第3話 魔王討伐
魔王城の玉座の間には、魔王様が勇者を迎え撃つのに相応しい、黒く不気味な椅子が無機質に置かれていた。
ワインで汚れた赤いカーペットは汚れが落ちなかったのか、洗っている最中なのか、玉座の間にはなく、代わりにピンク色の兎柄の布がくしゃくしゃと置かれていた。
その玉座の椅子に座ることなく、ピンクの兎がたくさんついた布を頭からかぶって、魔王様は震えていた。
「おい!!と言うわけで、お前を討伐に来た。いい加減奇妙な布切れから顔を出して、俺にかかってこい!!」
ロンは青い長着に金の帯を巻いて、同じく金の羽織を身につけて玉座の間の入り口付近に立っていた。
腰には剣が刺さっていたが、腕を組んでいて、腰の剣を抜く気配はなかった。
「と言うわけでとは何だ??全く説明していないぞ、おぬしは!!討伐って何だ!?私を殺す気なのか??」
魔王様は頭からかぶった兎柄の布の中からこもった声を出して叫んだ。
「はぁ??そうだって言ってんだろ?」
「嫌だ〜嫌だ〜!!私はまだやりたいことがたくさんあるのだ!!様名冠のもちもち大福苺チョコも食べたいし、七海亭のさんざんビールも飲んでみたいし、心荒のロリポップキャンディも舐めたいのだ!!!」
「やりたいことって食い物ばかりじゃねーかよ!!って、変なツッコミ入れさせんな!
…めんどくせーな。お前がかかってこないなら、俺から行くぞ!」
ロンはツカツカと大股で玉座の間の階段を一足で何段も飛ばして歩いてきた。
「来るなー!やめろー!!殺されるー!誰か助けてくれなのだ!!!」
魔王様はピンクの兎柄の布をきつく握りしめた。
体はガクガクと震えていてた。
布で隠れて見えないが、顔は死の恐怖に真っ青になっていて、目は固く閉じていて痛みに備えていた。
「おい!!いい加減まずその変な布をどけろ!!だいたいお前は、魔族の王だろ!!魔族の頂点だろ??そんな奴が怯えて隠れてんじゃねーよ!!」
ロンは椅子の前まで来ると、兎柄の布無造作に掴むと、勢いよく剥ぎ取った。
「ギャーーーー!!!!」
魔王様は剥ぎ取られた布を必死に奪い取ろうとしたが、龍族のロンの力にはかなわなかった。
体を覆うものがなくなった恐怖に、体を硬くして、せめて丸まって隠せるところは隠そうとした。
しかし、ロンに勢いよく布を剥ぎ取られたことにより、丸まったまま回転して、長い階段をコロコロと転がって落ちていった。
「ふぎやぁぁぁ!!」
魔王様が階段を落ち終わるとベチャリという嫌な音がした。
魔王様本人は自覚していないが、魔族の中でも秀でて体は丈夫なので無傷だった。
「ゔゔゔ〜。うわ〜ん!!痛いよ!!」
魔王様は無傷だったが、少しぶつけた痛みを感じ、転んだままのうつ伏せの体制のまま大泣きした。
ロンは眉間にしわを寄せ、小さく舌打ちをした。
一足で階段下の魔王様の前まで来ると、魔王様の黒いドレスの首の後ろあたりをつかんで持ち上げた。
「びきゃ〜〜〜!!!!」
魔王様は恐ろしい敵を相手に目をつぶり、体をワタワタと動かしたが、身長差がかなりあるため、手も足もロンの体には届かなかった。
(もうダメだ!!殺された!)
魔王様は覚悟をして、抵抗するのをやめて動かなくなった。
しかしどれだけたっても何の衝撃も来なかったため、魔王様は恐る恐る目を開けてちらりと様子を伺った。
「ひいいいい!!!」
魔王様はロンの顔を目に写すと、口から泡を吹いて失神した。
ロンが魔王様を目だけで殺せそうなほど睨んでいたからだ。
ロンは気を失った魔王様を睨みつけながら、小さく呟いた。
「最悪だ。番なんて何かの間違いだ!!」
ロン絶望した顔で玉座の間で1人、魔王様の服を掴みながら立ちすくんでいた。




