17.リリデスの再出発
再投稿部分となります、申し訳ありません。
「――おかえりなさいシルティさん! 遅かったですね」
「ただいまリリデス。はい、おみやげ」
「わ、ありがとうございます! 早速コーヒー淹れますね!」
新たなギルドマスターのにこやかな顔に迎えられる。
迎えられつつ、書き損じたクズ紙がそこらに転がっているのが気になる。
どうも苦戦しているようだ。ちょっと意地悪しすぎたか。
ケーキを食べたら、早く手伝ってあげよう。一つ一つ、彼女に教えてあげよう。
「あっ、ところで皆さん、手紙の方は……」
「あとでしっかり読ませていただく、と。心配いりませんよリリデス。きっと伝わるでしょう」
「そ、そうでしたか……! あ、ありがとうございましたシルティさん、本当に……」
一週間かけ、全員への謝罪文をしたためたリリデス。
あれほど布教活動に意固地だった彼女にしてみれば、大きすぎる進歩。
もちろん、信仰は何一つ変わってはいない。
生を苦とみなし、死を救いと信ずる化物は健在だ。
しかしそれでいいのだ。現実との折衝の中で、己が歩むべき道を探ってくれれば、それでいい。
そうして彼女の行く末を、見届けていきたい。彼女を、理解していきたい。
「……ところで申請書類の方は順調ですか」
「ギルド登録変更届に関してはバッチリです! 実は午前中に提出して受理されまして……! ただこちらの書類が今ひとつ……。ああ、こちらも不備があったようで返却され……」
「おや。もう変更届は出したのですか。ということは新たなギルド名も」
「はい! シルティさんが『一任する』とおっしゃいましたので……。ピッタリな名前、つけてきましたよ! 今日から正式に、新生ギルドです!」
「そういうことであれば早速教えてくださいリリデス。私達の、新しいギルドを」
「ええ。それでは……あ、ちょっと待ってくださいね、ここはちゃんと……」
ギルド名。
私にはネーミングセンスがあまりないので、彼女の感性に任せてみた。
なにせギルドマスターはリリデスだ。彼女が望む名を付けさせてあげたい。
事前に「カルラン」は絶対NGだと念を押している。
「†冥夜の神聖騎士団†」より下の名前もまずなかろう、問題はない。
彼女はこのギルドに、どんな名前をつけて、どんな活動をしていくつもりなのだろうか。
柄にもなく少しわくわくしながら、上座へ立つリリデスの発表を待つ。
「ええー、ごほん。このギルドですが、本日改めまして……」
「 『導きの光~シルティ同胞団~』 とあいなりました!! わー! ぱちぱちぱち! 」
――目眩。
身体から抜ける力。椅子から崩れ落ちる私。
焦って介抱するリリデスの胸の中、薄れゆく意識の中で、反復した。
導きの光。
シルティ同胞団。
……私は意識を失い、新生ギルドの初日が――「導きの光~シルティ同胞団~」の初日が終わったのだった。
夢なら覚めてくれ――。
1章 リリデス追放 ~終~




