第九話 脱出
眠気に襲われながら書いた為、誤字脱字があれば報告お願いします…zzz
何が起こった? 斬られた? 追っ手は撒いた筈だ…
だったらこの腹部に感じる痛みは…この赤い液体はなんだ?
「 ぐ…ぁぁぁぁぁ… !!」
余りに早い斬撃であった為に、斬られたことを理解するのに時間が掛かった。
痛い……痛い痛い痛い…っ……!!!
初めて受ける斬撃は、黒部の足を止めるには十分過ぎた。
「まさか審判の間で反逆を起こすとは。私とした事が反応に遅れてしまった」
げほっと血を吐き片膝を付きながら、自分の腹を斬ったであろう人物を見上げる。
「お……まえは…」
こいつは俺を気絶させここまで運んだ騎士…しくじった、注意はしていたのにここ迄早いなんて…
「ヴィナスターク王国騎士団、ヴェテリア隊長シエラ・アレキサンドルフ。お前を反逆罪により、此処で切り捨てる」
長い金髪を揺らし、身の丈より少し小さい大剣を黒部の喉元へと向けながらそう告げる。
その翡翠の瞳には、慈悲という感情などは皆無。此処で今斬ると言うのは絶対であると確信した。
「はっ、 隊長直々に……お出迎えか。ギルドの奴らよりはマシだな…けほっ…」
身体強化により内蔵の損傷はある程度避けたものの、横腹はかなり深く切り裂かれている。
今はその傷口から血を流さない為に力を使うので精一杯であり、逃げる余裕など何処にもない。
…詰んだか。
まぁ、頑張った方だな。一矢報いる事は出来なかったが、警戒すべき相手だと言うことは理解したんじゃねぇかな。
悪いアレン、俺が弱いばっかりに。あんだけ息巻いといて、全然役に立てなかった。
俺が死んでも、必ず誰かが俺の逆襲を引き継いでくれる筈だ。師匠だってきっと生きてる…意思は、誰かに引き継がれる。
「…お前らは、何で男を嫌う」
浅く呼吸をし、力を振り絞って尋ねる黒部。
「男は野蛮で自分勝手。女を欲望の捌け口としか見ず、子を成しても責任を放棄する。挙句殺してしまう者までいるそうじゃないか。そんな生物と一緒にしないで欲しいな」
「お前らは違うっていうのか… 」
「グラキエス女王陛下がこの国を導き始めてから、そういう話は聞いた事はない。つまり、お前たちが有害だったのだ。私達、女性だけの世界ならばその様な事は起きない」
この世界の価値観は俺と似ている…認めたくはないが。
女王は男と過去に何かがあったに違いない。じゃなければ、ここまでの憎しみで国を統治するなど不可能だ。
「男が… 全員そうだと言いたいんだな…」
「そうだ。男はこの世界に必要ない。種馬が数人居ればな」
成程。お前達の気持ちはよーーーー…く分かった。
つまり、
「やっぱりお前らはどうしようも無い生き物だな」
こめかみの血管が浮き上がる程の怒りに身を振るわせ、立てるはずの無い傷にも関わらず、ゆるりと立ち上がる。
「何だと? 私達がどうしようもない? お前は頭までゴミだったのか」
心底呆れた様な表情を浮かべながら、トドメを刺そうと大剣を構えるシエラ。
「油断してると…そのゴミに足すくわれるぜ?」
不敵な笑みを相手に向ける黒部。シエラはそれを見て嫌悪感からか、眉を顰める。
「気持ち悪いな。流石は男だ」
皮肉を込めた言葉と共に足を一歩踏み出し、シエラは黒部へと大剣を振り下ろす 。…が、
「頼むぜ、アレン!!」
アレンは目を見開き、水魔法で相手の足元を濡らし滑らせほんの少しだけ剣先をずらした。
「らぁぁぁぁ!! 」
そこへカウンターの蹴りを腹部へと放つと、シエラは肺の空気を押し出される。かはっ!と息を漏らし苦悶の表情を浮かべながら吹き飛ばされた。
「アレン、助かった…!」
「いえ…僕が出来るのは……これだけです…」
アレンはそう述べると、完全に意識を失ってしまった。
俺がシエラと話している間に目を覚ましたアレンは、気付かれない様にこの作戦を黒部へと耳打ちしていたのだ。
アレン、お前は本当に勇敢で強い奴だ。絶対死なせない…俺が死んでも、こいつがきっと意志を引き継ぐ!
腹の傷を力いっぱい腹筋を固め開かない様にしつつ、黒部とアレンは王宮からの脱出に成功した。
「はっ……はっ……、多分この国からはもう出られない。何処か身を隠せる場所…ッ… 」
人気の少ない道を警戒しながら進んでいくと、少し荒れた裏路地を発見し そこへアレンを下ろし自分も座り壁に凭れる。
「 …集中……集中…っ…」
師匠から教えて貰った瞑想で、傷口に能力を集中させ治癒力を高める。
さっきは集中する暇もなかったから本気で死を覚悟したが…運がいいな。
そうしている内に血も止まり 一先ず応急措置を終え、やっと身体の力を抜く。
この一週間、ずっと気合いを入れて集中もしていた疲労は相当なものであり 能力を使った反動も今は大きく、とてつもない眠気に襲われる。
少しだけ… すこし だ け …
黒部の意識は睡魔により途絶えた。
見ていただきありがとうです!