答え合わせ
おはようございます。今日も読んでいただきありがとうございます。毎日アクセス数が増えていて嬉しいです。遂にクラウドの正体が明らかになってきます。
翌日にはセブルスがエルトニア帝国へ正式にセレナとの婚約を丁重に断ったと報告があった。もちろん国王であるガイに承諾を得ての動きだがガイは自分の息子を相手に望んでいるので止めはしない。
あわせてマルクスとの婚約も重々お断りを念押したのだが返事はなかったそうだ。
❇︎❇︎❇︎
王宮での夜会が2日後に迫ったある日、カインはクラウドと対峙していた。
「お待たせいたしました。カイン・フォルン様とお見受けいたします。手紙の送り主は貴方様でしょうか?学校ではお初にお目に・・・」
「お話を途中で切って申し訳ございません。いつも妹が世話になっているようですからこちらからご挨拶させて下さい。」
カインがクラウドの前で片膝を地につけた。
「どういうおつもりですか?」
怪訝な顔をするクラウドに対してカインは続ける。
「お初にお目にかかります。私はナルシャ王国公爵家嫡男、カイン・フォルンです。どうぞカインとお呼びください。」
異様な光景だ。
国は違えど公爵家の嫡男同士ならこんな畏まった挨拶をする必要はない。
「本日は急な呼び出しに応じていただき感謝いたします。来ていただけるか半信半疑でしたが是非とも2人だけで話がしたかったものですから。」
カインは目を細めると立ったままのクラウドにソファーへ腰掛けるように促した。
ここは学校の応接室だ。中庭に面した部屋には落ち着いた調度品が並び中央にローテーブルとソファーが設けられていた。
カインが校長に"クラウドとの交流のため"とお願いし、放課後に使うことができた。
クラウドへは話をしたい旨とフォルン公爵家の家紋を押した手紙を今朝急遽出し、今に至る。
「私も失礼ながら掛けさせていただきますね。いつもならこの時間は図書館に行かれるのですか?」
「よくお調べですね。最近私の周りにネズミがいたのですがあれは貴方のお身内ですか?」
クラウドは不敵な笑みを浮かべる。
「バレていましたか。申し訳ございません。少々妹の身辺調査をしていましてね。」
「セレナ嬢のですか?公爵家は過保護ですね。それで何か問題でも?」
クラウドは言葉にわざと嫌味を載せて話を促す。
「はい。それはもう大問題ですよ。今朝わかったので驚きました。でもまだ予想でしかないので答え合わせに困っています。」
カインは困り顔で腕を組む。
「くくっ」
クラウドは口を隠し、笑いを堪えるのに必死だ。
「何か?」
「すみません。この前セレナ嬢も同じような顔をしてたものですから、思い出してしまいました。流石兄妹ですね。よく似ている。」
目尻が下がるクラウドを見てどこか複雑な気持ちだ。セレナの話をしてこんな温かい笑い方をする相手にどう接したらいいのか。
「それで私には何の疑いが持たれているのですか?」
「話が早いですね。」
「早く終わらせて図書館に行きたいですから。」
「妹に会いに?今日は諦めてください。私との交流を楽しみましょう。」
クラウドはそう言われると表情が曇りソファーへもたれて軽く頬杖をついた。
「心外ですね。そんな顔に出さなくてもいいじゃないですか。」
「わざとです。伝わりましたか?私には時間がないのです。手短にお願いします。」
「では私は交渉は苦手なので率直にお話をさせていただきますが宜しいでしょうか?ウィリアム様・・・いいえ。クラウド・ウィリアム・エルトニア殿下。」
「・・・」
目前の金色の瞳はぴくりとも揺るがない。
「ウィリアム公爵家にはクラウドという名前のご子息はいないようですね。ご令嬢が1人いらっしゃるとかでそのご令嬢は約20年前に王家に嫁ぎ、王子がお生まれになったと聞きます。」
カインはソファーから立ち、クラウドの側に行くとまた膝をつき、目線を合わせた。
「そしてその王子は小さな頃に何度も命を狙われたそうです。それは他の側妃がいたからに他ならない。それで名前も姿も何もかも隠して生きてきたのではないですか?それもこの国で。」
「証拠は?これが貴方の答え合わせですか?」
挑発するかのような言葉にカインは動じない。
「証拠はありませんがエルトニアの王族は代々人々を狂わせるほど美しい黄金の瞳を持っているそうです。今私もそれを拝みたくて御前失礼しているところですよ。その瞳には魔力が宿っているとか?」
満面の笑みのカインを見てクラウドの表情はより一層曇る。
「殿下。セレナと親しくしていただき感謝いたしますが何をお考えになられているのですか。答えによってはこの国と戦争になりますよ?身を隠しているにも関わらず結婚の申し込みもされているのです。その意図をお教えいただけますか?」
読んでいただきありがとうございます。