1章おまけ「いろんなギルド」
「はぁー……。書類の作成って大変なんですねぇシルティさん……」
「これも冒険者には必須のスキルです。頑張っていきましょう」
「それにしたって多すぎませんか? 明らかに必要なさそうな文書まで……」
「確かに年々煩雑化の一途を辿っていますね。出歩くだけでも書類を作り、何かを狩るにも書類を作り……」
「大変ですねえ……。冒険者って腕っぷしの強さがためになる方が多いと思うんですが……これでは挫折する方も出てくるのでは?」
「そういった冒険者ギルドは事務を雇いますね。……実は結構需要が多く、ギルド事務は今や人気職となっておりまして。下手な冒険者よりよっぽど稼ぎが良いんですよ」
「そうなんですか?」
「しかし人気が故、スキルの無い人間が事務についたり、学のない冒険者らを騙して私服を肥やさんとする悪徳事務屋が出てくる等、問題となったらしく……」
「はあ……」
「そうして生まれたのが事務者ギルドです」
「事務者ギルド!!? 」
「一定の事務スキルと倫理性、これらを保証された者だけが在籍できるギルド……。ここから派遣された事務員を利用するのが主流となっていきます」
「ぼ、冒険者ギルドに事務者ギルド……。し、知りませんでした……」
「しかしここで困ったことが起きました。事務者ギルドでの派閥争いです」
「……派閥?」
「制度や運営方針をめぐり対立が発生したらしく。結局問題は解決せぬまま、事務者ギルドは分裂……二つに分かれたのです」
「ふたつもあるんですか事務者ギルド……!?」
「かくして生まれし二大事務者ギルド。……最初は職員の質やサービスにて覇権を争っていましたが、いつしか有力冒険者ギルドへの賄賂や接待等が行われ始め……」
「やってることが政治屋のそれに……」
「最終的には血で血を争う抗争に発展しはじめます」
「なんか話大きくなってません!!? 事務員のギルドですよね!!?」
「こうなってくると必要になってくるのがやはり腕っぷし。今度は事務者ギルドが冒険者を雇い始め、実質用心棒と化す冒険者が続出。ついにはまるごと冒険者ギルドを抱え込むようになり……」
「もうギャングの抗争じゃないですか……」
「冒険者にとってみれば、どちらの事務者ギルドに肩入れするかを問われる時代になりまして。冒険者同士にも分断が起き始めるのです」
「分断するならするでもっとマシな理由が良いですね……」
「日々激化していく争いに倒れゆく冒険者たち、疲弊していくギルド……。この凄惨なる対立に、とうとう国が介入してきます」
「く、国まで……!? ど、どうなっちゃうんです!?」
「至極単純。ギルド事務を国家資格とし、国が彼らのスキルとモラルを保証し始めたのです」
「……お、思ったより平和な解決……」
「この資格制導入により、用済みとなった事務者ギルドはどちらも解体……無事争いはなくなり、平和が訪れました」
「分断はなくなったんですね、よかった……」
「……しかし考えてもみてください。冒険者が自ら事務を行なう場合、この資格は必要ありません」
「あれ? 確かにそうですよね。なんかちょっと歪な気も……」
「すると、今度は事務作業もきっちり行える冒険者の需要が増え始めます」
「……ん?」
「かくして事務も行える冒険者……いわば冒険者事務員らが集まり、『冒険者事務者ギルド』の誕生へと――」
「これもしかして全部冗談ですか!!?」
~Fin~




