彼女の憂い
よろしくお願いいたします。
四阿から出た2人は校舎へと向かう。
でもクラウドと手を繋いだ状態が続いているのにセレナの頭の中はそれどころではなかった。
ー婚約を公爵家から断るなんて相手は王族なのに無理に決まっている。それに側妃だなんて・・・
この国では国民は一夫一妻制だが王族のみ一夫多妻制なのだ。それは理解していたがまさか自分が側妃になれと言われるなんて考えもつかなかった。
マルクスとの婚約は正直嫌だ。でも公爵家の為にも気持ちは繋がらなくても妃としての務めは果たすつもりではいた。それが貴族としては当然のことなのだと教えられ育ったのだ。それなのにおまけのような言い方をされるなんて今までの人生の中でも経験がなかった。
それにお父様に相談しても結局は結婚はさせられるに決まっている。話がややこしくなるだけだ。
セレナの顔色が悪くなる中、クラウドはその顔色をそっと覗きながらも声をかけられずにいた。繋がれた手の温もりが嬉しくてこの時間がいつまでも続けばいいと思っていたからだ。
校舎に近づいたところで他の生徒の声が聞こえ始め、セレナの思考が浮上した。
「おはよう。セレナ嬢。」
「クラウド様・・・」
ふと側にいたのが昨日一緒にいて落ち着く人物だったことでセレナは安堵した。それでも手を繋いでいるのはおかしいとやっと気づいた。咄嗟に手を払いそうだったが気分を悪くされたくないと思い反対の手を添えて離す。
「ごめんなさい!クラウド様、助けていただきありがとうございます。」
「嘘ってやっぱりわかったのか?」
「はい、なんとなく・・・ふふふ。」
思い出して笑ってしまった事は許して欲しい。それはクラウドも同じだった様で、
「あの困った顔は下手だったと思うな。」
「私だってわかっていたわ。だってあの時は必死だったもの。でもなぜ探しに来てくれたの?嘘までついてくれて。そのおかげで逃げることができてよかったけど。」
セレナの中ではクラウドは救世主だったがタイミングが良すぎたので不思議に思ったのだ。
「学校に着いたら皆が皆噂してたんだ。セレナ嬢がマルクス殿下と中庭の方に消えたって。2人で密会なんて遂に婚約か?って」
セレナは絶句した。それもそのはず。あんなに人が集まったところで話がしたいと言われたのだ。いろんな憶測が流されるに決まっている。だからマルクスと会いたくなかった。2人で話なんてしたくなかったのだ。
「事実かどうかは別として、気になったから行って困っていそうなら助けようと様子を見に行ったんだ。」
「そうだったのね。はぁ〜」
令嬢らしからぬため息にクラウドは問う。
「本当に婚約するのか?公爵家ならあり得るからな。」
「・・・」
セレナは答えられずにいた。まだ発表前の為、こんな大事なことは口に出来ない。それを読んでかクラウドは話を逸らす。
「もしかして私は邪魔者だったか?」
「それはない!」
思わずクラウドの袖を掴んでしまう。
「それならよかった。」
「本当にピンチだったの。ありがとう。」
セレナは礼を言うと教室に向かおうとしたがクラウドは一点を見つめ、足を止めたままだ。
「クラウド様?」
セレナの呼び掛けに反応したクラウドは何か思いついた様子で今日も王子様スマイルで返事する。
「いや、なんでもないよ。すぐ行くから先に行って。」
セレナは不思議に思いつつも一緒に教室に行く方が変かも?と考え、頷くと足早に教室に向かった。
クラウドはそっとつぶやく。
ー父上に手紙を出す。
すると側から承知。と返事があったのだった。
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