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2.クレイン襲来

「――そんなわけでぇ。暇になっちゃったんで遊びにきたよ~」


「何してんですかアナタ」



 皆さんこんにちは。クレイン・マツリアです。この度ギルドを追放されました。

 されたものは仕方がありません。前向きに考え、持て余した暇を潰さねばなりません。


 ……そんなわけでやってきたるはギルド「導きの光~シルティ同胞団~」!

 なんだろう、初めて来た気がしない。まるで深く馴染んだ元職場のよう。

 なぜなら深く馴染んだ元職場だから。



 実はここ来るの二度目だったり。

 あのクソボケアホ耄碌アホジジイボケが変なこと企みやがったんで、一度リリデス君周りの「設定」に関して話し合いをした。

 それからさほど日は経ってないけれど、あの時より珍妙な物がいっぱい並んでいる。

 「モジャトニン濫用禁止」っていう拙い字の張り紙が一番気になる。なんだモジャトニンって。



「あれ、ところでリリデス君は? 噂の新人君にも会いたかったんだけど」


「二人は業務で外出中です。夕方までは戻ってきませんよ」


「そっかぁ残念。まあいいや。お茶でも飲んで近況でもとことん語り合おうじゃないの!」


「ぶぶ漬けをどうぞ」


「京都かここは」



 絶対に数時間は居座ろうという強靭な意志の下、茶漬けをかっ込む。

 嫌味で出した割には出汁の効いた美味いぶぶ漬けである。さすがシルティ君。

 この子さては暇人だろ。



「で、何をしでかしたんです? マスターが除名とはエキセントリックですが」


「いや、本当に何もしてないんだけどね。本当に。なんにも」


「それが原因ですね」


「御名答。っへへ……!」


「なんで誇らしげなんですか。……ブレトンも関与しているあたり、単なる悪ノリではなさそうですが」


「当分は休め、ってことみたい。確かに最近ふざけすぎたからねぇ、心配かけちゃったみたい」


「悪いマスターですね」


「それよりそっちのマスター君はどうなのよ。冒険者ギルドっつーか便利屋業者になってるけど」


「精一杯頑張ってくれていますよ。不器用ではありますが、私達のことを一番に考えてくれて。本当に、いつも一生懸命で。……本当に」


「? なになに、何かあったの?」


「さあ、どうでしょう」



 相変わらずの仏頂面ではあるけれど、やけに嬉しそうな顔のシルティ君。珍しいや。

 なにか特別な友情でも育んだのかな。それならよかった、冒険者してるなあ。

 それはそれとしてぶぶ漬けのおかわりを頼んだ。

 途端に冷酷な御顔になり申した。まけないぞ。



「それでシルティ君は一人で何してんだい? 一緒にお仕事いかなくていいの?」


「留守番兼、今後の冒険に関しての計画と準備を。そろそろ本格的にダンジョン攻略を行いたいな、と」


「ふーん。ダンジョンっつったら、今は某巨大迷宮がトレンドだね! デカすぎるわ環境劣悪だわで調査進んでないって聞くよ。一攫千金あるかもよぉ」


「とはいえ、こちらは三人しかおりませんからね。持ち運べる物資も、持ち帰られる戦利品も限られています。長期探索は難しく」


「お! そんならさあ、絶賛暇してる僕を臨時に雇ってみない? 前衛後衛補助なんでもやっちゃうよお!」


「ぶぶ漬けをどうぞ」


「いただきます」


「いただくな」



 朝食抜いてきてよかった。

 10分足らずで3杯となると、一時間居座るには計算上18杯は食わなきゃならん。

 フードファイターとしての才能を開花させる時がきたようだ。



「いや待てよ……。朝食抜きはフードファイトをするには愚策……」


「大食いはいいんでそろそろ帰ってくれませんかね。こう見えても忙しいんですが」


「んもう、なんだいなんだい! ベテラン冒険者様が格安で雇われてもいいっつってるのに!」


「実際人手は欲しい所ですが……我々三人で何が出来て、何が出来ないのか、それを把握する必要もありますから」


「真面目だなあ。でも三人じゃあ本当にやれること少ないよ? 食料だって大して持てないじゃん」


「リリデスに二十倍の荷を持たせれば解決じゃないですか」


「鬼かよ」


「半分冗談です。まずは攻略済みの小規模ダンジョンを巡ろうかと。なにか見逃しがあるかもしれませんし」



 半分は冗談じゃないことに戦慄しつつも深くは突っ込まない。

 しかしダンジョンの再探索かあ。そういえば彼女ら、隠し部屋見つけたとかで結構稼いでたな。

 新人君がそういうの得意なのかも。僕もミナト君をガンガン酷使しないと。

 一日一ダンジョンの発見を義務にしよう。絶対辞められるな。



「あ、そうだ。真面目に聞いときたいこともあったんだ。先日、アンス君って使者が来たでしょ? リリデス君のことあれこれ聞かれなかった? ちゃんと設定通りにやれた?」


「ああ。それでしたら……」








「――把握してた? カルラン教を?」


「そのようですよ。元々、リリデスも憚らずに公言していましたからね、バレるのも時間の問題だったのでしょう」


「ふーん……。しかしお咎めなしっつーことならよかった。これならギルド分裂させる必要もなかったねえ」


「いえ。あれがあったからこそリリデスも自戒できたのです。彼女は成長しましたよ」


「ほぼ君のおかげだと思うけどなあ。……しっかし案外適当なもんだな法も! カルラン信仰は厳罰って聞いてたんだけども」


「現状、個人の信仰にとどまっていますからね。なにより、リリデスを相手取ることに躊躇したのでしょう」


「ぶっちゃけ牢に繋げんだろうしねえ」


「彼女の異常な戦闘力はあちらも把握しているはずです。まともにやり合うなら将軍でも出張らねば無理でしょう。人的損失を考えれば無視が最も得策です」


「将軍が全員出てきたってありゃあ無理だと思うよ。僕が見たきた中でもダントツだもん」


「あなたが言うならそうなのでしょうね」



 なんにせよ、結果的に良い方向に動いてくれたようで一安心。

 邪教が判明した以上、ジジイもリリデス君を大事なアホアホ計画に組み込もうとは思わんだろう。


 問題はシルティ君の方だなあ。

 「御一行」に組み入れる気満々だったしなクソジジイ。

 流石の彼女も陛下にぶぶ漬けは出せんだろう。


 命が下る前に、なんとか良い案考えとかないと。

 すごく楽しんでるみたいだしね、この生活。

 …………。



「……よし! そんじゃ、お互いの近況も分かった所で!」


「なんでしょう」


「ちょっと一眠りさせてもらおうかな! ソファー借りるね! おやすみ!」


「ぶぶ漬けをどうぞ」


「いただきます」


「シルティチョップもどうぞ」


「いただきます」



 ――肩を脱臼させられ苦悶に喘ぐ。

 手刀の威力が半端じゃねえ。鎖骨もいったかもしれん。

 なんて女だ。



「……本当に暇しているようですねクレイン。なんなら、あそこへ行ってみては?」


「あそこってなにさあああっああっおおっおおお……ッッ!」


「例のスカウト場所ですよ。仕事だってあるでしょうし、『掘り出し者』とているかもしれませんよ」


「あ、あそこぉ……? た、確かにご無沙汰では、あ、あったけど、もぉぉ……ッ」



 かくして四杯のぶぶ漬けとシルティチョップ一本にてあえなく終了。滞在時間約20分。

 代償は肩と鎖骨の負傷。暇つぶし場所としてはあまりに不適と言わざるを得ません。

 しかしお茶漬けのクオリティだけは高かったため、☆2の評価とさせていただきます。



 クレインの暇つぶし探訪。次回レビューもおたのしみに!


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