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非聖女召喚  作者: 木こる
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第二聖

「貴様は何者かと聞いている!答えろ無礼者め!

 …その前に神聖な祭壇から早く降りろ貴様ァ!」」


顔は見えないがその声には貫禄があり他の仮面たちよりも

装飾が豪華な事から、位の高い老いた男性であろう事は推測できた。

それにしても神聖な儀式、神聖な祭壇とかいきなり言われても

気がついたらそこにいただけの十子にとっては意味がわからなかった。


「ハイハイどきますよ〜っと なんなんだよもー……」


怪しい仮面男を刺激したくはないので、とりあえず言う通りにする十子。

傷を負った少女の手を取り祭壇を降りようとすると、


「貴様アアァッ!!さっきから聖女様に対して馴れ馴れしいぞ!!

 その汚らわしい手で聖女様に触れる事は許さんぞぉ!!」


どうやら仮面男を更に怒らせてしまったようだ。

手が汚れているのは里奈の止血をしていたからだ。

たしかにこの手で触るのは不衛生だったと反省した。


しかし洗える場所は見当たらないし、この子を早く病院へ連れて行きたい。

変態集団の中に裸の少女。これは私が守ってやらねば、と十子は決意した。


「…うっさいんだよおっさん!この子は怪我してんの!

 血ぃ出てんのがわかんないの!?邪魔すんなハゲ!

 つーかあんたらがなんかしたんだろ!?警察呼ぶかんね!?」


洞窟の中だからか携帯電話の電波は0本だったが、

警察をチラつかせれば動揺すると思っての啖呵だった。

しかし相手は仮面を被っているので表情は読めなかった。

そして彼は言葉よりも手に持っている物に興味を示した。


「その道具……やはりそうか しかし、なぜここにいる…?

 どうやら色々と情報を聞き出さねばならぬようだな

 ……信徒たちよ!あの侵入者を引っ捕らえ…***!!*******!!」


薄々気付いてはいたが「信徒」という単語が出てきたおかげで

このローブ仮面集団がカルトだと確定した。

それがわかったからといって状況が好転するわけではない。

数十人の仮面たちが押し寄せ、十子は逃げ場がない事を悟った。


「──総代様!おやめください!

 信徒の皆様…********!******!」


その言葉に仮面たちは動きを止めた。発言したのは傷の少女だった。

さっき「聖女」とか言われていたし、何か特別な立場の子なのだろう。

大声が傷に響いたのか、彼女はバランスを崩して倒れかけたが十子が支えた。


総代と呼ばれたさっきから偉そうな男は仮面を外し、

野暮ったいフードを捲り上げてそのハゲ頭と白ヒゲを晒した。

彼は聖女の前に跪き、涙を流しながら恍惚の表情を浮かべた。


「***、*****……***********!

 *****…*******!……*********!」


総代が何を言っているのかはわからなかった。

総代に続き、他の信徒たちも仮面とローブを外してその場で跪いた。

またもや突然の展開で十子はわけがわからなかったが、

彼らが自分に対して跪いてるようにも見えて少し気分が良くなった。



聖女の一声で信徒たちの敵意は弱まったと十子は感じた。

水道で新しい石鹸を使わせてもらい、手についた血を念入りに洗い流した。

そして救急箱を持ってきてもらい、聖女の胸の傷を応急処置して服を着せた。

それは触り心地のいいドレスで、彼女の華奢な体つきによく似合っていた。


十子は早く病院へ行こうと申し出たが聖女は首を横に振り、

じゃあ誰か車を出してくれと頼んでも誰も名乗り出ず、

だったら電波が入る所まで案内しろと言っても拒否された。


「…あんたたちなんなの!?この子を崇めてんでしょ!?

 助けたくないの!?病院行かないとか頭おかしいよ!!

 モタモタしてたら間に合わなくなるの、素人でもわかるよ!?」


その場に居合わせた人間の中で十子だけが熱くなっていた。

カルト信者はともかく、傷を負っている本人までもが落ち着き払っていた。


「トーコ、私を心配してくれるのは嬉しいけど

 大丈夫だからそこでおとなしく待ってて…」


手当てのおかげなのか、聖女はさっきよりだいぶ楽そうにしている。

十子は苛立っていた。正直、初対面の他人よりも里奈が気がかりだった。

これだけ平気そうならもう放っておいてもいいかと思い始めているし、

それでもやっぱり心臓はやばいとも思っている。見捨てられないのだ。


「ところであんたさぁ……なんで私の名前知ってんの?

 どっかで会ったことある?ないよねぇ…てかあんたの名前は何?」


十子は疑問に感じていた事を口にした。

聖女は少し考えてから返答した。


「私の名前は……いえ、この体の持ち主の名前はアリスです」


「…ハァ?なにそのまどろっこしい言い方は……」


そういうキャラを演じているのだろうか。

胸に穴が空いてる割には随分と余裕がある。


「アリスはこの“聖女教団”の敬虔な信者でした

 聖女の器となるためにその生涯を捧げ、

 自らの死を以て聖女への転生を果たしたのです」


「…生きてんじゃん?」


十子は我ながら的確なツッコミだと思ったが、

アリスは真剣な顔のまま話を続けた。


「この体の中にはアリスが15年間培った肉体的、精神的な記憶と

 異世界で死を遂げた者から回収した13の魂が入り混じっています

 異世界とはつまり、あなたが住んでいた日本が存在する世界です

 その魂の1つ……リナという少女の残留思念がトーコを思い出させたのです」


「……は?あんたふざけてんの?

 何が異世界だよ 頭おかしいんじゃないの?

 …ああ、おかしかったね カルトの一員だもんね

 もういい、私は帰る 時間の無駄だったよ バイバイ」


「リナの最期の瞬間、あなたがたの体と魂は強く結びついている状態でした

 あなたが肉体ごとこの世界に召喚されたのは、きっとそのせいでしょう」



「あんた、何が言いたいの?」




「リナは死にました」

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