記憶の約束
本編初めての投稿です。
続きの投稿は夜に少しずつさせていただきますので興味がある方はよろしくお願いいたします。平日はOLママです。
ーいつか迎えにくるから待っていて
セレナは夢をみていた。
目線が低いから小さな頃の思い出のようだ。
目の前の少年の顔はよく見えないが自分より少し年上だろうか。1人の少年がそう言い残して走り去ったことを曖昧だが覚えている。なぜ今更こんな夢をみたんだろう。
コンコンコン。
「セレナお嬢様お目覚めですか?失礼いたします。」
重たい瞼が覚醒する。上半身を起こすと目の前には身の回りの世話をしてくれるマリーが微笑んでいた。マリーはセレナが小さな頃から母親代わりのような存在だ。
「おはよう。マリー。」
「おはようございます。セレナお嬢様。今朝はポカポカ陽気でとても過ごしやすい気候ですよ。そういえば旦那様が朝食を一緒に召し上がりたいとのことです。」
「お父様が?」
父はセブルス・フォルン公爵。この王国の宰相だ。私はその公爵の娘である。
いつもは忙しく夕食だけ共にするのだが。
「なにか話があるのかしら。」
「私は何も聞いておりませんが。」
「ありがとう。すぐ身支度をしたいわ。」
「かしこまりました。」
セレナが顔を洗っている間にマリーは衣装部屋から水色に白いレースの襟や袖についたワンピースを持ってきた。
いつもなら学校があり制服に着替えるが今日はお休みで。
「ありがとう。今日は」
「いつもの図書館に。ですわね。」
「そうなの。さすがね。」
「セレナお嬢様がワンパターンなだけです。もう少し社交のお付き合いを広げられたら」
「私が嫌いなので知っているでしょ?そんな役目はまだ」
「もうすぐ成人の儀が迫っております故、じきにですわ。」
ニッコリ言われると返す言葉がない。
❇︎❇︎❇︎
「おはようございます。お父様。」
「おはよう。」
父セブルスはセレナに挨拶で顔を向けるがすぐに手元の書類に目線を戻し、カップに口をつけた。セレナが席に着くタイミングで。
「親父。いきなり呼び出してどうしたんだ?」
「カイン。まずは挨拶からだろう。それに口調を」
「はいはい。おはようございます。父上。本日もご機嫌が」
「もういい。座れ。」
やれやれといった具合で目頭を抑えるセブルスにカインは気にせず席に着いた。
温かい朝食が運ばれセレナたちは黙って食べていた時のことだった。
「セレナ。おまえの婚約が決まった。」
ガチャン。お皿とスプーンが当たる音が響く。
セレナは驚きでセブルスに目を向けるがセブルスは決定事項のようで目が笑っていない。
「お父様。そんな話少しも」
「もうすぐ成人だ。遅すぎるぐらいだがおまえが頑なに断っていたせいだろう。」
「親父。相手は?」
「そんな急かすな。私も親だ。娘には幸せになってもらいたいからな。」
「私は1人でも幸せですわ。」
笑顔で返すが拒否権はないらしい。
「マルクス殿下だ。」
「マルクスだって!?」
「こら。口を慎め。もうずっと昔から陛下がうるさくてな。諦めが悪い。もう成人だし潮時だ。」
「マルクス様が」
マルクス様とはこの王国の第一王子であり王太子である。学校では1学年上で兄カインとクラスが同じだ。いつも人に囲まれているので目立っており知らない方ではない。でも。セレナは知っている。
「でもマルクスは確かハードン伯爵令嬢と恋仲のはずじゃ」
「一国の王太子だ。すぐに切り替えるだろう。」
「そんな感じではなかったけどな〜」
カインはマルクスとは友人ではあるものの取り巻きではないらしい。
ハードン伯爵。この王国の外相で多方面に権力を持ち、このフォルン家とは反対勢力でもある。フォルン家は現陛下の即位時に力を尽くしたがハードン家はその際、現将軍、王弟を王に推していたらしい。今では落ち着いているが次の即位にも娘を是非王太子妃にと手を回しており、今の話に至る。
「いずれはお前が私の後を引き継ぎ公爵家、この国の宰相となるのだ。今からでもその心づもりはしておけ。」
「うわっとばっちりだ。」
「お前にも関係ない話ではないから呼んだのだ。セレナ。来週にでも陛下との謁見があるからそのつもりで。」
「はい。お父様。」
セレナの中ではいつかはこんな日が来ることは覚悟はしていたがまさか王太子妃になるなんて。
それだけは避けたかった。なぜなら。
「マルクスの奴、落ち着くのか。少し性格に難ありだし、妹を泣かせると思うと行かせたくないな。」
「カイン。」
「お兄様だろ。」
ふふんと鼻を鳴らし兄貴ぶるが。セレナはげんなりと。
「カインお兄様のお相手の方が先と思っていたのに残念だわ。お兄様は行き遅れになりませんように。」
「俺には俺のタイミングってもんが」
「カインは慎重に選んでいる最中だ。」
「げっ!」
セブルスの出発時間となりお開きとなった。
セレナは先行きが暗い気持ちで図書館に行く準備をして馬車に乗ったのだった。
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