表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
元女神ですがなにか?  作者: 日下部素
第1部.誓いの憤怒
3/34

3.見知らぬ女性

「それと私のことは湊って呼び捨てでいいよ。下の名前はまだ早いと思うけど()()が呼びたいっていうなら……」


「上の名前だけで結構だ、湊」


「うわー、うれしー」


満面の笑みでうれしそうな感情をアピールしてくるが上っ面だけであると見え透くものがあり、邦継は「そうかい」と軽くいなした。




湊と邦継の出会いはサークル勧誘でのことだった。


新入生歓迎のサークル勧誘の際に学科の学術サークルなるものを発見した邦継は何の気なしにサークルブースへと足を向けた。


恐る恐るブースをのぞき込むと人当たりの良い上級生らしき人が邦継に声掛けをしてきた。


「新入生の方ですか?」


「そうです。ここってサークルの勧誘ブースですよね?」


「そうだよ。ここは学術サークルでどちらかというとちょっとお堅いサークルなんだ。君の学科はどこ?」


邦継が自身の学科を告げる。


「じゃあ、ここがベストだね。もちろん他学科の学術サークルに入れるけど自分の所属する学科に入れば自ずと先輩や同級生と交流を持てるからスムーズに学校になじみやすくなると思うよ」


「へー……ん?根本的に何をやるサークルなんですか?」


邦継は素直に疑問をぶつけた。


「ここは学科の勉強だったりそれに付随した学問を学ぶっていうのが主軸としてあるんだ」


『入学して早々に勉強についてのサークルに入るのはいささか面白みにかける』と邦継は思った。


「なるほど……」と相槌めいたものを返し、悩んでいる邦継。


「面白そうですね!」


突然後ろから明朗で陽気な女性の声がした。


「同じ学科の先輩たちとお話しできるなんて有意義ですね」


邦継は彼女のほうをじっと見つめた。


「あなたも同じ学科なんでしょ?一緒に入らない?」


「いや、俺は……」


唐突な提案に対して言いよどんでいると対面にいる男子学生がしれっと二枚分の入会届のようなものを出してきた。


「ありがとうございます!はいあなたの分」


「いやだから俺はまだ入会とか決めてな」


「吉奥邦継君だよね?」


「え?」


邦継は自身の名前を初めて大学内で呼ばれた驚きが素直に口に出てしまった。


「なんで知ってるんだ?」


「入会したら教えてあげる」


意地の悪い笑い方ではあったが年相応のあどけなさが尾を引いた。


「新興団体や宗教の勧誘だったらお断りだぞ。もう間にあってる」


「そう勘ぐらなくても大丈夫。私は楽しく大学生活を過ごしたいだけだから」


蠱惑的な眼差しが鈍色の眼鏡の奥で光っていた。




「あの時、湊から軽く自己紹介があってここに来いって言ったきりだろうよ」


「あれ?ほかの講義で顔を合せなかった?」


「合わせたけどいつもすぐそそくさどっかにいってしまうだろうが!」


「そうカリカリするなって少年」


湊が同い年の大学生をなだめる。


「で?結局俺をこの場に呼んだ理由は?」


「何って祝すべき新入生歓迎会のスケジュールをサークル全体で共有するために及びたてしましたよ?」


「……それってスマホとかでいいだろ」


「それと紹介しておきたい人物がいたんだけど……」


そういい湊は四方を見渡す。


「今日は来ていないみたい」


天を仰ぐ邦継。『俺は何しに来ているのか……』


邦継はこの後のスケジュールを思い出す。


「湊」


「なに?」


「今日はこの後、バイトあるからこれで今日は……」


「え?帰っちゃうの?」


「ゴールデンウィーク中にも会えるだろうさ」


「……あっそ。つれない男」


「それじゃーな」


邦継はそう言って、ふてくされた湊を置いて人が集った講義室から脱出し帰路についた。


よろしければブックマーク、☆の評価、感想をいただけますと幸いです。


作者の励みになります。


ここまでお読みいただきありがとうございます。


これからもよろしくお願い申し上げます!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ