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「宗教勧誘しただけなのに追放されそうです……」  作者: 頭いたお
10章 シルティはたっとき御令嬢
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5.シルティはなやめる御令嬢

「――緊急会議を! 始めますッ!!」



 存亡の危機に直面せし「導きの光~シルティ同胞団~」。

 シルティさんなくしてシルティ同胞団の存続はありえません。

 なんとしてでも御本人、そしてそのご家族をお守りしなければなりますまい。



「……その前にモジャ。本当に申し訳ありません、私が浅はかでした。まさか私のせいで、あなたが無戸籍のままだとは……」


「え? い、いやいやいや。私はぶっちゃけ全然いいんですけどぉ……」


「全くよくありません。あなたが真っ当に生きていくためには必ず必要になるものです。そのためにと奔走していたのですが……」


「ま、まずは私なんかよりシルティさんですよぉ……!」


「その通りです。モジャさんの件は後に考えるとして……。今の最優先はあなたです」


「……」



 ここにおいてなお、自分より他人の心配をするシルティさん。

 そんな優しさにつけこみ、脅迫行為に及ぶグスタフ卿。許せません。

 知恵を出し合い、早急に打開策を見出さねば。



「シルティさんの結婚を阻止し、同時にギーゼル家没落を回避する方法を考えましょう!」


「しかし……。契約書を握られている限り、かなり難しいですね」


「確認しますが、契約に抜け穴等はないのでしょうか?」


「どうでしょう、私もしっかり確認した訳ではないですし……。先にも話した通り、慣習における建前程度のものと認識していましたから」


「一般的な契約とは大分違いますね……」


「ええ。まさに貴族的虚栄の象徴、と言えるものです。『契約は絶対であり、全てを賭す覚悟がある』という馬鹿げた見栄……。そうして裏では本当の『契約』についてこそこそと話し合う……。さもしい精神だとは思いませんか」


「グスタフ卿はその建前を大真面目に捉えよう、としている訳ですね……」


「ええ。貴族的なルールからは大きく逸脱した行為ですが……。確かに契約は契約。可能ではあるでしょう」


「そうなってしまいますと……。果たしてどうすればよいか……」


「……」


「……」



 ――重い沈黙が流れます。

 何も思い浮かばぬ自分が情けない……。

 耐えきれず、モジャさんを揉み搾り「ぐええ」。

 モジャトニン……。



 たまらず逃げるモジャさん。

 それを待ち構えたシルティさんに搾られ「ぐええ」。

 モジャトニンに満ちる中、搾られジャさんが閃きます。




「あ、あちらが結婚をやめたくなるようなことをッ、し、しでかすとか……ッ!」


「なるほど、グスタフ卿を心変わりさせる、ということですね!」


「そ、そんな感じで……っ」


「……ふむ。具体的な考えはありますかモジャ?」


「た、例えばシルティさんが牢にブチこまれるレベルの重犯罪をしでかすとか……」


「それ結婚するよりひどい状況では……?」


「本末転倒すぎます……」


「でもこのギルド、潜在的犯罪者率が66.6%を超えてますし……バランスを取る意味でもシルティさんも一つやらかしてみては。へへ……」


「なんてこと言うんですかモジャさん……」


「確かに私以外全員犯罪者みたいなもんですが……」


「なんてこと言うんですかシルティさん……」







「――しかし相手に嫌われる、という方法は名案ではないかと思います! この方向性で考えてみましょう!」


「……。リリデスでしたら、私がどういった行動をとれば嫌いになりますか?」


「この身が朽ち果てようとお慕いし続けますがァ~~~ッ!!?」


「もう駄目じゃないですかこの案……」


「い、いや、私は……。あ! モジャさんはどうです!? どうしたらシルティさんが嫌いになります!?」


「そ、そうですねぇ……。休日にバーベキューに誘われたら嫌いになるかもですけど……」


「それあなたがバーベキュー嫌いなだけでは……?」


「え!? 今度みなさんとバーベキューでもと考えてたんですが……」


「うへぇ、私はいいです……。めんどくさい……」


「そ、そんなぁ……! モジャさあん……」


「私も結構です」


「私もしかしてめちゃくちゃ嫌われてます!!?」





「――バ、バーベキューに関しては後日再検討するといたしまして! 他にシルティさんが嫌われるような手立てを……!」


「やっぱり下品な方は嫌われるんじゃないかな、って思うんですけどぉ……」


「下品……」


「確かにシルティさん、日常の動作ですら品が溢れてますし……。まずはそこから変えていくというのも……」


「ふむ。具体的にどういう……」


「アエラさんみたいになるとか……! 絶対嫌われますよ、ふへっへ……!」


「突如刺されるアエラ」


「アエラさんといえばやはり粗暴な言動ですね! ドスの効いた罵声の下劣さは最低かと!」


「二度刺されるアエラ」


「やってみましょうシルティさん! アエラさんのものまねを! グスタフ卿にアエラさん節を食らわせてやりましょう!!」


「いや、そう言われましても……。ものまねって……」


「や、やりましょうシルティさん! 絶対嫌われますよぉ、私が保証しますっ!!」


「モジャがこれ以上ないほど自信に満ちあふれている……。いやしかしですね……」


「シルティさん、我々はこれでも大真面目に提案してるんです……! アエラさんのノリで接すれば、恐らくは……!」


「そうですよぉ……! 百年の恋も急速冷凍のフリーズドライって奴ですよぉ……!」


「わ、分かりました……。……ア、アエラですか……。アエラ……? …………」


「…………」


「…………」




「っお、おらぁー! この……っぼけがぁー! おらぁー!! ぼけー!! おらぁーっ!!」




「かわいい」


「かわいい」


「ころして」









「――結局かわいいだけでしたから別の方策を……」


「アエラさんモノマネですらかわいくなるならもう無理ですよぉ……」


「ころして」


「あ……。でしたら身なりを下品にするとかどうですかね……? シルティさん、いつも清潔ですから……。薄汚い服ですとかぁ……」


「しかしシルティさんの威光の前では多少の薄汚さなど効果薄と言えましょう」


「じゃ、じゃあとびっきり下品で周りがドン引くようなのを……」


「…………。例えばどういうのですか」


「うーん。ビキニアーマーとか……」


「……ビキニアーマーッ!!??!?!?」


「絶対嫌ですよ……」


「絶対駄目ですよッ!!??!?!?」


「でもビキニアーマーのシルティさんがアエラさんモノマネしたら確実に嫌われますよぉ! 私が保証します!」


「さっきから私を辱める方向にシフトしてませんかモジャ……?」


「ビキニアーマーアエラさんものまねシルティさんッ……? ……ビキニアーマーアエラさんものまねシルティさんッ!!????!?!?」


「リリデスがますますキモくなっていく……」


「や、やはりそんな卑猥な装備いけませんッ!! 仮に着せるとしても時代性を考慮しインナー着用といった配慮を……ッ!」


「仮にも着せるな。……あの、もう少し真面目にやっていただけませんかね……」


「真面目ですけどもぉ……」


「真面目ですよッ!!??!???!?」


「じゃあもう終わりですよこのギルド……」







「――やはりシルティさんを下品にする方向はいけませんッ! 別の方法を……!」


「まだやるんですかこの会議……?」


「そうなりますとぉ……。グスタフさんが別の女性に恋するとか……?」


「な、なるほど!? 興味の対象がシルティさんから移れば……!」


「それができれば一番穏当でしょうが……。この僅かな時間でできるとは……」


「で、でも貴族の方が平民女性に恋するとか結構聞く展開ですしぃ……。可能性はありますよぉ!」


「温室育ちのグスタフ卿の刺激になるような女性がいましたら……! 身近に誰か……刺激的女性……!」


「……」


「……」


「……」


「……アエラさん?」


「アエラさん……!」


「大人気アエラ」


「ほ、ほらぁ。人って恐怖を恋と錯覚するって言いますしぃ……!」


「恐怖を与えること前提なんですか……?」


「! お待ち下さい! アエラさんもシルティさんをお慕いする人物が一人! もしもこの状況を知りましたら……!」


「あっ……。グスタフさん確実に殺されちゃいますねぇ……。ある意味それで解決ですけども……」


「……!! ………………ッ。………………………………いえ! やはり血が流れる解決方法はよくありません……ッ」


「なんでめっちゃ悩んだんですリリデス。リリデス」


「でもアエラさんが個人的に惨殺するなら我々に咎はないですし本人は牢獄直送ですしそれはもう素晴らしき一石二鳥では……?」


「モジャ。モジャ」







「――ではアエラさんとグスタフ卿をいかにして夫婦にするかという方向で……!」


「美男と野獣……。難しいですねぇ……」


「…………」


「アッ! カニの図鑑なんて見ないでくださいシルティさん! 大事な会議中ですよ!」


「そうですよぉ。シルティさんのための会議なのに……!」


「カニ眺めてた方が有意義ですよこれ」


「諦めないでくださいシルティさん! あなたの人生の問題です……ッ!」


「……というかあのですね。アエラとグスタフは既に面識ありましてね」


「え? な、何故……」


「出身学校同じですし」


「はえぇ……。どうして学生時代にさっさと殺害しなかったんですかねぇ……」


「アエラって別に殺人鬼じゃないんですよ」


「トラブルはなかったんでしょうか……?」


「ガン飛ばす程度で済んでましたよ」


「はえぇ……。アエラさんって邪眼まで持ってるんですねぇ……」


「アエラって別に魔物じゃないんですよ」



 ――侃々諤々とはまさにこのこと。

 様々なる意見をひねり出しますが、まともな解決策はひとつもなく。

 時間だけが刻々と過ぎゆき、日は既に落ちて……。




「ああ、一体どうしましたら……!」


「ぐええ…………っぐええぇぇ……!」


「……。最早モジャも出涸らしですし。そろそろ打ち切りましょうか」


「し、しかしシルティさん、このままでは……!」


「……妙案が出ないのも仕方ないでしょう。契約を持ち出された時点で既に八方塞がりの状況です。……グスタフとて、家名に傷をつける覚悟をもって臨んでいるようです。説得も難しいでしょう」


「そんな……」


「彼の感情は理解していましたが、これ程のものとは知りませんでした。……この状況を見通せなかった私の落ち度でもあります。あなた方が気に病む必要は……」


「気に病むとかそういう話ではなくっ! シルティさんに望まぬ結婚をさせたくない、その一心なんです! こんなの間違ってます……っ!」


「…………」


「シルティさん、諦めずに方法を考えましょう! きっと、何か方法が……」


「――責任、でしたか」


「……え?」


「限界、なのかも……しれませんね」


「シルティ、さん……?」


「……。申し訳ありませんが、二日ほど休みをいただきます。一度、家に顔を出して……。それから、今後のことを考えてみます。では……」


「あ……! お、お待ち下さい。シルティさ……っ」





 ――取り残された、私達。

 一人で出ていってしまった、シルティさん。



 閉じられた戸の、大きな音。

 何かよくない未来を、暗示しているようで。




 ……帰宅してからも、眠らずに考え続けましたが。

 やはり、なにひとつ――。


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