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妃に相応しい条件

少しずつの投稿で申し訳ないです。

校舎から正門までの広い道には人通りがまばらだったのが唯一の救いだろうか。今日は週始まりということもあり、早く帰宅する生徒が多かったのだろう。


「ベル様、私はこの後予定がありますので失礼しますわ。」


ーこんなところでする話なんて碌なものじゃないわ。


セレナが正門は歩み出すと、


「ふふっ、逃げますの?」


ベルが鼻で笑いセレナを挑発する。後ろの令嬢たちも口々にそれを肯定する。後ろの3人は確か隣のクラスの子爵令嬢と男爵令嬢、1つ年上の男爵令嬢だったわね。いずれも自家の商売がうまくいっているところばかり抑えているあたり、ベルはしっかりしている。


セレナはやれやれと背筋を伸ばし振り向く。


「ベル様、気のせいでなければそもそも私たちはお話しするお約束も待ち合わせもしておりません。なのに逃げるだなんて人聞きが悪くてはなくて?」


「そ、それは。」


「それにハードン嬢が私にどんな御用件なの?」


セレナは遠回しに伯爵家の娘が格上の公爵家の娘の私になんの話?と訊ねた。


「わ、私はただ、マルクス様とセレナ様が婚約されるのはお互いに宜しくないのでお止めしたいだけですわ。」


ベルは拳を握り、セレナを睨みながら言葉を続ける。


「マルクス様が妃として必要としているのは真実の愛と周りの国との友好の架け橋を作る存在ですわ。王太子として己に課せられた役目をよく考えていらっしゃるのですわ。」


目を細めると勝ち誇った顔で前にいる公爵令嬢を見つめる。


「なのでセレナ様ではお役には立てないかと存じます。そんなセレナ様はこの国の繁栄のためにも他国へ嫁がれる方が賢明ですわ。」


発言と同時に恭しく頭を下げる。

後ろの3人はセレナの前でも構わず、さすがベル様!と肯定ばかり。失礼極まりない。


「婚約?何のお話でしょうか。陛下より発表もないのにそのようなお話。殿下にも失礼ですよ。」


セレナはシラを切ることにした。


「なっ?!でも!私はマルクス様から直接お話を伺ったのよ!」


「それで本当か嘘かわからない話に私を巻き込み、私より自分の方が妃に相応しいと言いたいのですね。真実の愛と・・・あとは外交もなさるの?素晴らしいですわ。流石、外相であるハードン伯爵のご令嬢で。今の言い方ですとお父様の後ろ盾には頼らず、ベル様が矢面に立って外交を?さすが頭脳明晰なベル様ですわね。私応援しておりますわ。」


ニッコリと返すとベルの顔は真っ赤になっていた。


ベルが優秀だなんてこれっぽっちも思っていない。なぜならセレナはベルよりテストの順位は上なのだ。下から数えた方が早かったはず。でも真実の愛とやらはベルには勝てない。セレナにはそんな気持ちは皆無のため、どうぞ他所でお楽しみください、と受け流す。


「話はこれで終わりでしょうか?御者をこれ以上待たせるわけにはまいりませんから、これで失礼しますわ。」


「ま、待ちなさいよ!話はまだ終わっていないんだから!」


ベルの問いかけに今度は足を止めない。


セレナは馬車に着くと御者に一言お詫びをしてから乗り込んだのだった。


ーそれにしてもマルクス様はこんな大事な話をなぜ発表前にベルに話したの。恋人だから?本当に後先何も考えていない空っぽの王子様だわ。


考えれば考えるほど頭痛がする。こんな状況で婚約発表でもしたらベルは黙っていられるだろうか。


セレナは矜持を持って対抗はできるがそれでは皆の支持は得られない。ましてや相手であるマルクスがセレナを認めていないのだ。これでは平行線、それ以下である。


母親を5歳で亡くしたセレナは父親であるセブルスから厳しく、時に優しく育てられてきた。いつも言われ続けたことは人の上に立っても恥ずかしくない生き方をしろという教えだ。


ーお父様、私頑張るわ。お母様も見守っていて。


セレナの決意を新たに馬車は沈む夕日に向かって走っていた。



読んでいただきありがとうございます。

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