金色の瞳の青年
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図書館に着くといつもの窓際の席に荷物を置き、王族についての書籍を探し始めた。今朝の婚約の話を聞いて王太子妃になる者としてもっと学ばなければならないと感じたからだ。
普段は学校からの課題を机に広げこなすか趣味の魔法についての本を読み時間を過ごす。この世界では魔力持ちの人は貴重とされていてほとんどの人は持っていない。通っている学校でも魔力持ちのクラスとそうではないクラスで分けられ受ける授業内容も異なるらしい。そんなセレナは魔力を持っていないが小さな頃に見た水と光の魔法で作られた幻想的な世界が忘れられないでいた為、魔法についての本を読んで学ぶことが趣味となっていた。
王族についての本は数が少ないのか棚が見当たらない。歩きながらキョロキョロしていると、
「フォルン嬢?」
あまり聞きなれない声に呼びかけられ振り向くと確か学校で同じクラスの青年が歩いてきていた。
確か先月から留学で来られた・・・
「えっと・・・ウィリアム様?」
「クラウド・ウィリアムだ。すまない。急に呼び止めて。」
空色の髪に金色の瞳が眩しい長身の青年で学校でも人気がありいつも女の子達の輪の中にいる為セレナはもしかしたら初めて喋るんじゃ?と戸惑うがそこは令嬢としての嗜みで微笑みで返す。
「いえ、今日は学校がお休みですから誰にも話しかけられないと油断しておりました。ウィリアム様も本を探しに?」
「そうなんだ。この国についてもっと学びたくてね。」
ウィリアム様は隣国の公爵家の方だそうで両国の親睦と勉強のために留学に来られている。
人あたりも良く、知識も豊富だそうで女子人気に拍車がかかっている。
「それならどのような分野の本をお探しですか?私でお力になれるならご案内させて頂きます。」
「ありがとう。それならこの国の王族についての本が読みたいんだがわからなくて。」
後頭部を掻きながら笑顔で答えられる。
でも偶然だなとセレナは驚く。
「そうなんですね。実は偶然なんですが私も今同じものを探しておりましたの。でもわからなくて探しているところでした。」
「奇遇だね。でもなぜ自国の王族のことなんかを?公爵令嬢の君なら多少の知識はあるだろうし。」
セレナはしまった、理由を考えていなかった、婚約の話をするわけにもいかないし、と困り顔になるのを抑え令嬢らしく目尻を下げた。
「まだまだ知識が足りないと思いまして・・・」
なんとかごまかせただろうか?
「フォルン嬢は真面目なんだね。それなら私と一緒にどうかな?」
「是非よろしくお願いいたします。」
向かい合って挨拶が済んだところで近くに居た図書館の司書に声をかけ本がある場所に案内してもらうことにした。
図書館の大きなホールでも隅の方に設けられていたので分かり辛かったようだ。
「王族の棚といってもいろんな国の本がありますね。・・・ウィリアム様?」
セレナが振り向くと金色の瞳が細められ見つめられていたことに気づく。
「いや、すまない。こうやって君と一緒に歩ける日が来るとは思っていなかったから。それに・・・」
「それに?」
「ウィリアムではなくクラウドと呼んでくれないか?」
急にファーストネームで呼んでほしいと言われ驚いたが相手は隣国の公爵家の長男であり次期公爵様だ。
「そんな。失礼では?」
「私がそうして欲しいんだ。」
そう微笑まれると断れない。
「では、クラウド様、私のことはセレナと」
「セレナ嬢!ありがとう。」
あぁこの人はこんな笑い方をするんだとセレナまで目が細まり、心が温かくなった。