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このパーティーの中に魔王がいます  作者: らうんどろびん
第二章 魔王城の中に勇者がいます
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第七話 魔王城の中に勇者がいます スライム人間

「魔王城の中に勇者がいます」


 俺のもっとも信頼する側近のサキュバスが言った。


 俺はこの城の玉座に座っている。そう、俺は魔王。魔族の長として、敬わられているが、人間からは最凶として恐れられている存在。


「ふむ。この城の中に勇者が忍び込んでいると? 確かな情報か?」


「はい。私の従者どもに探らせていました結果、間違いないかと」


 この魔王城に人間がそう簡単に忍び込めるものだろうか? ここには人間からみれば、異形のものばかりだ、そんな中に紛れ込むのは普通は不可能だろうし、ずっと隠れているのも無理があるだろう。そう俺が考えているのを察してか、サキュバスが続けて話し出す。


「従者の知らせによると、勇者は変幻の小槌というアイテムを手に入れたのですが、その小槌の力というのは、使用者の姿を望むがままに変化させることができるらしいのです。ですから、勇者はその小槌の力を使って、この城の中に紛れ込んでいるのかと」


「俺の配下の魔物どもに化けているということか? ふっ、愚かな。この魔王を欺けるとでも思っているのだろうかな?」


「おっしゃる通りですね。人間は愚かです。勇者といえども、所詮は人間。考えが浅はかなのです。そこで、あちらに、近頃の行動が怪しい魔物どもを控えさせております。さあ、魔王様。これから尋問の宴を始めましょう」


 宴か、悪くない。この俺が倹約令を布いてから、宴は魔王城でもしばらくやってない。そろそろ息抜きも必要かもしれないな。俺がぼんやりとそんなことを考えていると、正面の扉が開いて最初の容疑者がのろのろと入ってきた。


 現れたのは透明な体をぷよぷよと揺らしたスライムだった。


「魔王様、このスライムは、スライムで在りながら言葉がしゃべれます。そして、我が魔王軍でも優秀なモンスターです」


「ああ、聞いているぞ、スライムよ。お前の武勇には俺も満足している」


「魔王しゃま、拝謁賜り恐悦至極にじょんじましゅ」


「さて、スライムよ。お前がここに呼ばれたわけに心当たりはないか?」


 俺はスライムに問いかけたが、スライムはブルブルと身を震わせたままだ。スライムは緊張しているのだろうか? 震えているばかりで、何も言ってくれないと、俺も困ってしまう。だいたい、なんとなく流れで、前に出てきたスライムを問いてみたが、実際、俺はこのスライムがここに連れてこられた理由を知らない。


 助けを求めるように、ちらとサキュバスを見る。すると、すぐさま彼女は俺の意を察したようだ。


「スライム! そのお前の小汚いブルブルとした身震いが、魔王様を不快にさせています。ちょっとは慎みなさい!」


 いやいや、違うぞサキュバス。俺はそんなこと思ってないからな。サキュバスの叱責を受け、スライムの震えはさらに過激になり、その形がまるでイガ栗のようになっている。


「なあ、サキュバスよ。スライムにかけられた疑いは、何なんだ?」


「あ、はい、魔王様。このスライムは、人間の姿に化けているという噂があるのです。そもそも、スライムは軟体な魔物ですから、いかような体にも形を変えられるのですが、好んで人間の姿に化けているというのは、疑いを向けずにはいられません」


「しかしな、サキュバスよ。いくら愚行な勇者といえども、スライムに化けることはなかろう?」


「そう思われるとは思いますが、魔王様、油断してはいけません。勇者は魔王様にとっては天敵です」


 確かに、勇者は俺にとっては天敵と言えるだろう。過去の伝承によると、魔王が倒されたとされる数少ない記録の中に必ず勇者と称される人間がいた。


「こらっ、スライム! お前はどうして人間の姿などを真似ているのですか? その理由をここで話してみなさい!」


「しゅ、しゅいましぇん。ちょっとした出来心でしゅて・・・」


「なんですか? はっきり言いなさい!?」


「あわわ、えと、魔王しゃまのお近くにいつもいる、サキュバスしゃまのようになりたくて、それで、その姿を真似ていたのでしゅ。けっしゅて、人間の真似なのではごじゃいましぇん」


 このスライムの弁を聞いて、さすがのサキュバスも黙ってしまった。


「よし、スライムよ。お前の疑いは晴れた。下がってよいぞ」


 スライムがすごすごと下がっていく、扉の前で「失礼しゅましゅた」と言い、頭を下げてから出て行った。


「ま、魔王様! まだ、尋問は終わっていませんでしたのに!」


「まあ、いいだろう? あのスライムからは、俺は悪意を感じなかったし、それに、あれはお前に憧れてたってことじゃないのか?」


「ち、違いますよ。あれは私にではなく、魔王様への憧憬です」


「はあ、そうかね。なあ、後がまだまだつかえてるんだろ? 次を呼んでくれよ」


「む、わかりました。次の者、ここへ出てきなさい!」

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