陽だまりの中の2人
読んでいただきありがとうございます。
木々の葉が擦り合う音が辺りに響く。
2人が何も話さず見つめ合うので静かすぎて呼吸の音すら響く気がした。
「クラウド様、あの・・・」
ー顔が熱すぎる。身体も熱い。
セレナはクラクラしてクラウドから目がそらせないでいた。クラウドもセレナの髪の毛を手に取ったまま固まっていたがセレナの声でようやく離した。
「いや、急にすまない。セレナ嬢の銀の髪が光に透けて綺麗でつい触りたくなってしまったんだ。」
クラウドは口元を押さえるとだんだん顔が赤くなり目をそらしてしまった。セレナも目をそらし、深呼吸をする。
「謝らないで。私の髪の毛を褒めてくれるのは家族だけだから嬉しいわ。ありがとう。でも私はあまり好きじゃないの。だって魔女みたいって小さな頃は虐められて。魔女の髪の毛はみんな銀色をイメージしているからね。」
銀の髪は亡くなった母親譲りでこの世界では珍しいらしい。歳をとって年配になり白髪になって白銀色になる人もいるがセレナは生まれてからずっと銀色だ。小さな頃に読んだ絵本で登場する魔女の絵の髪の毛の色が銀色のものが多く、よく虐められたものだ。
「じゃあ私はセレナ嬢の髪の毛のファンになろう。」
「そんなの冗談でもやめて。恥ずかしいわ。」
「本気なんだけどな。」
セレナの顔がまた赤くなるのがわかる。
「はは。また顔が赤い。」
「クラウド様も!」
この時間がいつまでも続けばいいと思ってしまった。
「セレナ嬢、さっきは咄嗟にエルトニアの王子との婚約の話を推すような話をしてしまい申し訳ない。でもあの2人の牽制にはなったかな。これで嫌な噂話が無くなるといいんだが。」
「気にしてないわ。クラウド様の話は紳士的でエルトニアの次期公爵様は頼もしいって思っちゃったもの。」
「あれぐらい普通のことだ。でもエルトニアとの話はこれ以上は聞かないことにするよ。内密のはずだ。なのにマルクス殿下は・・・と不敬罪になるからこれ以上はやめとこう。でもエルトニアでのセレナ嬢人気は本当だし、婚約が決まることを祈っているよ。」
クラウド以外の人との婚約を応援されると胸が苦しくなってしまう。
「私なんかが人気なんて光栄ね。でも一度は行ってみたいわ。」
ー魔法が盛んな国だからずっと行きたい国。
エルトニア帝国はナルシャ王国よりも魔法が使える人が多いと聞く。だから魔法で動く道具なども生産されており技術的にも上なのだ。
「来る時は絶対案内するよ。」
「クラウド様の案内なら安心ね。ってそういえば!一昨日の本!」
鞄から白い装丁の本を出す。
「貸してくれてありがとう。」
「もう読んだのか?」
「面白くてあっという間に読んでしまったわ。知らないことばかり書いてたからとても勉強になったわ。これはエルトニアの本?」
本には難しい記述が多く、主に光の魔法の詳細が記されていた。光の魔法にも攻撃型や治癒型、守護型などいろんな性質があり、使う人物の属性で使えるか使えないかも分かれるのでなかなか繊細な力のようだと読んでて思った。
「よくわかったね。それはエルトニアの本で光魔法の事がわかりやすく載っているから私のお気に入りなんだ。よかったらもらってくれないか?」
「えっ?私がそんな大事なものもらっていいの?」
「セレナ嬢に持っていて欲しいんだ。」
「ありがとう。じゃあお言葉に甘えるわね。でもなぜ私が魔法の本が好きってわかったの?私は魔力がないし話したこともなかったと思うの。」
「えっ?魔力がない?魔力はあるけど使わない?とかではなく?」
「私は魔法が使えないわ。」
その瞬間、クラウドはセレナの手を掴んでいた。
セレナのことがいろいろ明らかになってきます。