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きみのさがしもの ぼくのさがしもの

作者: 天野すす

 しん しん

 雪がふる。


 小さな町で、子どもがひとり、しゃがんでいました。


「どうしたの?」


 ボクは、男の子のうしろまで来ると、そう言いました。


「何かさがしてるの?」


「落としちゃったの」

「なにを?」

「ぴかぴかのお星さま」


 おまつりのある今日は、みんな大はしゃぎ、子どもたちは走りまわっています。


「いっしょにさがしてあげる」

「ありがとう」


 すると男の子はにっこりとわらってそういいました。


 ぴかぴかのお星さま。


「ほら、あそこにあるよ」


 ボクが、指をさすと、男の子はかけよります。両手でひろい、男の子は、うれしそうにわらいました。


「ありがとう」


 そういって、男の子は、走っていきました。


 また、歩いていると、こんどは、家の前で服をたたいている、おじいさんがいました。


「どうしたの?」


 そうボクがきくと、おじいさんはこたえました。


「カギを、なくしてしまったんだよ」


 おじいさんは、悲しそうな顔で、いいました。

 まわりを見ても、カギはおちていません。

 ボクは、おじいさんのポケットに、手を入れてみました。


「穴があいているよ?」

「こりゃあ、たいへんだ。ここから、おちてしまったんだろう」


 おじいさんと、穴のあいたポケットを、見ます。ズボンを叩いてみると、シャンシャン、と音がしました。

 ボクが、おじいさんのズボンをめくると『カギ』が、おちてきました。


「ズボンのうらに、くっついておったとは、たまげた」


 そういうと、おじいさんはわらいました。


「よかったね」


 ボクはいいます。


「これで、プレゼントをもっていける。ありがとう、ボク!」


 おじいさんは手をふって、家に入っていきました。


 ギュッ ギュッ

 あるくたびに音がします。


 あるいていると、こんどは、女の子がこまっていました。


「どうしたの?」


 ボクはいいます。


「手ぶくろをかたほうだけ、なくしてしまったの」


 そういうと女の子は、あかい手ぶくろを、みせてくれました。

 手ぶくろをしてないほうの手は、あかくなっています。


「おかあさんに、もらったばかりなの」


 そういうと、おんなの子は、なきだしてしまいました。


「いっしょにさがそう」


 ボクがいうと、女の子はうなずきました。

 二人が、手ぶくろを探してあるいていると、大きなゆきだるまがありました。


「わたしの手ぶくろ!」


 女の子はとつぜん走っていき、ゆきだるまの、手になっている、ぼう、から手ぶくろをはずしました。


「よかったね」

「ありがとう」


 そういうと、女の子は、手ぶくろをつけたあかいてを、ふってはしっていきました。


「ねえ?」


 おんなの子が、途中でたちどまると、ボクにいいました。


「あなたは、なに、をさがしているの?」

「なに、もさがしていないよ?」


 ボクは、首をふりました。


「そっか。じゃ、またね」


 走っていく女の子をみて、ボクは、さっきの言葉を、思いうかべていました。


「ボクのさがしもの?」

「ユスラ!!」


 大きな声がします。


「おかあさん」

「どこに行ってたの? さがしたのよ」

「ボクもさがしてたよ」


 そういって、ボクは、おかあさんの手を、にぎりました。


『ぼくのさがしもの』


「みつかった」


 ボクがわらうと、おかあさんも笑っています。

 大きな足あと、小さな足あと。

 二人は手をつないで、大きなもみの木のあるほうに、歩いて行きました。

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― 新着の感想 ―
[一言] 「探しものは何?」と聞かれて「何もないよ」と答えたボクは、無意識にお母さんを探していたんですね。 『お母さん』という存在は子供にしたら側にいるのが当たり前で、いなくなれば探すのが当たり前。も…
[一言] 迷子になっていることをうっかり忘れていたのですね。お母さんはさぞかし心配したことでしょう。 もしかしたらお母さんは、ユスラくんが親切にした男の子やおじいさんにユスラくんの話を聞いて、一生懸…
[一言] 落とし物を探す手伝いをしていた少年は、探される側でもあったのですね。 お母さんはさぞかし心配だったでしょう。 でも、ユスラ君がみんなの探し物を手伝ってあげたお陰で探し物は見つかったわけで、終…
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