいました。
到底許されないような、恨みを買うようなことをしてしまいました。
しかしそれでも私を見捨てず、慰め、寄り添い、側に居てくれたシルティさん。
私はこの方のため、そして己の信仰のため、全てを投げ出し邁進する覚悟を持っております。
このギルドは第一にシルティさんのため、第二に私の信仰のため。そのためにあるのです。
「――という訳で、本ギルド『導きの光~シルティ同胞団~』はシルティさんの名声を広めることを第一の意義とし、第二としてカルランの虚無から来たる御光を民衆に広めんことを……!」
「…………すみませんリリデス、少し……。少し待ってください……本当に……待って……ください……」
「え? だ、大丈夫ですかシルティさん?」
顔が微かに曇るシルティさん。
曇った顔もお美しいですが、曇らない顔の方がもっとお美しいことは言わずもがな。
ここ最近お疲れが溜まっているご様子。本当に心配でなりません……。
「……まず私の名声に関してですが、そこは第一としないていただきたい、と言いますか」
「え!? で、ですが……」
「……名声とは後からついてくるものです。目標としなくてもよいでしょう……特に私個人のは……本当に…………」
「な、なるほど……?」
「あともう一点。カルランの名は出してはいけません。以前も言いましたが……」
「……あ」
「言わずとも分かるでしょうリリデス。危険なことを」
「す、すみません。ついうっかり、いつもの調子で……」
「もう一度いいますよリリデス。カルランの名を唱えること、そして布教活動は禁止です」
「はい……。誠に申し訳ございません……」
「……しかし、あなたが己の信仰のために行動することは決して否定しません。無論、社会常識の範囲内で、ですけれども」
ああ、ああ。シルティさんの優しさが全身を貫きます。
暗に私の信仰を――誰からも否定され、忌み嫌われ、歴史から虐げられた信仰を、認める余地を残してくださっているのです。
これが「愛」でなくてなんでしょう? 多義的な愛の観念の中でもよりラディカルな、一切を照らさんとする、深き深き全的なる愛を感じてやみません。
これぞシルティさんなのです、これぞ我が導きの光……。
「……リリデス、どうかしましたか」
「いえ、なんでもありません、ふふ……」
「? ……まあ方針もそうですし、他にも様々な問題点や解決すべきことは多々ありますが……追々にしましょうか」
「え? いいのですか?」
「冒険者の本分は『冒険』ですから。まずはお仕事、といきませんか」
「……! そうですね、その通りですシルティさん!」
そうです、私は今や冒険者なのです。
カルランの導き手としての私ではない……冒険者リリデスとしての道。
シルティさんとともに歩む、私達の冒険があるのです!
「それでシルティさん! 現在はどんなお仕事の依頼があるんでしょうか!」
「何もありません」
ありませんでした!
「……お疲れ様でした。本日は解散と致します……」
「まだ疲れてませんよリリデス」
お疲れ様を制止されまして、会議は続きます。
なんとか程よくお疲れできる状況にしていきたいのですが、前途多難のようです。
シルティさん、どうか私をお導きください……。




