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女(バケモノ)が支配する世界に逆襲(しかえし)を。  作者: Y×2
一章 大都市ヴィナスターク編
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第四話 プレミア《 天性 》

 





 二人はヴィナスタークへ入る為、通行許可書を提示する為門の近くにある関所へと向かっていた。


 ふとアレンは、黒部の隣を歩きながら彼を見上げると口を開く。


「それにしてもアツユキさんって大きいですよね」


「ん?まぁ確かに一般人よりは大きいかもな」


「僕でもかなり大きい方なのに凄いです…」


「そんなに凄いか?」


「えぇ、僕で村の中で一番大きいんですから。」



 パッと見た感じ、アレンは170cm以上は確実にあるだろう。

 アレンが村で大きいと言う事は、この世界の平均身長はかなり低い事になる。


 聞くところによると、この世界の平均身長は男性で158cm、女性で165cm程だと言う。


 黒部の身長は187cm。平均を聞けばこの世界でもトップクラスで高いと考えられる。


 確かに言われてみれば、ここに来てから人を見下ろす事が多いし家の敷居も低い事を思い出す。


「身長が高かったらいい事があるのか?」


「戦闘において有利に働いたりしますよ。体格は重要ですから。後は注目は浴びますね。それにアツユキさんぐらいの身長があれば、その種が欲しい女性も居るかも知れないです」


「種?なんだそれ」


「えっと…そのまんまの意味ですよ?」


 これ以上は恥ずかしいので言いません!と少し照れながら前に向き直りそそくさと関所へと歩みを進めるアレン。


 なんだよ、無駄に可愛いなおい。



  そうこうしている内に二人は関所へ到着した。これまた無駄に凝ったデザインのされている関所であり、この国は余程裕福なのだと伺える。


「ふぅ…よし、じゃあ行きましょう!」


 アレンは気合を入れる様に両頬を叩くと、関所の窓口へ向かっていった。


 窓口は一つしかなく中には二人の女性がタブレット?を弄ったり、こちらの世界の携帯らしきものを使って何かをしている。


「あの、門を通る許可をいただきに来ました。プレミアのアレンです。」


 アレンが声を掛けるも、二人とも反応しない。

 聞こえてないのか…と黒部は疑問に思いながらも、その様子を眺めていた。


「あ……あの!通行の許可をいただきにきました!プレミアのアレンです!」


 先程よりも大きな声で話しかけると、やっと二人のうち窓口に座っている女の方が振り向いた。


「あ〜煩いなぁ。聞こえてるっての。んで何?今丁度いい所なんだから早くして。」


 は?なんだこの女は。


 思わず心の声が出そうになるのを抑える。


 あまりに扱いが雑すぎるので黒部じゃなくても苛立ってしまう態度だ。


「えと…通行の許可を…」


「あぁ、あんた見捨てられた村(ガーベッジ)のリーダー?ア〜…何とかだっけ。さっき3時間ぐらい前にも来てたよね?1日に2回通行出来ないの知らない訳じゃ無いでしょ?」


「は、はい。ですが、一人記入漏れがありまして…」


 相手に臆しながら話すアレンに対して、黒部はウズウズして仕方がなかった。


 ちゃんとテキパキ喋れよ!だから舐められるんだぞ!


 などと思いながら物凄い形相でアレンの少し後ろから受付嬢を睨み付けている。


「別にゴミが一つぐらい増えてもそっちに影響は無いでしょ?」


「でもこの国の決まりでは男性が増えた場合、一人漏らさず記録しなければ全員にペナルティが課される決まりじゃないですか…!」


「ペナルティ課されんの私達じゃないもん。知ったこっちゃないわよ。」


「そ…そんな…」


「そうねぇ。でも一つ言う事聞いてくれたら通してあげてもいいわよ?」


 それを聞いた瞬間察した。女のあの目はアレンに屈辱的な事ををさせる目だと。相手を辱め、愉悦に浸り嘲笑う女の悪魔的部分だ。


「ほ、本当ですか!」


「えぇ。裸になって10周ぐるぐる回って通して下さいってお願いしたらね?」


「なっ……」


 その時


 バンッ!と窓口の鏡に明らかに一般人よりも大きな手が張り付く。そして硝子はミシリ…と音を立てて少しヒビが入る。


「きゃあ!?」


 それには思わず二人の女も驚かざるを得なかった。



「あの、俺の責任なんだから俺がやった方がいいか?」


 窓口に顔を見せると、二人の女の背筋に悪寒が走る。


 突然巨大な男が現れたと思えば、鬼のような形相で睨んでいる。流石に怯んでしまうのも無理はない。


「……チッ、早く通れ!ゴミの管理もちゃんと出来ないのかよ…!」


 受付嬢は通行許可の紙に判子を乱暴に押して投げ捨てれば、逃げる様に奥の部屋へ消えてしまった。


「ったく…本当にどうしようも無い奴らだな 」


 と言いつつ、もしも何かされた時はアレンを頼るつもりだったとは口が裂けても言えない黒部である。


「ほれ、これでいいのか?」


「あ、はい…ありがとうございます…」


 この人は女性に対して恐怖が一切無い。それは一般人では有り得ない。プレミアである自分ですら女の人には足下にも及ばないのに。


「おい、なにボケっとしてんだ。さっさと行こうぜ?」


「 は、はい…!」


 先に門へと歩いていく背中を見てアレンは思う。


 もしかしたら…もしかしたらこの人は僕達男性にとっての希望になりうるんじゃないか。きっと歴史をも変えてくれるのではないか…と。


 黒部の大きな背中を見ながらそんな根拠の無い確信を抱いた。


 しかしそんな根拠を抱かせざるを得ない程、黒部のした事は常識を逸脱していたのだ。






 黒部はギルドに向かう途中、奇妙な物を沢山発見した。その中でも特に目を引いたのが宙に浮くクリスタルと炎。


 一体どういう原理で浮いているのか。

 炎はどうして何も無いところで燃えているのか。

 知りたい事がそこら中に転がっている。情報過多だ。


 が、それより気になったのは“プレミア"という言葉だ。


 アレンはここを通る際の通行許可書を貰う際、"プレミアのアレンです"と自己紹介していたからだ。


「なぁアレン。プレミアッてのは一体何なんだ?」


「えっ、知らないんですか!?あ、記憶喪失でしたもんね」


「そ、そうなんだよ!困っちゃうぜホント…」



 騙している事に罪悪感を覚えながらアレンに話の続きを催促した。


「記憶喪失はいいとして、プレミア…ってなんなんだ?」


「えっと、プレミアと言うのは全体力数(イディナ)の低い男性の中で、稀に生まれる全体力数(イディナ)の高い男性の事を言います。」


「その全体力数(イディナ)ッてのは?」


全体力数(イディナ)と言うのは身体力数(ノーティタ)魔法力数(マウィギ)を合わせたものです」


 成程。つまり男は女よりも身体力数(ノーティタ)魔法力数(マウィギ)が劣っているからあんな扱いだったのか。


全体力数(イディナ)ってのは、平均的にどれぐらいなんだ」


「女性の方は6500。男性はせいぜい50から100程度ですね」


「女の65分の1かそれ以下かって事か…。じゃあ、アレンはどうなんだ」


「僕は一応7000あります。身体力数(ノーティタ)が5600、魔法力数(マウィギ)が1400ってところですね」


「平均超えてるじゃないか。それならあんな奴らに馬鹿にされないだろ」


 その言葉を聞いた時、やっぱりそう言いますよね…とアレンは黒部に向けて苦笑を浮かべた。


「大都市ヴィナスタークは人口300万人。その内の30%以上が全体力数(イディナ)10000を超える人達で、50%が10000から5000。残りの20%は5000からそれ以下なんです。あの受付にいた人達は平均なんて軽く超えてますよ」


 そこまで差があるのかと黒部は考える様に俯く。


 そんな格差社会で生きてきた男達の苦労はきっと計り知れないものだろう。

 どうにかしてこの状況を切り開く術を考えないだろうか。



 今は何も分からないけど、こんな理不尽を放っておく事なんて出来ない。出来る事は少ないだろうが、何かの力になれればと黒部はアレンに視線を密かに向けながら考えるのであった。



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