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女(バケモノ)が支配する世界に逆襲(しかえし)を。  作者: Y×2
一章 大都市ヴィナスターク編
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第五話 大都市ヴィナスターク

 




 四つの王国が存在するこの大陸の中で最も人口が多い王国、アミュータ。凡そ500万人が暮らしている。


 その中でもヴィナスタークは、300万の人口を持つ大都市である。


 この都市で一番有名なものも言えば誰もが王宮だと口にする。


 それもその筈、ヴィナスタークの王宮は四大王国の中でも一番の大きさを有しており、淡い水色と青のクリスタルに身を包んだその美しい姿は四大王国の王宮の中でも一番だと言われる程だ。


 この国を一代で大きくした祖の女王、アミュータは途轍もない能力、そしてカリスマ性を活かし弱小王国だった領地を大きく広げ、たった数年でどの王国よりも大きくなっていた。


 そんな彼女の事を他の国の人々は"白銀の魔女"と呼ぶ様になる。その名が付いた理由は、交戦した軍隊はほぼ全員氷の彫刻となって発見されているからである。


 そしてアミュータは英雄として讃えられ、国に自分の名前が付けられたのであった。










 コンコン、と王宮の一室のドアが静かにノックされる。


「お姉ちゃん、入るよ」


 その部屋は淡い青色に輝いており、煌びやかに装飾されたベッド。そして数々の高そうな骨董品や絵、そして一枚の写真が飾られている。


「どうしたの、こんな時間に」


「えっと、明日街に出かけるんだけど、護衛は要らないから」


「貴女は一応私の妹なのよ?万が一に何かあったら…って、心配するだけ無駄ね。ちゃんと変装して行くのよ」


「うん!あと、欲しいものとか何かあるかな…?」


「そうね。じゃあ、髪を纏めるヘアゴムを買ってきて貰おうかしら。貴女の好みに任せるわ」


「それが一番困るんだけど…分かった。じゃあまた明日ね。おやすみ、お姉ちゃん。」


「えぇ、お休みなさい」


 パタッと扉が閉じられれば現アミュータの女王、グラキエスは小さく溜息を吐く。


「あの子はいつも自由でいいわね。私ももっと自由に生きることが出来れば…なんて。そんな事言ってられないわ。私にはやるべき事がある。それを成し遂げる日までは決して誰も信用しない。その為なら誰だって利用する…私の妹以外は、ね」


 ベッドから降り窓際まで歩くとそっと窓に触れ、淡く輝く月を蒼く透き通った瞳で見上げる。


「男を絶滅させる、その日まで。」












 アレンと黒部は都市の中にあるギルドへ向かっていた。


 ギルドは元いた世界で言う市役所なもので、住民の管理から討伐依頼まで幅広く対応しているらしい。討伐依頼が凄く気になる今日この頃だ。


「…こりゃ凄いな。男の村とは何もかもが違い過ぎる」


 全てが絢爛豪華に作られており、まるで男との差を顕著に表しているかのように黒部達を見下ろしている。

 元いた世界でもこんな大都市は存在していなかった。


「こっちではこれが基本なんですよ。僕も初めて見た時腰抜かしちゃって」


「そりゃそうだろうな。こんなの見たら誰でも驚く」


「その割には黒部さん、落ち着いてますね」


「あー…まぁ、色んな所冒険したからなー」


「へぇ~、やっぱり黒部さんは凄いですね!良ければ旅の話聞かせて欲しいんですけど!」


 キラキラと目を輝かせて目を乗り出すアレンに、それよりも今は市役所の奴になんて言うか考えないとな、と話題を逸らす黒部。


「あー、そうですね。ホント、なんて言われるか…」


 上手く逸れたな。良かった…。


「何かあれば俺も一緒に居るから安心しろ」


「はい!頼りにしてます!!」

 あっ。これ全面的に俺に任せる気だ。


 そんな会話をしている内にふとなにかに気付く。

 それは周りからの目線。まるで人間として見られていない、家畜を見るような反吐が出そうな目線だった。


「予想はしてたけど、こうもまぁジロジロ見られちゃ気分が悪いな」


「仕方ないですよ。僕も黒部さんも目立っちゃいますから…」


 ここはまだ見知らぬ土地。大人しくしておいた方が身のためか…と、黒部はその視線を無視しながらアレンの少し後ろを歩く。


 しっかしどこ見ても女しか居ない。俺には一番キツい時間だぞ。ここに来たのが俺じゃない奴だったら一瞬で死んでるんじゃないか?

 女だらけだひゃっほーい!俺のハーレム生活が始まるぜ!!で、異世界ライフ終了って所だな。


「 黒部さん、なに1人で話してるんですか?」


「えっ!?いや〜ちょっと頭の中の事を整理してただけだ」


 声に出てたのか、恥ずかしっ…。


「あ、黒部さん!見えましたよ!」


 視線の先にあったのは、市役所にしては余りにも立派過ぎる建物であった。その風貌はまるで城の様であり、自分が知っている市役所とは遠く掛け離れている。


「えっと、これがギルド?お城と間違えてない?」


「間違えるはず無いですよ。これがギルドです!他の国と比べてもかなり大きいと聞いてます」


 やっぱり俺が来た時代よりも色々なものがインフレーションしている。

 こりゃ逆襲(しかえし)どころか下手すりゃ永遠にこの世界を理解出来ずに寿命迎えてしまう。


 黒部は悩ましそうに顔を顰めてまた思考に耽る。


「…ん……ろべさん…!黒部さん…!」


「ん、あぁ!どした?」


「何か黒部さん、さっきから変ですよ?ずっと意識がここにあらずみたいで…」


「あ~、ほら、俺はこんなデカい街に入るのは初めてだからよ?色々気になってな?」


「ふふっ、それもそうですね。それよりもほら、着きましたよ」


 この都市の何もかもが煌びやかで大きいのは、女と男の格差を見せつけるものだ。


 数は少ないが、多少ここに男は出入りするだろう。そして男は出入りする度にきっとこう思う。


 俺達は女に敵わない、と。


 実際黒部自身も、この技術力を前にして唖然とした程だ。こうも見せつけられてしまうと、逆らう気も失せてしまう。


 だが、


「やるしかないな」


 ふぅ…と 一呼吸挟み、ギルドの扉を開けた。




読んでいただきありがとうございます。

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