第30話 魔王
ギシギシと音がなる木の橋の上に、ロンが降り立つと、人型になり慌てて魔王城の中に入った。
シュゼリアがどこにいるのか悩んだが、取り敢えず玉座の間から探すことにした。
ロンが玉座の間の扉を息を切らして開けると、玉座の間の椅子に、先ほどの青年が紐でキツく縛られてる光景が見えて脱力した。
「離せ!!グレンデール。兄になんてことをする。あんなに可愛がってあげたじゃないか?」
「可愛がる?迷惑をかけるの間違いでは?あなたの弟として生まれたことを何度悔やんだか!!」
グレンデールと青年が言い合っている中、シュゼリアは2人のいるあたりでオロオロしていた。
「さぁ、シュゼリア、魔力を人差し指に込めて、ガイルの額に押し当てなさい。」
「兄の名を呼び捨てにするとは、グレンデールも偉くなりましたね。」
「あなたは今魔王でもなんでもないんです。呼び捨てで十分ですよ。さぁ、シュゼリアそうすると、魔王の地位がガイルに戻りますので、やりなさい。」
「やめろ〜!魔王になんか戻りたくない。仕事なんか絶対やりたくない。離せ〜!!」
ガイルは暴れていたが、グレンデールにキツく縛られていて、全く身動きが取れていなかった。
シュゼリアはグレンデールに言われた通りに魔力を込めて、ガイルの額に自身の人差し指を当てた。
すると、シュゼリアの体から何か強大な力が抜け落ちていくのを感じて、倒れそうになった。
ロンはシュゼリアが倒れこみそうになるのを目に移すと、急いでシュゼリアのそばに行き、受け止めた。
シュゼリアはロンに受け止められて、少し目眩がしたが、すぐに意識を取り戻した。
「シュゼリア、髪が…。」
ロンにそう言われて、シュゼリアは自身の胸にかかっている髪の毛を見た。
真っ黒だった髪の毛が、ピンクゴールドに変わっていた。
ロンの瞳に写る、シュゼリアの瞳もピンクゴールドになっていた。
グレンデールは、シュゼリアを見て嬉しそうに口角を上げた。
「魔王の力が抜けたので、元の髪と瞳の色に戻ったのですよ。」
「元の色!元の色の方が、可愛いのだ〜。」
シュゼリアは嬉しそうに自身の髪の毛を見ていた。
「ああ、我が愛しの妻にそっくりな色だな。」
ガイルは魔王の力を取り戻したため、グレンデールに結ばれていた紐をいとも簡単に破ると、シュゼリアのピンクゴールドの髪に優しく触れようとした。
しかしその手は、ロンによってはらわれた。
「何をする?龍王の若造が。」
「私の番に父親といえど触らないでいただきたい。」
「我が娘を嫁になどやるわけがない。とっとと、国に帰れ!」
ロンとガイルはお互い睨み合って、戦う木満々の様子で火花を散らした。
グレンデールはその様子を見て、ため息をつくと、ロンに話しかけた。
「ロン様、国の使者より伝言を預かっています。番様を責めたことを謝るので、早く帰ってきてください。魔王でなくなったのなら、番様も連れてきてもらって構いませんとのことです。」
ロンはグレンデールの返答を聞くと、シュゼリアの体を勢いよく抱き上げて、玉座の間から出て行った。
ガイルは急いで追いかけようとして、グレンデールの出した、新しい紐に止められた。
「離せ、グレンデール。我が娘が、あんな野蛮なやつの嫁にされてしまう。」
「あなたの娘は、あなたが寝ている間に立派に育って、伴侶を見つけました。あなたは寝ていた分の仕事がたっぷり溜まっていますので、仕事をしてくださいね。」
「やめろ〜!離せ!!仕事などしたくない。娘を嫁になどやりたくない〜。」
ガイルの叫び声だけが玉座の間に響いていて、グレンデールはガイルを引きずるように玉座の間を後にしたい。
*******
ロンが龍の姿で、左手にシュゼリアを握ったまま、自身の国を飛んだ。
金の龍の飛ぶ姿を見て、街の人の人は皆頭を下げた。
そして、左手に持つシュゼリアを見て、歓喜した。
ロンが自身の城に着くと、シュゼリアをそっと下ろして、人の姿に戻った。
ロンとシュゼリアが城に戻ると、すぐに城にいた多くの龍族が集まってきた。
その中には、リハやアモン、それに侍女の服を着ているリリーもいた。
シュゼリアはリリーと目があうと、固まった。
しかし、リリーはシュゼリアに近づき、頭を下げた。
「ロン様の番様、あなたの大切なものを壊して申し訳ありませんでした。なんなりと罰をお申し出ください。」
リリーはそういうと、シュゼリアに壊れたネックレスを差し出した。
シュゼリアはそのネックレスを受け取ると、ロンを見た。
ロンはシュゼリアの方を見て告げた。
「何かリリーにしてもらいたいことはあるか?お前が決めろ。」
「してもらいたいこと…なら、友達になって欲しいのだ!」
「は!?」「へ!?」
シュゼリアの回答に、ロンとリリーは驚きの声をあげた。
「どうやら、私には友人がいないことに今回気がついたのだ。だから、友達になって欲しいのだ。…そのダメなのか?」
リリーとロンの反応からシュゼリアは断られるのかもしれないと思った。
ロンもリリーも友人は頼まれてなるものではないと分かっていたが、シュゼリアがそうしたいのならそれでいいかと思った。
「リリー、お前への罰は、シュゼリアと友人になることだ。」
「はい。謹んでお受けします。」
ロンは笑うのを堪えるように告げた。
リリーは肩を落としたが、口の端は上がっていておかしそうだった。
シュゼリアはそんな2人に気がつくこともなく、嬉しそうだった。
「よろしくなのだ。」
リリーはシュゼリアの差し出す手にそっと手を差し出し握手をした。
ロンはシュゼリアを見ておかしそうに笑った。
疲れたので、部屋で休むと皆に告げてシュゼリアを連れて自身の部屋に入った。
ロンの部屋はシュゼリアが想像したよりも地味な部屋で、シュゼリアに与えられた部屋と大差はなかった。
ただ、ベットはかなりの大きさがあり、フカフカだった。
なぜシュゼリアがロンの部屋のベットがフカフカなのか知っているのかというと、ベットの上に押し倒されているからである。
「ロン殿、何をするのだ?」
「ん?もう、皆にも認められたし良いだろ?」
「へ!?何が?」
「自分で考えろ。」
ロンはそういうとシュゼリアの首筋に唇を押し付けた。
「ひやぁ!」
シュゼリアは変な声が出たことに焦って自身の口を両手で押さえたが、ロンは意地悪く笑うと、シュゼリアの腰に巻かれた帯を解いた。
シュゼリアは、涙目でロンを見上げたが、ロンは欲情に濡れた仁美でシュゼリアを見るだけだった。
「そんな目をされると、止まらなくなる。」
ロンの唇はシュゼリアの唇に優しく触れた。
シュゼリアは頬を染めたが、覚悟をしたように瞳を閉じた。
しかし、ロンの動きはピタリと止まり、シュゼリアは目を開けると、驚愕した顔でシュゼリアの胸のあたりを見ているロンが見えた。
シュゼリアも自身の胸のあたりを見てみると、自身の真っ黒な髪の毛が見えただけだった。
何かおかしかっただろうかと首を傾げてシュゼリアは思い出した。
そういえば、自身の髪の毛の色はピンクベージュだったことを。
「髪の毛が、黒になってるのだ。」
シュゼリアは、自身の髪の毛を掴んでまじまじと見つめたが、色が変わることはなかった。
ロンの顔を見ると、こめかみに青筋が浮かんでいた。
ロンが口を開きかけたその時、ロンの部屋の扉がなった。ロンは無視したが、扉を鳴らしたものはそのまま話し出した。
「陛下、魔族の国のグレンデール宰相様より急ぎの手紙が来ています。」
ロンは仕方なく、扉をあけて、その手紙を受け取ると、乱雑に手紙の封を破いた。
すると、手紙はひとりでに浮いて、話し出した。
「ロン様、シュゼリア、申し訳ありません。またしても、兄を取り逃がしてしまいました。どうも次は封印の塔に入ったらしく、申し訳ありませんが、連れ戻してきてくれないでしょうか?」
手紙はそう告げると、ロンの手に落ちて、ロンはそれをビリビリ破いた。
「あのクソ野郎!!シュゼリア、行くぞ!」
「う、うぬ。」
シュゼリアとロンは窓から飛び降りると、ロンは龍になり、空を飛んでかけた。




