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第6話 勉強

 シュゼリアは想像したよりずっと楽しく龍の国で過ごしていた。


 ロンに教師をつけると言われた日の次の日に、龍族の教師が来ると聞いて怖さのあまり、ベットの上で毛布に体を包んで丸まって隠れていた。


 教師らしき人物が部屋の扉を開けると、体を硬くして縮こまって震えた。


 シュゼリアのいるベットの方に足音が近づいてくるのがわかりビクビクしたが、その足音はベットに近づく前に止まって音がしなくなった。


 シュゼリアは毛布の中で音がしなくなっても震えていたが、暫くするとなぜ音がしなくなったのか気になってきた。

 びっちりと覆われた毛布に少し隙間を作り、片目で先ほど音が止まったような気がした辺りを見た。


 するとそこには優しそうな青い髪に瞳の色の女性がにっこり笑って立っていた。

水色の布に白い帯を巻つけた服装は、着物にもドレスに見えて、上品で優しい印象を与えた。

 人に擬態しているが頭の上に生えたツノとお尻から生えている太くて青い尻尾で彼女が龍族であることはわかった。


 シュゼリアはその女性と目が合うと驚いてすぐに毛布の隙間をなくした。


 暫く震えていたが特に声がかかることはなかったので、気になって毛布に隙間を作り先ほどの女性が立っていた辺りをもう一度見た。

すると、その女性は先ほどと同じ場所にいて、同じ顔のままニコニコとシュゼリアが被っている毛布を見ていた。


 シュゼリアはもう一度毛布の隙間をなくして全身を毛布で覆ったが、何となく気になってきたため気がついたら声をかけていた。

「こ、こんにちわ。」


 毛布の中で声を出したのでくぐもった声で聞き取りにくかったが、女性には聞こえたらしく、柔らかな優しい声で返事が来た。

「こんにちわ。」


 シュゼリアはそのまま柔らかな声が心地が良くて気がついたら毛布から顔を出していた。

 女性はシュゼリアを見てニコニコしているだけだった。


 シュゼリアはその笑顔につられるようにベットから出て、女性の前まで気がついたら来ていた。


 その女性はニコニコ笑うと、部屋の椅子を引いて、シュゼリアを座らせて、自身も机を挟んで向かい側の椅子に座った。


「初めまして。私は陛下より派遣されました、家庭教師のリハです。」

 女性はニコニコ笑ったままポケットに手を入れるとポケットから小さなお菓子がいくつか出した。

 お菓子は、チョコレートやキャンディなどシュゼリアの大好きな甘いお菓子ばかりだった。


 シュゼリアはそのお菓子たちを見て、ゴクリと唾を飲んだ。

「良かったらどうぞ?お近づきの印です。」

 リハと名乗った女性にそう言われるとシュゼリアは喜んで目の前のお菓子を全部自分の方に寄せて袋を開けて食べ始めた。


 リハはシュゼリアの様子をニコニコと見ていた。

 お菓子をすべて食べ終わる頃にはシュゼリアの警戒心はとけていた。


 リハは表紙に小さなお菓子がたくさん描かれているピンク色のノートをカバンから出すと開いた。

 服の胸の辺りに付いているポケットから可愛らしいリボンが上に乗っているペンを取り出すと先ほどシュゼリアが食べた、チョコレートとキャンディの絵を描いた。

その絵は本物と見間違うほど上手で、シュゼリアは絵を見ただけで先ほどのお菓子の味を思い出して唾を飲み込んだ。


「これは何かわかりますか?」

「チョコレートとキャンディだぞ!」

 シュゼリアは得意げに答えた。


「そうですね。正解です。よくできました。」

 リハはシュゼリアを褒めちぎり、シュゼリア照れた顔をして頭をかいた。


 リハは自身の書いた絵の下に文字を書いた。

「これはこのお菓子の名前の文字です。」


「チョコレートとキャンディと書いてあるのか?」

「そうです。では私の書いた文字の下に同じ文字を書いてみましょう。」

 リハはそう言うと、可愛らしいペンとノートをシュゼリアに渡した。


 シュゼリアは言われた通りにリハの書いた文字の下にチョコレート、キャンディと読むらしい文字を書いた。


 文字を書きなれていないシュゼリアの文字は歪んでいて見にくかったが、そのことに触れることはなくリハは褒めちぎった。


「お上手です。きちんと文字が書けましたね。」

 シュゼリアは褒められたことが嬉しくてニコニコ笑ってリハと自分の書いた文字を何度も見た。


「このノートとペンは差し上げますので、このページいっぱいに明日までにチョコレートとキャンディと書くことはできますか?」

 シュゼリアは可愛いノートとペンがもらえると聞いて嬉しそうな顔をして何度も頷いた。


「できるぞ!」

 リハは優しそうな笑顔をシュゼリアに向けると、今日の授業はもう終わりだと言ってポケットから大きめのキャンディを1つ取り出した。


「では、これは今日頑張ったご褒美です。明日きちんと宿題ができてたら、もっと大きなお菓子をあげますね。」

 シュゼリアは嬉しそうに、リハが差し出したキャンディを受け取った。


 何度も何度も頷いて、リハが部屋から出て行くのを手を振って見送った。


 リハが扉から出て行くと、シュゼリアは早速もらったキャンディを舐めながらノートにチョコレートとキャンディと読むらしい文字をたくさん書いてページを埋めた。


 褒められたのが嬉しくて、1ページでいいと言われたのに3ページも文字で埋め尽くした。


 書き終わるとお菓子がたくさん描かれている表紙のノートとリボンがついたペンを何度も眺めた。

 リハのようにお菓子の絵を描いてみたりした。

 リハのようにうまくは書けなかったが、初めて描いた絵を見てシュゼリアは満足だった。


 魔界でグレンデールに家庭教師をつけられていた時とは全く違い、ロンにつけられた家庭教師の先生は優しくて、授業も楽しくて、シュゼリアは嬉しかった。


 魔界の魔族の家庭教師の先生は、いつもシュゼリアが間違えると、魔法で攻撃をしてきた。

 シュゼリアは魔王の補正のお陰で魔族に攻撃されても全く痛くはなかったが、明確に向けられる敵意を感じて怖かった。


 間違えるのが怖くなり、いつのまにか授業に行くのも嫌で授業自体を逃げ出してしまい、自分の名前すら書けなかったけど特に困ったこともなかったので気にしていなかった。


 でも、自分の好きな食べ物の名前を文字で書くことができることが楽しいと感じた。

もっともっと覚えたいと思った。


 それに、人間界で買い物するときに、何が書いてあるかわからなくて勘で買い物をしていたが、文字が読めたら好きなお菓子を買いに行くときの楽しさがさらに増すかもしれないと思い浮かれた気分でノートを閉じた。

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