惑わす瞳と高鳴る胸
お待たせしました。よろしくお願いいたします。
カインは瞬きもせず、ずっとクラウドの金色の瞳を捕らえる。何を隠しているのか、やましい事はないのか?その瞳から何か真実を見つけたかった。でもその瞳の奥から何か重い圧力を感じ、蹴落とされそうになる。
「目をそらさないんですね。殿下。」
「別に男と見つめ合う趣味はないのでもう辞めて頂きたいですがね。」
冷たくあしらいクラウドは立ち上がった。
「私が話したことは否定しないのですか?じゃあ答えは正解だったと受け取りますが?」
「・・・答える必要はないかと?話は以上ですね。これで失礼します。有意義なお時間ありがとうございました。カイン様とお話しできた事、嬉しく思います。公爵殿やセレナ嬢にもよろしくお伝えください。」
「話は終わっていません!お待ちください!」
クラウドは部屋を出ようと踏み出すが扉の手前でカインが立ちはだかる。
「殿下はセレナを手に入れてどうするおつもりなのですか!この話は公爵家だけで留めますからどうかお話しください。」
「何のことか解りかねます。」
「殿下!」
「どうぞ殿下ではなくクラウドとお呼びください。それから敬称も必要ありません。
・・・俺はこれからもずっと仲良くして欲しいと思っているよ。カイン。」
クラウドが人を虜にするような笑いを返すとカインは拍子抜けし、脱力してお手上げだと認識した。意図がわかり相手に従順した。
「っっ!クラウド・・・」
「ん?」
「今度は一緒に酒でも飲もう。今日は急にすまなかった。」
「理解してくれて嬉しいよ。次はもっと楽しい話が出来ることを望むよ。じゃあ俺はもう行く。」
扉を開けて部屋を出るとクラウドは走り、急いで馬車に乗り込んだ。
「はぁ〜・・・降参だな。」
カインはソファーにどかっと座り込むと両手を頭の後ろで組み、天井を見上げた。
たった一度しか会って話したことがないのにこの"人を惹きつける力"は何だろう。これがエルトニア帝国の王族の力なのかはわからない。それでも悪い奴には見えず、こちらは毒牙を抜かれたようだ。
答えを教えてくれなかった相手のことを何故か嫌いにはなれなかった。
❇︎❇︎❇︎
セレナは放課後、図書館に立ち寄っていた。
この3、4日間はクラウドに会わないよう図書館には来ていなかった。父セブルスに自分の気持ちを話してからクラウドと次会った時にちゃんと話せるのか自信がないくらいに気持ちは高まる一方だった。だから教室でも顔を合わせられずにいた。でも今日は借りていた本を返さなければいけなかったし、新しい本も借りたいとやって来ていた。いつしか図書館はクラウドと過ごせる場所とセレナは思っていたのだ。でもクラウドは留学が終わると自分の国へ帰国するので会えなくなる。この気持ちも何処かへしまわないといけないと頭ではわかっていた。
ー今日は会わなくてよかった。ちゃんと顔を見れる自信がないわ。
借りる本も決まったので帰ろうと図書館を出た時だった。前から知った姿が近づいてきた。
「セレナ嬢!」
「・・・クラウド様。」
急激に胸が高鳴る。数日話さなかっただけでこんなにも2人で会えたことが嬉しくなると思わなかった。
「今日は来ていたんだね。」
「えぇ。借りた本を返しに。クラウド様は・・・」
「やっと会えた。」
クラウドはセレナの手を掴むと身体を引き寄せた。
「!!?」
「あっ・・・またやってしまった!」
すぐに離すと何事もなかったかのように話しをしようとするが2人とも目を合わせられない。
「すまない。ちょっとの間会って話せなかったからつい嬉しくて。」
「いいの。気にしないで。」
セレナは笑って顔が熱くなるのを誤魔化した。
「もう帰るところかい?少し話せる?」
「少しなら大丈夫よ。よかったら課題でも一緒にする?」
ー私ちゃんと笑えてる?話せてる?
セレナは苦しい胸を押さえながら一緒に図書館へ戻った。
2人はそのまま図書館で話に花を咲かせ日が暮れるまで一緒に過ごした。
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