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このパーティーの中に魔王がいます  作者: らうんどろびん
第七章 俺、魔王なんだけど、気が付いたら勇者と体が入れ替わっていた件2
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第三十一話  俺、魔王なんだけど、気が付いたら勇者と体が入れ替わっていた件2 しゃべくり女

「もーお、アイツ、どこいったのかしらあねーえ?」


 その女は、俺が座っている円卓の前まで来て立ち止まると、そう言って人差し指を口元に当て、首を傾げた。


 ・・・あっ、この女は、前回俺に思いっきり強烈な平手打ちを叩きつけてきた凶暴なやつだ。見た目に寄らずのあの腕力だ。おそらく、人間の格闘術を極めた武術家なのだろう。しかし、相変わらず、見た目は妖艶で、まるで男を誘っているような・・・。


 む!? 平手打ち・・・、男を誘って・・・、もしかして、この女が武闘家の言っていた魔術師なのか? あ、あー、そうなのか、あの細腕であの怪力はそういうことか。たぶん、身体強化魔法の類だろう。よくよく思い出せば、平手打ちを受ける刹那に魔力の風を感じていた。あの時は、精神的な衝撃が強すぎて見逃していた感覚だ。


 だが、今は現実ではなく、まるで夢の中で、はたから自分を傍観しているように不安を感じないな。経験というものは、それを受けた者を成長させるのだ。しかし、あの魔術師らしき女が狂暴だとの俺の認識に変わりはない。用心に越したことはないな。


「武闘家なら、つい今しがた外へ走り出て行ったぞ。たぶん、お前を探してのことだと思うが」


「はあ!? アイツ何やってんのよ。今日は部屋で魔術の実験に付き合ってって、約束してたっつーのに、もう忘れてんのかしら? 全く、信じらんないわあ、あの鳥頭!」


 魔術師は不機嫌そうな顔をして武闘家の文句を言い、ため息をこぼす。


「はあ・・・、ちょっと聞いてくれるー? 勇者っちーい?」


「な、なんだ?」


「武闘家っちってばさーあ、いっつもあーなのよお。約束を忘れるのは日常茶飯事だしーい、無意味に声は馬鹿でかいしーい、あ、ま、元気だけが取り柄ってはあるわねーえ。でもーお、元気だからってアタシの体をいやらしい目つきでじろじろ見るなっつーの! アイツ何回ぶっ飛ばしても直んないのよねえー。あ、馬鹿は死ななきゃ直んないんだっけ? ぶふっ、きゃはははははっ。・・・あーおかしいわ。ねえ勇者っち」


「は、はあ・・・」


「ふっふっふ、実はアタシってば、武闘家っちにわざと隙を見せてる時があるのよーお。なんでかってーとお、ちょっとイライラしてる時にアイツを引っ叩くと、少し気分が晴れるのよねーえ。だからーあ、なーんかムシャクシャしてる日なんかは、アイツの前で太ももとか胸元とかをちらつかせるのよーお。そしたらーあ、アイツ馬鹿だから見事に罠にかかってやーんの。まあーったくーう、男ってばかあ? ってかーんじ。きゃははははっ」


「お、お前なあ・・・」


 武闘家が少し可哀そうに思えてきたな。魔術師の八つ当たりの標的に利用されているらしい。俺が武闘家に同情していると、そんな俺の気配などお構いなしとばかりに魔術師のしゃべりは続く。


「男って言えばさーあ、戦士っちは武闘家っちとは違って頭良さそうなんだけど、なーんか堅物感があってつまんないのよねーえ。勇者っちもそう思わなーい? 戦士っちもーお、もうちょっと面白おかしく生きられないもんかしらねーえ? ま、戦いでは楯役として頼りになるんだけどねー。ってゆーかあ、戦士っちと僧侶っちって、仲いいわよねえ。ひょっとして、あの二人ってデキてんのかしらーあ? あーんな真面目っ娘のどこがいいのかしらねーえ? あ、真面目同士で気が合うってやつーう?」


 ・・・長いな。魔術師のしゃべりはいつまで続くんだろう? 女同士では男同士に比べると、会話での交流を重視するらしいというが、男の俺からすれば、こんなどうでも良さそうな話をよくも延々と続けられるものだと、ある意味感心するな。


 ―――――― 10分経過。


「きゃははははっ、あの時の僧侶っちの顔っていったら、マジうけるんですけどー」


 ―――――― 20分経過。


「アタシが最近はまってる痩身術なんだけどーお・・・」


 ―――――― 30分経過。


「ここだけの話なんだけどーお、賢者っちってば、禁術の研究を・・・」


 ―――――― 40分経過。


「そういえば、勇者っちってば・・・、あ、もうこんな時間ねーえ。そろそろ武闘家っちを探しに行こうかしら。そんじゃねーえ、勇者っち」


 魔術師は長い時間一人で勝手にしゃべり倒して去って行った。俺は最初のうちは話の合間に相槌を入れながら聞いていたが、途中からはそれも面倒になって辞め、終わりの方は茫然として話の内容も耳に入ってはいなかった。しかし、魔術師は俺の反応の変化にも気づかない様子でしゃべりまくっていた。あれじゃ、俺じゃなくて人形相手でもよかったんじゃないか?


 俺が疲れたような顔を浮かべていただろうと思うのに反して、魔術師はスッキリしたとでもいうような表情をして、外へ出て行った。むー、なんだか釈然としない心持だ。


「まあ、平手打ちを貰うよりはマシだったかな。よし、誰もいなくなったことだし、魔法陣のある部屋へ行くか」

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