第22話 告白
青い龍のところにはいかずに、カフェのあった街の中をロンはシュゼリアの手を引きながら歩いた。
シュゼリアは、興味のそそられる店ばかりで、キョロキョロ辺りを見ながら歩いたが、ロンが調整してくれていたのか、誰かにぶつかることはなかった。
ロンは1つの店の前で止まると、中にシュゼリアの手を引いて入った。
中には沢山の可愛らしい雑貨や、アクセサリーが置かれていて、シュゼリアは目を輝かせた。
ロンからすぐに手を離すと店内をキョロキョロと周り、手にいくつか持ってロンの前に現れた。
「これと、これと、これが欲しいのだ。」
シュゼリアが持っていたのは、兎柄のノートと、兎の形をした電卓、花柄模様のペンケースとペンだった。
ロンは勉強道具ばかりを持っているシュゼリアに少し笑った。
「ああ、買ってやるから、あのカゴに入れろ。」
ロンがそう言って、店内にある銀色のカゴを指したのでシュゼリアは、すぐにカゴを手にとって持っていたものを入れた。
「他にはいいのか?」
「うむ!」
シュゼリアがそう言うとロンはシュゼリアの持っていたカゴを手にもって、レジまで歩いて行った。
シュゼリアもレジまでついて行ったが、レジの横にあるガラスケースに入った商品に目を奪われた。
「可愛いのだ〜。」
そこには少し高額なアクセサリーが入っていた。
「欲しいのか?」
シュゼリアは、悩んだが首を振った。
先ほど物を買うにはお金が必要だとロンに聞いて、アクセサリーの下に書いてある値段らしき数字を見た。
先ほどの食事の値段より0が1つ多くて、おそらく高いのだろうと思ったからだ。
しかし、ロンはシュゼリアの顔を見て指でシュゼリアのこめかみを軽く突いた。
「今更遠慮するな。ワガママを言うところがシュゼリアの可愛いところだろ?」
シュゼリアは可愛いと言われて、ロンに突かれたこめかみが熱くかんじた。
「うぬ。あの兎のついたネックレスが欲しいのだ。」
シュゼリアは金のチェーンに金色の兎の形をしたペンダントトップが付いているネックレスを指差した。
兎の形のペンダントトップには、兎の眼の部分に金色に輝く小さな宝石がはめられていた。
ロンはそれをみて頷くと、カゴ店員に預けて、指でネックレスを指差した。
店員はロンを見て頷くとポケットから鍵を取り出して、ガラスケースの鍵穴に挿して、ネックレスを取り出した。
ネックレスの後ろに飾ってあった、薄桃色のケースにネックレスを丁寧に入れると、カゴの中の商品とは別の小さな白い袋に入れて、ロンに渡した。
ロンは全て受け取って、お会計をすませると店を出た。
その後は特に行き場所が決まっていなかったらしく、ロンとシュゼリアは目的もなくブラブラして気になった店に入ってみたり、屋台で食べ物を食べたりした。
太陽が沈んでくると、ロンはシュゼリアの手を引いて、青い龍を待たせていた場所まで来た。
2人で龍の籠の中に乗ると、龍は羽を広げて飛び立った。
てっきり、日も沈んだので来たときの森に行って城に戻るのだと思い込んでいたら、青い龍は大きな山の頂上付近に降り立った。
シュゼリアが首を傾げているとロンはシュゼリアを抱きかかえて青い龍から降りた。
シュゼリアを抱きかかえたまま、少し歩いて山を登ると、小さなテラスがあった。
机が1つと椅子と3人くらい詰めれば吸われるであろう長椅子がテラスには置かれていた。
ロンはシュゼリアを椅子に座らせると、自身も椅子に座った。
シュゼリアは何事かと思いロンを見たが、ロンは何も言わずに指で前方を指した。
「うわ〜。」
シュゼリアの目の前には、綺麗な星空が広がっていた。
魔族の国や、人間の国とは違い、龍族の国は空に浮いているので、星との距離が近くて、シュゼリアが今まで見てきた夜空の中でいちばんの輝きだった。
シュゼリアは興奮した顔でロンを見た。
「すごいのだ!こんなのに綺麗な星は見たことないのだ!!」
ロンはシュゼリアを優しい目つきで見つめると、シュゼリアの首を触った。
シュゼリアは気がつくと先ほど買ってもらったネックレスを身につけていた。
「あ、ありがとなのだ。」
シュゼリアは急に恥ずかしくなって頬を赤らめた。
ロンはそんなシュゼリアの態度に気にすることなく、シュゼリアの髪の毛をすくって口づけをした。
上目遣いでシュゼリアを見て囁いた。
「今日は楽しかったか?」
「う、うぬ。今までで一番楽しかったのだ。」
「そうか。なら、俺の側に永遠にいてくれないか?」
ロンに囁かれて、シュゼリアは真っ赤な顔をさらに赤くした。
「そ、その、ロン殿は私でいいのか?」
シュゼリアは今更自分でいいのか不安に思ってきた。
「いいのではなく、俺にはシュゼリアしかいない。」
「うぬ。そうであったな。…その私は龍族ではないから、番はわからない。」
「ああ。」
「ロン殿のことは好きだが、これが恋なのかはよくわからない。」
「ああ、知ってる。」
「でも、今は、ロン殿から離れたくないと思う。こんな今だけの気持ちでいいのか、わからなー。」
シュゼリアは最後まで話すことができなかった。
ロンがシュゼリアの唇に自身の唇を重ねたからだ。
「んっ。」
シュゼリアは目をつぶってロンの行為を受け入れた。
ロンは長いこと唇を押し当てていたが、ゆっくりと名残惜しい顔をしながらシュゼリアの唇から離した。
「今、シュゼリアが俺と一緒にいたいと思ってくれているだけで十分だ。」
ロンはシュゼリアを優しく抱きしめて、その首筋に自身の顔を埋めた。
シュゼリアもロンの背中に自身の腕をそっとまわした。
2人はしばらく星空の下でお互いの存在を確かめるように抱き合っていた。
夜空はまるで2人を祝福するかのようにキラキラと輝いていた。
シュゼリアは、ロンの腕の中にいるながら気持ちが良くて眠りそうになった。
しかし、テラスに強い風が吹き付けたので、シュゼリアはくしゃみをしてしまった。
「ぷぷくちょん!!」
すると、先ほどまでシュゼリア首筋で目を閉じていたロンの髪の毛がさわさわと揺れた。
唇ももぞもぞしていて、ロンが笑っているのがわかり、シュゼリアはロンから顔を離して頬を膨らませた。
シュゼリアが拗ねた顔するのがロンには見えて、笑いに堪えながら、シュゼリアのご機嫌をとるように話しかけた。
「悪かった。お前があんまり面白いクシャミをするから、たえられなくて。ぷぷー!!」
「全然謝ってないのだ!」
「悪ーぷぷー!」
ロンは結局笑いを堪えることができずに笑い出した。
シュゼリアもロンの笑顔につられるように笑ってしまい、2人はテラスの中で楽しそうに笑っていた。
ひとしきり笑い合うと、ろんがシュゼリアの肩に腕を回した。
「そろそろ冷えてきたから、城に帰るか。」
「うぬ。」
シュゼリアが返事をすると2人は青い龍のところまで行って、最初に来た森まで送ってもらい、青い龍に別れを告げた。
ロンに引かれて暗くなった森の中を歩くと、森の中で何かの声が聞こえた。
その声は魔王城の周りに聞こえる魔物の不気味な鳴き声ではなく、綺麗な澄んだ声だった。
シュゼリアが辺りを見渡しながら歩いていると、ロンがシュゼリアの行動に気がつき声をかけた。
「声が聞こえるのか?」
「う、うぬ。」
「それは恐らく妖精の声だ。」
「妖精?妖精は実在するのか?」
「ああ、もう大分滅んでしまったが、この森にはまだ数匹生きている。本来龍族にしか見えないし、聞こえないはずなのだが、シュゼリアに聞こえるのはなぜだろうな。俺の番だからなのかもな。」
「ぬぬ、そうだったのか。妖精さん見てみたいのだ。」
「そうだな。声が聞こえるのなら、そのうち見えるかもな。」
ロンはシュゼリアの手を引きながら、小屋の前に着くと行きと同じように中に入って、呪文を唱えると城についた。
城に着くと、シュゼリアを部屋まで送り届けた。
「ロン殿、今日は本当に楽しかったのだ。ありがとうなのだ。」
シュゼリアは後ろを向いて去っていこうとしたロンに声をかけた。
ロンは顔だけシュゼリアの方を向けた。
「ああ、俺も楽しかった。次時間が取れたら、遊園地にでも連れて行ってやる!」
「本当か??約束だぞ!!」
「ああ。」
ロンは返事をすると去って行った。
シュゼリアはウキウキ気分で布団に横になって今日買ってもらったネックレスのペンダントトップを眺めた。
兎の形のペンダントトップは可愛くて、中にはめてある石がロンの瞳と同じ色で、それをみるとロンを思い出して、幸せな気持ちになった。
シュゼリアはしばらくネックレスを眺めていたが、疲れていたのかそのまま眠ってしまった。




