第26話 帰還
シュゼリアは気がつくと魔王城の玉座の間にいた。
玉座の間は最後にシュゼリアが見たときと違って、赤い絨毯が綺麗に引かれていて、あまり使われることのない玉座の椅子にはグレンデールが足を組んで、肘掛に膝を置いて、腰をかけていた。
「おや?魔王様生きてらしたのですか?」
「宰相殿に魔王の力が移っていないのだ。分かっていたであろう?」
グレンデールは片眉をわずかに動かした。
「珍しいですね。魔王様が倫理的にお話しされるなんて。龍の国は厳しいところだったのですか?」
「たくさん勉強はさせられた。」
「そうですか。いいことではありませんか。それで、本日はどうしてこちらに?」
「自分の国に帰ってきて何か問題でもあるのか?」
シュゼリアははき捨てるように言ったが、グレンデールは愉快そうに笑うだけだった。
「ええ。あなたがいない方が仕事がよく進むのです。それに龍王の番に選ばれたのでしょう?龍は嫉妬深い生き物ですよ。許可なく魔族の国に帰ってきたのであれば、すぐに追ってきますよ。我が国があなたを匿ってるとバレたら戦争になるかも知れません。」
「追ってなど来ない。帰ると伝えてきた。」
「そうですか。ですが、万が一がありますので、魔王城から出て行っていただけると助かります。」
「…分かった。今まで迷惑をかけたな、叔父上。」
シュゼリアはそう声をかけると転移魔法を使って移動した。
グレンデールは愉快そうに笑うとどこからか出したお酒の入ったグラスを手に持ち、飲み始めた。
暫く楽しそうに飲んでいると、魔王城がグラリと揺れた。
しかしグレンデールは気にしたそぶりもなくただお酒を優雅に飲んでいた。
玉座の間の扉が大きな音を立てて開いたが、グレンデールはそちらに目を向けることもなかった。
「おい!シュゼリアはどこにいる?」
「おや?ロン様お早いですね。空を飛んでこられたのですか?何か破壊していませんか?破壊していれば、請求書を送りますよ?」
「グレンデール!!シュゼリアはどこだ?」
「さぁ?魔王様はすぐにこちらを出られましたので知りません。」
「どこに行った?」
「行き先を言っていなかったので知りません。」
「お前、俺が来ることがわかっていてシュゼリアをこの城から追い出しただろう!」
「さあ?何のことでしょう?」
「そもそもお前は初めからシュゼリアを俺に討伐させる気なんかなかっただろう?お灸をすえれば良いくらいにしか思ってなかっただろう?」
「さあ?何のことでしょう?」
グレンデールの小首を傾げら動作は、ロンをイラつかせた。
「…俺がシュゼリアが番だと言って連れて行ったことを怒っているのだろう?」
「まさか!いなくなってせいせいしましたよ。…まぁ、ですがいつまでも魔王が龍の国にいるのはまずいとは思っていましたが。」
「あぁ。分かってる。王は国の中心だ。国にいないのはまずいだろうな。…だから、俺がシュゼリアとこの国に残る。シュゼリアを傷つける俺の国など知らん!!」
「はぁ???ロン様がこの国に滞在する??断固拒否です。キモいです。帰ってください。」
「断る!!!シュゼリアを見つけ次第、この城に滞在するからな!!覚悟しておけよ!!」
ロンは言い逃げするようにさっさと玉座の間から立ち去ると外に出て翼を広げて飛び立った。
シュゼリアを探しに言ったのだろう。
グレンデールはため息を吐くと玉座の間に飾ってあるから写真の1つを睨みつけた。
「クソ兄貴!!全部お前のせいだ!!!」
写真からは当然返答はなく、グレンデールはお酒を飲む気分にならなくなったのか、手で持っていたお酒の入ったグラスを消すと、玉座の間から姿を消した。




