二股婚約??
読んで頂きありがとうございます^_^
ドアのノックが聴こえるとマリーが入室し、セレナに紙の束を渡した。
「今日お昼にお話ししていた贈り物についていたメッセージカードとお手紙を旦那様よりお預かりしました。セレナお嬢様にお渡しするよう言伝されました。」
「そう、ありがとう。」
セレナは本をテーブルに置き、紙の束を受け取ると少し複雑な気持ちになる。気持ちがない相手からもらった手紙を読むなんてどんな気持ちで読んだらいいのだろう。
「セレナお嬢様、お手紙読まれる間にお茶は飲まれますか?先にお着替えや湯浴みはされますか?」
「お茶はいいわ。寝る用意も自分でできるし大丈夫。もう少ししたら休むわね。ありがとう。」
「そうですか。では、私はこれで失礼します。しばらくは近くにおりますので何なりとお呼びくださいませ。」
マリーはセレナのことを心配しつつも部屋を退室する。部屋に1人になったセレナはソファーに横になり、手紙をテーブルに投げた。
ーークラウド様への気持ちに気づいてしまったら手紙なんて読めないわ。
それでも自分の伴侶となる人物の情報がない今、少しでも手紙が手がかりになるかもしれない。
行儀悪く寝ながら手を伸ばし手紙を一枚ずつ取った。
〜〜〜
貴女の幸せをいつも祈っている。
早く隣を当たり前のように一緒に歩ける日を心待ちしている。その時はよかったらこの服を身につけて欲しい。
貴女の瞳と同じ桃色の宝石を今度は見つけておくよ。今は私の瞳の色の宝石を気に入ってくれると嬉しく思う。
私の国では婚姻時、お互いにお揃いの宝飾品を作って交換し合い身につけるんだ。何が良いか良かったら考えていて欲しい。
〜〜〜
すごく自分のことを好いてくれていることがわかる文章を読んで始めは恥ずかしさがあったが段々読み進めるとこんな自分でも好きと言ってくれる存在がいることに心が満たされていった。
メッセージカードを10枚ほど取ったところで封筒に入った手紙を手にした。父セブルスは結婚の申し出と話していたが、
〜〜〜
セレナ・フォルン公爵令嬢へ
突然の手紙申し訳ない。
私はエルトニア帝国第一王子としてではなく、1人の人間として貴女に結婚を申し込みたい。
貴女が覚えていると嬉しいが昔の約束を果たす時がきたから迎えに行きたいんだ。
近日中に挨拶に行くから待っていて。
〜〜〜
昔の約束?それに王子としてではなくとはどういう意味なのか。最後に名前代わりにサインが書かれていたが崩された文字で読めず、フルネームはわからなかった。
ーそれにしても・・・私と王子は初対面ではない?
約束したということはきっと昔会ったことがあり、話をしたのだ。それに瞳の色も当たっている。でも会った覚えがない。王子に会う機会があればいくら小さな少女でも覚えているだろうし父セブルスも教えてくれるだろう。
セレナは体を伸ばすとソファーから立ち、紙の束を綺麗に揃え、読み書き専用机の引き出しにしまった。
なんだか手紙と多くのメッセージカードを読んで夕食の時に感じた暗い気持ちが楽になった。読んで嫌な気持ちにならなかったのが救いだったのかもしれない。
貴族の結婚で気持ちがある結婚は珍しいと理解しているので自分をこんなにも想ってくれる人と結婚できるなら幸せかもしれないとそのとき感じたのだった。
ーこんなにも思ってくれる人はこれから先現れないかもしれないわね。
セレナは眠くなる前に湯浴みをしてこの日は久しぶりにゆっくりと休むことができたのだった。
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次の日、
昨日は国王との謁見で学校を休んだので2日ぶりの登校だ。少しでも噂が落ち着いていると良いなと考えながら正門で馬車を降りて校舎へと向かう。
「セレナ嬢!ご婚約おめでとうございます!」
「あっ!おめでとうございます!」
セレナは背後から発せられた言葉に驚き、思わず歩くのを止めてしまった。それも1人や2人の声ではない。
ーー婚約って私と誰の話をしているの?
マルクス様?エルトニア帝国の第一王子?
なんだか二股婚約している悪役令嬢のような気分になり頭を抱えた。
読んでいただきありがとうございます。