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このパーティーの中に魔王がいます  作者: らうんどろびん
第九章 恋する乙女の瞳の中に魔王がいます
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第四十四話 恋する乙女の瞳の中に魔王がいます 占い師は懲りない

「す、すまん」


 俺が慌ててぶつかった男に謝ると、男がぎょっとした顔で俺を見ていた。あ、この男・・・。


「げっ! さっきのにいちゃん」


「あ、お前は占い師に絡んでいた・・・」


 俺がぶつかった相手は、カジノに来る前に占い師にあらぬ因縁をつけていた男だった。


「あ、おっちゃん、うららんと同じナントカ学会の人やんね。こんちわー」


 俺が思わぬ男との再会に戸惑っていると、踊り子が男にそう声をかけ、手を振っている。


「えっ? 占い師、・・・この男、お前の知人だったのか?」


「あ、えー・・・、はい、ま、まあそんなところですわ」


 俺は驚いて占い師に聞くと、彼女は言葉を濁し気味に答えた。


 あれは知人同士の揉め事だったのか? なんだか占い師がものすごく動揺している気がするが・・・。


 俺がそんな占い師の様子を不審に感じていると、少しカジノ内が騒がしくなった気がした。


「見つけたぞ! そこの女とそっちの男! 話を聞きたいので、詰所まで同行願おうか!」


 ――? 衛兵が声を荒らげている。・・・あれ? なんか、こっちを指さしているみたいだが。


「にゃははっ。うららん、ダーリンが呼んでるやんね」


「は!? ・・・ね、姉さん、誤解を招くような言い方はやめてもらいたいですわね」


 やはり衛兵の呼びかけは、俺たちに向けられていたらしい。踊り子の言い様だと、衛兵の言う女とは占い師のことで、男はあの占い師の知人ということだろう。


「まったくお前も懲りんな。これで何度目だ?」


「どうしてですの? 私はたくさんの人に幸せになってほしいだけですわ!」


 衛兵は、後ろに控えていた数人の衛兵達とともに、占い師とその知人の男を囲むと、彼女らを拘束し、この場から連れていこうとしている。


 事情は全く判らんが、少々強引なようにも見えるな。


「ちょっと待ってくれ! 衛兵よ、何故こいつらを連行するんだ? 訳を聞かせてくれないだろうか?」


 俺が問いかけると、衛兵は俺を一瞥した後、同情するような表情を向けてきた。


「なんだ? あー、あんた、いかにも人の良さそうな顔立ちだな。ははん、大方、あんたもこの女に騙された口だろう?」


「騙された? ど、どういうことだ?」


「こいつらは詐欺の常習犯なんだ。あ、いや、正しくは詐欺まがいの行為なんだがな。この国の法には触れないぎりぎりのところなんで、結局、毎回釈放になるんだ」


「詐欺なんて、ひどい言いがかりですわ!」


「いいから来るんだ! その男と結託して、たいして価値のない壺を売りつけられたとの被害届が出てるんだ。話は詰所で聞く」


「お、おい、妹が連れていかれるぞ?」


「ああ、いつものことやんね」


 俺はどうしたものかと思い、踊り子に声をかけた。ところが、踊り子は慌てる様子もない。それどころか、スロット台の椅子に座りなおして、またスロットを打ちだす始末。その間に占い師の方は、衛兵に連れていかれてしまった。


 占い師は衛兵に連れられながらも、どうかお助けをと、俺に懇願するような眼差しを向けてきたが、俺は目を逸らすことにした。正直、衛兵に少し感謝したい気持ちだ。


 それにしても・・・。


「お前、ちょっと薄情じゃないか? 妹だろ、事情は知らんが、あそこは妹を庇うべきじゃなかったのか?」


 俺は踊り子を非難したが、彼女は相変わらず平然とスロットを打ち続けている。


「うーん・・・、あれは自業自得ってやつやんね。何度捕まっても懲りないんやから、しょうがないやんね」


 踊り子はスロットを打ちながら、ため息交じりにこう答えた。


「自業自得? 衛兵は詐欺まがいの行為の常習犯だとか言っていたが、そのことか?」


「まあ、そういうことやんね。なあ、お兄さん。お兄さんはどうやって、うららんと知り合ったんね?」


「どうやってって・・・、占い師があの男と揉めてるところに偶然通りかかって、見かねて仲裁に入ったのがきっかけだが」


「にゃはっ、ふーん、なるほどやんね」


 踊り子は俺を一度ちらっと見ると、ニヤリと笑いながら話を続ける。


「それ、たぶん偶然じゃないやんね」

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