14.リリデスからの解放
再投稿部分となります、申し訳ありません。
「――そんな訳で、準備を整えたらギルド新設するからさ。それまではみんな休暇だねえ」
午前の酒場。
貸し切るように、計14名の「元冒険者」。
「『†冥夜の神聖騎士団†』としての実績はなくなっちゃうからまた一からの出発だけど……でもまあ、名の売れたみんながいれば問題ないね」
「……ギルドの命名に関しては、わたくし達にも権限がおありなんでしょうね」
「え? それは僕が責任もってつけるよ、なにせマスターだし」
「やめろ。殺すぞ」
「手伝いますわ。殺しましょう」
「な、なんでッ……!?」
「あ、あはは……」
リリデスのいない空間に、穏やかな時間が流れている。
久方ぶりの緊張感のない一時。皆が安堵の表情を見せている。
「一番の問題は事務所だねえ。ちょっとみんなで良い物件探してもらえないかなあ。ギルドとしての貯蓄に関してはしょうがない、リリデスくんにそっくりあげるさ。それと受けてた依頼に関しては、僕が事情説明してなんとか……」
今後の方針を次々をゆるゆると語るクレイン。
問題だらけだな、と困りながらも楽しそうに聞く皆。
……。
「……リリデスは」
「え?」
「リリデスは、大丈夫でしょうか」
「……。わからない」
明日を語る皆の前ですべきではない、分かってはいたが。
どうしてもリリデスの心配が、頭をもたげる。
「……シルティさん、わたくしはヒゲの決断、正しかったと思いますわ。……ブレトンさんはどうお思いですの?」
「うむ、無論クレインは正しかった。何より我々を守るための行動だ」
「……最近さ、"終末思想"みたいなのが蔓延してるでしょ。魔王が復活して世界を滅ぼす~みたいな。実際、魔物が爆発的に増えちゃったりもしてるし……。それで国や教会への求心力も下がっちゃってて、みんな不安がってるんだ。恐らく、今後もっともっと情勢は不安定になると思う」
「こうした情勢下で邪教が発覚し『魔女狩り』が行われようものなら……。恐らくリリデス一人で問題は終わるまい。我々全員が危険となる、そうだろうクレイン」
「うん。……彼女にとっては、除名よりも遥かに酷なことになっちゃったけども。……でももう、僕はリリデスくんのことは諦めたよ。彼女の将来だとか、こころの心配だとか、そういうのは全部、諦めた」
「諦めた」の言葉が、皆を刺す。
クレインだけが諦めたのではない。我々も諦めたのだ。
リリデスの、これからを。
穏やかさを、重苦しくしてしまった。
察したスティキュラが、一際明るい声を挙げる。
「……飲もうぜマスター! これから門出の準備だって時に、辛気臭いばっかりじゃあ駄目だぜ!」
「え、まだ朝なんだけど」
「いいじゃねえかよ! 無職は朝から飲んだくれるってのが筋だぜ、なあお前ら!」
「あはは……。今回は僕もスティキュラさんに賛成ですかね。決して悪いことばかりではありませんよ」
「……わたくしもお付き合いしますわー! ほら、皆さんご注文を……ほらほらシルティさんも! エールでよろしくて!?」
「……ええ」
そうだ。悪いことばかりじゃあない。何より皆が今後の不安から救われたのだ、喜ぶべきことだ。
そも住むべき世界が違った、ただそれだけなんだろう。我々とリリデスは、元々交わるべきではなかったのだ。
今後も人生は続いていく。きっと落ち込んでいるであろう彼女も、いずれは立ち直って自身の道を歩くはずだ。
それがどんな将来であれ、彼女が自ら選び取った道。口を挟むようなことなど何もない。
悪いことばかりじゃあ、ない。新しい出発なのだ。
「じゃ、新たな門出に……かんぱーい!」
朝から宴会が始まった。
飲めるものも飲めないものも、とりあえずは全てを忘れ、夜まで浮かれた。
誰もが過去などなかったように、飲んで、騒いだ。次の冒険への夢を語った。
私だけが、リリデスを忘れられていない。




