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第27話 再開

 煌びやかな店内では、銀色のキラキラした明かりで眩しかった。

 店内にはてかてか光るスーツを着た男性達と高級そうな服装を身につけている女性達で溢れかえっていた。


「魔王様何しに来たんですか?というか、お金持ってますか?」

 黒縁眼鏡をかけて、ビシッとしたスーツを着た男性がソファーに座る魔王様にお水を出した。


「ぬぬ!宰相に追い出されたのでお金は持ってない。暫くここに置いてくれぬか?行くあてがないのだ。」

「お金も持ってない、宰相も払ってくれないのなら、無理です。他を当たってください。」

「あ、あんなに仲良くしてくれたではないか!」

「それは、お金を払ってくれていたからです。」

「お金がないと私の価値はないのか?」

「少なくとも僕にとってはそうです。」

「友人だと思っていたのに。」

「勘違いです。」

 シュゼリアはショックを受けてソファーにうなだれた。


「さぁ、お水を飲んだら帰ってください。仕事の邪魔です。」

 黒縁眼鏡は容赦なくシュゼリアの心を抉ってくる。

 シュゼリアはこれからどうしようかと思いながら、お水をゆっくり飲んでいた。

 少しでもここから出る時間を減らすために。


「その、ここで雇ってもらうことはできぬか?」

「無理です。というか、魔王を雇うような店はこの国にありません。魔族の国に帰ったらどうですか?」

「宰相に追い出された手前、帰りづらいのだ。」

 シュゼリアはお水を飲む手を止めたが、黒縁眼鏡は特にそのことには触れなかった。


「まぁ、少しだけならこの店にいてもいいです。昔のよしみです。ただし、お金を払わないのであれば、その水以外何も出しませんからね。あと、営業の邪魔なので、あちらの部屋に移ってください。」

 黒縁眼鏡は安っぽい木製のドアを指差した。

 シュゼリアは頷くと、黒縁眼鏡に誘導されて個室に入った。


 黒縁眼鏡は先ほどの水を机の上に置くと、シュゼリアを簡素な木製の椅子に座らせて、自身は座らなかった。

「うん。腐ってもさすが魔王様だね。薬は全く効かないみたいだ。」

「薬?」

「うん。薬を盛ったんだけど、気がつかなかった?」

「ぬぬ!!全く気がつかなかったぞ!何の薬なのだ?なぜ薬など盛ったのだ?」

「ただの眠り薬だよ。大人しく国に帰ってもらおうと思ったんだけど、無理みたいだね。」

「酷いではないか!!は!ここにいるともしや、グレンデール宰相が来るのか?大変だ!逃げなくては!!」

 シュゼリアは勢いよく立ち上がってドアノブに手を回したが、ガチャガチャと音が鳴るだけで開かなかった。


「ああ、逃げられても面倒だから、内鍵をかけておいたよ。因みにドアを壊したらグレンデール宰相様に請求するから。」

「酷いのだ〜!!」

 シュゼリアはその場に座り込んだ。


「ほら、お酒作ってあげるから座って。」

「お酒?金など持っていないぞ。」

「いいよ、どうせ今から来る人が払うから。」

「宰相なら払わないぞ。」

「来るのはグレンデール宰相様じゃないよ。因みに、龍王様でもないから。」

 黒縁眼鏡はそういうと、部屋の隅に置いてあった綺麗なグラスにピンクと黄色のお酒を入れて、グラスの飲み口に塩をまぶした。


「はいどうぞ。」

 シュゼリアは出されたお酒を少し眺めた。

 先ほど水に眠り薬が入ってたようだが、このお酒にも入っているかもしれないと思ったが、そもそも魔王の自分には余程の薬でないと効かないだろうと思い美味しくいただくことにした。


「美味しいのだ!」

「そう、それは良かった。お代わりいる?」

「いるのだ!」

 シュゼリアが元気よく答えると同時に、先ほどまで壁だと思っていた場所が開いた。

 シュゼリアが驚いて固まっていると、中から茶色髪の見たこともない綺麗な顔の男性が現れた。


「おや?ずいぶん盛り上がってるね。僕にも1つもらえるかな?」

「かしこまりました。」

 その男性は黒縁眼鏡の男性に話しかけると、シュゼリアの前に座った。


「初めましてこんばんわ。僕は、ハル・リミトリーです。」

「初めましてなのだ。私は、シュゼリア・コゼットた。そなたの名は確か…人間の国の王様の名前だな。」

 シュゼリアは、ロンから聞いたことを思い出した。

 その時ロンのことも一緒に思い出してしまい、胸がズキズキ痛んだ。

 ハルは目を見開くと嬉しそうに笑った。


「知っていてくれたんだね。嬉しいよ。君がグレンデール宰相の姪っ子で、魔王様だね。」

「うぬ。」

「魔王様がこんなに可愛いらしい、女の子だとは思わなかったよ。」

「うぬ。して、私に何のようなのだ?この国から出ていけと言いに来たのか?」

 ハルは目の前に置かれたお酒に少し手をつけた。


「うーん?単純に一度会ってお話ししてみたかっただけかな?人間の国が好きなのですか?」

「うぬ。人間は優しい人が多いから好きなのだ。」

「そう。そうやって行ってもらえると嬉しいよ。龍族はどうだい?」

「龍族も優しいのだ。」

「魔族は怖いの?」

「見た目が怖いのだ。中身もキツイ者が多いのだ。」

 ハルは神妙な顔で頷くと話題を変えた。


「そっか、君は龍王の番なんだってね。」

「うぬ。そうらしいな。」

「龍の国に滞在していたんでしょう?どうして龍の国から出てきたの?」

「ロン殿に迷惑かけたくなかったのだ。」

「迷惑?それはロン様がそう言ったの?」

「…言ってないのだ。」

「ロン様のことが嫌いなの?」

「好きなのだ!」

「それは、恋愛感情?友人として?」

「…多分、恋愛感情なのだ。」

 シュゼリアはまだロンに気持ちを告げることができなかったのに、初対面のハルに言うのはどうなのかと悩んだが、嘘をつくこともできず、結局正直に答えた。


「そっか、よかったね。」

 ハルは後ろを向いて答えた。

 シュゼリアが首を傾げて、ハルの視線の先に目をやると、先ほどハルが入ってきた壁の向こうに、ロンが立っているのが見えた。


 シュゼリアは都合のいい幻でもみているのかと思い、目をこすたが、何だこすってもロンにしか見えなかった。


 ロンは眉間に皺を寄せたままシュゼリアの前まで来ると、シュゼリアを担ぎ上げた。

「ぬわわあ!!」

 シュゼリアはいきなりロンに担がれたので変な声が出た。

 しかし、この部屋にいる者は誰もそのことに気にすることはなかった。


「ハル、世話になった。」

「いいえ〜。気にしないで。」

 ハルは楽しそうにロンに笑いかけているが、含みのある言い方だった。


 しかし、ロンはそのことに気にするそぶりはなく、大股で歩き始めた。


 シュゼリアは何が起こっているのかわからずに、呆然としていると、いつのまにか知らない森の中にいて、ベンチらしき者が置いてあるあたりにゆっくりと下された。


 ロンはシュゼリアの存在を確かめるように下から上まで見つめると、そっとシュゼリアを抱きしめた。


「俺のことが好きなのか?」

 シュゼリアはロンに問われて、先ほどのハルとの会話を聞かれていたことに気がついて顔を真っ赤にして黙った。

 しかし、ロンは返事を待てないようだった。

「俺は、お前が好きだ。お前が俺を好きなら嬉しいし、これから先ずっと大切にする。俺が好きか?」

 シュゼリアはロンの胸に顔を埋めて、そっと頷いた。


 しかし、ロンは眉間な皺を寄せて、シュゼリアを体から離して、シュゼリアの真っ黒な瞳を見つめた。


「きちんと答えろ。俺が好きなのか?」

 シュゼリアはロンに見つめられて恥ずかしくて、視線を逸らしたくなった。

 しかし、ロンはシュゼリアが目をそらすのを許さないと言う顔をしていたので、目をそらすことなくほほをあかくしながら答えた。


「ロン殿のことが…好きなのだ。」

 ロンはシュゼリアの唇にそっと自身の唇を合わせた。

 それは、今までの触れるようなキスとは違い、濃厚なキスだった。

「ふ…んんんっ、、ふはぁ。」

 シュゼリアは呼吸の仕方を忘れてた息が苦しくなった。

 酸欠で死ぬと感じたときに、ロンは唇を離した。

 シュゼリアは肩を揺らしてゼェゼェと息をしながら、ロンを涙目で見つめた。

 ロンは欲情した瞳でシュゼリアを見つめて、もう一度抱きしめた。


「ああ、番に好かれるのはこんなにも嬉しいことだったのか。俺は今すごい幸せだ。」

 シュゼリアはロンの素直な気持ちの言葉に全身を赤く染め上げた。

 シュゼリアもロンにそう言ってもらえて、嬉しかった。


「私も嬉しいのだ。」

 シュゼリアもロンの体に腕を回して抱きしめた。


「あんまり煽るな!」

「煽る?」

「ベットがなくたって、ここでだってできるんだぞ?」

 シュゼリアはベットという言葉に侍女の眠れない夜と言う本を思い出して、青ざめた顔でロンから離れようとした。

 しかし、ロンはきつくシュゼリアに抱きついていて、離れられなかった。


「大丈夫だ。今はしない。まぁ、いつかな。とりあえず魔王城に戻るぞ。」

「魔王城に?龍の国ではないのか?」

「ああ、お前をいじめる国なんかもう知らん!」

「あの後何があったのだ?」

「…言いたくない。」

「聞きたいのだ。」

 ロンはため息をつくと嫌そうに離し出した。

「あの後、あの場にいた龍族達に聞いた。ネックレスを無理やり壊した、リリーが悪いと思うか。リリーに怒って攻撃したシュゼリアが悪いと思うかを。俺は、どちらも悪いと思った。

 シュゼリアがリリーを傷つけたことは確かにいけないことだ。だけど、リリーは無理やりネックレスを壊した。

 シュゼリアが怒るのは仕方ないと思った。やりすぎただけで。」

「私がいけないのだ。」

 シュゼリアの答えにロンは肩をすくめた。


「ああ、お前は少なくともあの場にいた龍族よりはまともな思想を持ってる。あいつらは、全員揃いも揃って、リリーは全く悪くないと言い出した。ネックレスを壊したくらいで、攻撃をする魔族が野蛮なのだと言った。

 だから、俺は、お前らが大切にしているものを破壊してやるから、持ってこい!と怒鳴った。

 そしたら、魔族を庇うのか、番だからかってそればっかりだった。

 番だから、魔族だからじゃない。大切なものを故意に壊すことがなぜ悪いことじゃない?魔族の物なら壊していいのか?違うだろ?だから、ムカついて、お前らには失望したと言って、城から出てきた。」

 ロンの回答にシュゼリアは目を見開いて驚いた。


「な!!ロン殿もまさか、家出をしたのか?」

「まあ、家出みたいなもんだな。暫く魔王城に滞在する!」

「グレンデール宰相に怒られるぞ。というか、私は出て行けと言われたので、帰れないのだ。」

「怒らしておけ。行くぞ。」

 ロンはそう言うと、シュゼリアに魔王城まで転移魔法をするように呼びかけた。

 シュゼリアは最初抵抗したが、転移魔法を使わないなら、空を飛んで行くと言われたので、渋々転移魔法を使って、魔王城の玉座の間まで帰ってきた。

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