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僥倖

この話はずっと書きたかったところです。気に入っていただければ良いのですが・・・

「マルクス殿下。もうすぐ授業が始まってしまいますので簡潔にお話をさせていただきます。」


「話す許可を俺は出していない。」


「では私の独り言ということでも結構ですよ。」


クラウドは手を離すとセレナを背に、マルクスの真正面に立つ。


「フォルン嬢はナルシャ王国より大国である私の母国、エルトニア帝国の王子殿下との婚約が決まったのですか?それはそれは喜ばしい!素晴らしいことです。公爵令嬢であるフォルン嬢はエルトニアでもそれはもう美しく、博識高い御令嬢と有名ですから。」


「よくも我が王国を馬鹿にしたな!」


「気分を悪くされたのなら申し訳ございません。でも話の論点はそこではないのですよ。評判が良く、高嶺の花と模されるフォルン嬢を簡単にこの国が手放すのですか?私の耳には陛下自ら望んでマルクス殿下の妃にフォルン嬢とお決めになったとお聞きしていましたが。それが事実なら大国であるエルトニアが相手でもフォルン嬢を渡さないでしょうね。とても残念です。」


クラウドは残念そうな顔をしておどけるが次の瞬間、マルクスに近づき、耳元で周りには聴こえない声で話を続けた。


(他にも陛下がフォルン嬢を妃にしたい大事な理由を殿下は聞いているのではないですか?それを聞けば手放せないと思いますが?)


「そ、それは・・・」


囁きを聞き、マルクスが一瞬固まってしまう。


クラウドは話終わるとセレナの横に歩み寄り、


「それでも陛下が大切にされているフォルン嬢を殿下は手放そうとしている。我が帝国にとっては僥倖であり、王に代わり私からお礼を申し上げます。ありがとうございます、マルクス殿下。殿下のご判断はきっと両国を思ってのこと。後世にもその英断は語り継がれることでしょう。感謝いたします。殿下も良い縁談に恵まれますよう心より願っております。」


クラウドはマルクスに笑いかけ、胸に手を当てお辞儀し話を終わらせる。

すぐさまセレナの背中に手を添えて校舎に入るように促した。


クラウド達が校舎に入ったことで周りにいた令息令嬢達も我にかえり、蟻の子を散らしたかのように各々教室へ足早に向かった。


「マルクス様、私のためにありがとうござ・・・」


「うるさい!少し黙っていろ!」


「ひっ!」


地べたに座っていたベルが服装を整えながら立ち上がり、マルクスにいつものように抱きしめてもらおうとするが怒鳴りつけられ怯んでしまう。マルクスの心中はそれどころではなく、ベルを構ってはいられなかった。


❇︎❇︎❇︎


「セレナ嬢。改めておはよう。」


「おはよう。クラウド様。前に助けてもらった時もこんなやりとりがあったわね。さっきも本当にありがとう。また助けられてしまったわ。」


セレナが笑うと、クラウドも笑い合う。


「安心した。もう大丈夫かい?」


「私はもう大丈夫よ。クラウド様のおかげだわ。だからもう教室に行きましょ?もう授業が始まっちゃう。」


「授業よりちょっとここで休憩した方がいい。さっきのは疲れただろ?」


今2人がいるのは校舎の裏庭だ。クラウドはセレナの体調を気にし、教室ではなくここに連れてきたのだ。


「でも先生に怒られてしまうわ。私のことはいいからクラウド様だけでも・・・」


「私達はいつも真面目に頑張っているはずだ。今日ぐらい大目に見てもらえるさ。」


にっこりされるともう何も言えない。


2人は校舎からは姿が見えないベンチに腰をかけ、休憩することにした。


「なんだか悪いことしてるみたいでわくわくしちゃう。こんなの初めて。」


「実は私もだ。」


セレナはクラウドの側にいるとドキドキして顔が赤くなっていないか気になってしまう。それでもクラウドへの気持ちに気づいてから初めて話してみるとやっぱり波長が合うというか一緒にいて安心できる相手だと改めて感じた。


「ん?少し顔が赤いが本当に大丈夫なのかい?医務室に行った方が・・・」


「赤い?!だ、大丈夫!ちょっと疲れただけと思う。」


ーわ〜っ!やっぱり赤くなってるのね。恥ずかしいわ。


この気持ちがバレないか心配になる。クラウドには気づかれたくない。婚約の話が出ているのにこの気持ちは隠さないといけない。


「ならいいが無理はしないで。」


クラウドはセレナの髪の毛を掬いそっと口づけする。


「!!」


「あっ・・・驚かせてすまない。身体が勝手に・・・」


するとクラウドも耳が赤くなっていた。


ドキドキ続きます!

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