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第5話 龍王の仕事部屋

 真っ白な水蒸気に覆われた空の上に黄金色に輝く城がある。

 その城の周りには鎧を身につけた赤、青、黄色など多様な色の龍が城を護衛するように、手には槍を持ち、飛び交っていた。


 空に浮かぶ龍族の町に龍族の許可なく人間はおろか魔族は何人たりとも侵入することはできなかった。


 龍族の街の中央にそびえ立つ輝く城の一室に、龍族の王ロンは、城の見た目にそぐわない簡素な木製の椅子に座って書類に目を通していた。


 木製の椅子は人間が座る椅子の3倍ほどの大きさで、大きな龍族が座ってもきしむ音すらしない丈夫な作りになっていた。


 この部屋は執務室で、見た目よりも実用性が重視されていた。

 執務室の壁は、ぎっしり本が詰まっている大きな本棚で殆ど見えなかった。


 部屋には簡素な来客用の机と椅子が4脚置いてあり、その一脚に座った赤い髪に瞳の龍族の中でも大柄な体型の人型に擬態した龍の男性が執務室中に響く声で大笑いをしていた。


「ギャハハ〜!ギャハハ〜!!」

 腹を抱えて大声で笑う赤い龍に、ロンは持っていたペンを強く握った。

 ペンはミシリと音を立ててヒビが入った。


「アモン!仕事の邪魔をするなら出て行け!」

 アモンと呼ばれた赤い龍は必死に笑うのを抑えようと腹筋に力を入れてみたが無理だった。


「ふはは!ふひいい!!だ、だって、ロン様の番が、魔王様だって国中大騒ぎで。ぷくくく。見に行ってみたら、ふははは、何だあれは。あの萌え系魔王様は!!白い猫耳、に尻尾って可愛すぎるだろ!!あれが魔王様とか誰が信じるんだよ!!ひははは、しかも、近づくだけで泣いちゃうなんて、弱すぎだろ!!」

 アモンは、笑いながら声を出したので聞き取りにくかった。

 しかしロンにははっきりと通じたようで、怒りのあまりペンを持つ手をさらに強めたため、ペンはポキリと音をたててとうとう2つに割れた。


「おい!!何でお前があいつの容姿を知ってる!?.いやまて、見に行ってみた?近づくだけで泣いた?俺の許可なくあいつに会ったうえに泣かせたのか?」

 ロンは怒りのあまり自信が折って2つになったペンをアモンの顔めがけて思いっきり投げた。


 アモンは笑いながらそれを交わした。

 ペンは執務室のドアに突き刺さったが、いつのまにか消えていて、刺さった後も無くなっていた。


「だって、ロン様がいきなり番を連れて来たってだけでも気になるのに、それが魔族の王で、しかも教育係だけつけて会いにも行ってないと聞いたらどんなやつなのか見たくなるのは仕方ないかと。」

 アモンはいつのまにか扉に突き刺さった2つの割れたペンを持っていた。

 アモンが小さく口を開いて呪文を唱えると2つの割れたペンはくっついて元の状態に戻った。

 アモンはそのペンをロンに投げた。

 ロンは嫌な顔してペンを受け取り、机の上に置いた。


「見たくなるな!それに、見に行くなら俺に許可を取れ!あいつは一応俺の客なんだ!」


「だって、ロン様に聞いたところで絶対ダメだって言うのはわかりきっているので、後で怒られらのは分かりきっていましたけど、それだけで済むなら会いに行くに決まってますよ。それにしてもシュゼリア様は可愛いな〜。

 最近自分の名前が書けるようになったって自慢げに話してくるんですよ。龍族は見かけによらず親切で優しいから好きらしいですよ。ずっとここにいれたらいいなって言ってたから好きなだけいればいいよっていつもお茶して話してるんですよ。」


「おい!あいつの名前を呼ぶな!!それに、いつもって何だ?お前何回あいつに会いに行ったんだ?」


「何回って、ロン様がシュゼリア様を連れて来た次の日から毎日?」

 アモンは首を傾げながら、日数を数えるように指を折ったが、数えきれなかったのか途中でやめた。


 その指の動きを見ていたロンは拳を握りしめて怒鳴った。

「ふざけるな!!お前はしばらく外出を禁じる!!」


 アモンはロンの怒り狂った様子を見てニヤニヤと意地悪な顔で笑った。


「了解しました陛下。全く会いに行くそぶりがないと聞いていたので、シュゼリア様が陛下の番だと言うのはデマなのでは?と王宮の侍女たちが噂しておりましたが、やはりシュゼリア様は陛下の番様だったのですね。番様に許可なく会っていた罰を謹んでお受けします。」


 アモンは礼儀正しく、両手を前に組み、膝を曲げて傅いた。


 ロンはアモンのその動作を鋭い目つきで睨みつけながら見ていた。


「俺はあいつを番だと認めたわけではないからな!!」

 ロンの叫び声は執務室中に響き渡ったが、部屋にいるのはロンとアモンの2人だけだったので、他のものに聞かれることはなかった。


「じゃ、シュゼリア様をどうするんですか?国に返すのです?今は陛下の番だと言うことで龍族の王宮に滞在してもらっています。

 番いでないのなら、龍族からも魔族からも魔王城に返せと言われますよ。」

 ロンは図星を指されたような顔で言葉に詰まったが、アモンがロンの表情を見てニヤついた笑みを浮かべたので、ハッとした顔をして怒鳴りつけた。


「と、とにかくお前は謹慎だ!部屋に戻れ!!」

 アモンはロンの怒鳴り声を聞いて肩をすくめた後、執務室から大人しく出て行った。


 ロンはイライラした様子で、ペンを手に取ると書類にサインをし始めたが、あまり集中できていないようで手が止まった。


「あぁー!!クッソ!!」

 ロンは誰もいない執務室で叫ぶと思いっきりペンを机に叩きつけて執務室を出た。


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