あの日の記憶
少女たちの物語が始まります。
個人的な話で恐縮ですが、Web上に自分の作品を投稿するのはこれが初めてです。不慣れな点もあるかと思いますが、最後までお付き合いいただけると幸いです。
「お姉ちゃんっ、ダメだよ。ここにちゃんといなきゃ、危ないよ」
「まだ街の方に一人で歩いてるおばあさんの姿が見えたんだ。誰も気付いていないみたいだし、あたしがここまで誘導しに行く」
「そんな、先生だってここにいなきゃダメだって言ってたんだし、離れちゃまずいよ」
「先生が言っていたから、何だって言うの? おりこうさんしながらおばあさんを見殺しにして生きていくなんて、あたしにはできない」
「その言い方は、いくらなんでも」
「香澄にはできないかもしれないけど、あたしにはできるわ」
「そんな……」
「ちょっと、何黙り込んでるのよ。あなたはこのあたし、遠藤真澄の妹の、香澄だっていうのに」
「だってお姉ちゃん、今回ばかりは危ないよ」
「はあ、分かった。それじゃ、こうしましょう」
真澄は香澄の右手を掴んで、小指を立てさせる。
「ちょっと、なに?」
「指切りげんまん。嘘ついたら」
「……はりせんぼん、のーます」
「指切った!」
真澄はそう言い、口角をつり上げてにかっ、と笑ってみせてから、勢いよく駆け下りていった。
そうして、それっきり、真澄が戻ってくることはなかった。