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第7話 ポンコツ神様再び

 ぼんやりと明るい()()()()()に存在の崩れかけた体を投げ出し、我は天と地ともわからない虚空を仰いでいた。

 どのくらいそうしていたか、いつからそうしているかわからない。

 何もないその場所に漂い、いつかは消えていくのだろう。

 我の存在が綻んできている気がする。


『やはりどうやってもこれでは滅亡で終わるか』


 憎たらしい声が聞こえてきた。

 また会えたら文句を言ってやろうと、最期に思っていたはずなのに、意識は不定形に揺らいでいる。


『消し飛ばされた魂の残滓を集めてはみたが、やはりもう使い物にならぬか』

 

 ナニヲイッテイル…?

 神は我に言っているわけではなかった。

 虚空に浮かぶ一人の少年を見つめていた。

 最後まで我を抱き締めてくれた少年が、虚空を漂っている。意識は()()ようだ。

 その存在はあちこちを()()()()()()()()()()我よりも希薄で、今にでもバラバラになって消えてしまいそうだ。

 少年を眺めていた神は我の意識に気が付きこちらを見た


『こちらは()()使()()()ようだが、随分とまあ、損傷が激しいようだな。次回が最後か』


『助けになるであろうと思ったが、見込み違いか』


 我に対して言っているであろう言葉にブチギレゲージがマックスになった我は今までが嘘のようにすくっと起き上がり、神に言う。

「冒険序盤にドラゴン出てくるとか、玄関開けるとラスボスか! しかも玄関開けてすらいねーだろ! 馬鹿なの? ただの幼狐娘が勝てるわけねーだろぃ‼」


『………………⁈』

 威圧的な雰囲気だった神が何やら唖然とした後に怪訝な雰囲気に変わる。

『アッ……ハイ。能力付加忘れてましたわ。イッケナーイ』

 駄目神の姿が見えていたら、きっとまたてへぺろしていたに違いない。

『ぶっちゃけた話、世界安定の基点になるはずの彼が生存するルートが確立できなくて、ギャルゲーで言う攻略対象の女の子のフラグがバグで立たなくて何度やっても死んでしまうって感じ? それを修正するアップデートとして君をぶち込んだつもりだったんだけど、そうか機能していなかったのか! わかってよかった!』

 ケタケタと笑うように言う駄目神だったが、すぐに雰囲気は真面目に戻る。

『まあ、これは真剣な話なんだけど、彼には無理をさせ過ぎてね。あと一回で魂が壊れてしまう。壊れたレコードみたいに何度も同じ時間を延々と繰り返して貰っていたら、気が付いたらもう後戻りできないところに来てしまっていたよ。次があの世界の最後さね』

「……あのエロガキ坊ちゃまが世界を安定させる鍵……? 本当に? 間違ってない? 人選ミスじゃない?」

 思わず聞き返してしまう。

『ああ、あれは君の()()()()()()()に惑わされてしまっただけだろう。本来は至って真面目な子のはずだよ?』

「なんで最後にクエスチョンが付いてそうなの? 馬鹿なの? まともな人材選べやこら」

『君を無理やりあの世界に挿入した結果歪みが出て結果なんて言わないよ』

「言ってるやろぃ!」

 ()()()()()()()()、早くなんとかしないと。

「我にあのドラゴン倒せるくらいの力を持たせれば良いのでは?」

 異世界転生モノに付き物のオレツヨ幼狐娘なんて良いではないか。主人公は我なのだから。

 無い胸を張ってふんぞり返ってみる。

『ああ、それだけど、駄目なんだ。君の願望──もとい要望に沿って肉体を構築してしまったから、キャパ不足で能力詰め込んだら風船みたいにパァンするよ君』

「じゃあ他の人でオナシャス」

『君を崩して別の人作り直すけど良い? 冒険の書は消えてしまいました、デン! 0%!0%!0%!みたいな。彼はもう君を覚えていないだろうけど』

「えっ……それは」

 虚空を漂う坊ちゃまに目をやる。今まで駄目神に酷使されて、知らず知らずにボロボロになっていたらしい。

 エロガキではあったけど、最後の最後に守ろうとしてくれた──。

 彼を忘れてしまうのはなんだか忍びなかった。お漏らしを笑っていたのは許さないが。

『君は修練を積めば無限に強くなれるようにしておくよ。スタートはスライムにも手を捻られるようなクソザコ幼女だけどね』

「あんた口調変わってない? 大丈夫?」

『ほら、一応神だし? 威厳ってものがさ』

 我はふと考え込む。前回で何が最も大変だったかを考えていた。

「じゃあ神だって言うのなら、言葉を通じるようにして欲しい。切実に肉体言語は辛すぎる」

『あれ、適用されてなかっ……わかった、やっておくよ』

 言い直しやがった、駄目神め。

『──で、だけど君に頼みがある。あのドラゴンのフルパワーを一度だけ防ぐ力をあげるよ。だから世界をその先へ導いて欲しい。僕と彼で999回繰り返して駄目だったこの物語を君に託すよ。僕ももう力の限界みたいだし?』

「何を言って──⁉」

 急激に駄目神の存在が弱くなっていく気がした。

『最後くらい至高神でいさせてよ』

 駄目神──もとい至高神が言うと、すべてが白く塗りつぶされていく。

 

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