第二十三話 転生したら異世界最強になれるって本当ですか? 水陸両用の最強モンスター
「次はヘルライガーとマーメイドの組み合わせです。ヘルライガーは草原の王者と呼ばれ、陸上で彼に並び立つ者はなかなかいないでしょう。一方、マーメイドの水上及び水中での機動力は、シーサーペントのそれに匹敵します。この組み合わせなら、水陸どちらにおいても活躍できる魔物が転生することでしょう」
「おおっ、それは頼もしいな。今度は期待できそうだ」
「そうですよね。そうですよね。ではでは、スイッチオーン!」
サキュバスが装置の赤いレバーを押し上げる。すると、前と同じように転生装置は作動し、しばらくして中央の容器の扉がぱかっと開いた。その扉の中から、もくもくとした煙とともに魔獣が姿を現す。
「マ ―――――― ッ」
「あ、あれは!? 南国に住むという幻の魔獣、マーライガーではないですか!」
サキュバスがそう言って、驚きの声を上げている。そんなにすごい魔獣なのか? マーライガーは下半身が魚、上半身がライガーで、口からドバドバと水を吐き続けている。
「なんだ、この魔獣、マーライガーと言うのか? それで、こいつは何が出来るんだ?」
「はい、魔王様。マーライガーは口から水を永遠に吐き続けることができます」
「ほう、他には何が出来る?」
「いえ、それだけです。他に特に出来ることはありません」
「は? 役に立たないではないか?」
「それがですね、魔王様。マーライガーは広い屋敷を持つ魔貴族の間では大人気なのです。マーライガーを庭に放っておくと、庭木に勝手に水やりをしてくれるのだそうで、重宝がられています」
「いや、サキュバス、この魔獣が魔貴族たちに人気なのはわかったが、この実験は強い魔物を転生させるのが目的ではなかったか? どう見ても、これは転生前より弱くなっているだろう?」
「そうですね。確かにマーライガーは戦闘では役に立ちそうにありません」
「マ ―――――― ッ」
俺とサキュバスが会話している間も、マーライガーは口からドバドバと水を吐き続けていた。おいおい、このままだとここが水浸しになってしまうぞ。
「なあ、サキュバス、こいつを転生前に戻してやれ。弱くなってしまってはこいつも不本意だろう?」
俺がサキュバスにそう命じる。すると、マーライガーは俺を見て口から水を吐き散らかしながら、ブンブンと顔を横に振った。何だ? 不満だとでもいうのか?
「どうしたマーライガー、・・・まさか、その体が気に入ったとでも言うのか?」
俺がそう聞くと、マーライガーは今度は縦に顔をブンブンと振った。もちろん、その動作も水を吐き散らかしながらだったので、もう少し近ければ危うくずぶ濡れになるとこだった。
「うわっ、お前、その体で首を振る時は、周りに気をつけろよ! わかった。その体が気に入ったなら、そのままでいればいい。だが、ここからはすぐに出て行ってくれよ。玉座の間に池が出来てしまいそうだ」
「マ ―――――― ッ」
マーライガーは、相変わらずドバドバと水を吐きながら、玉座の間を出て行った。
「なあ、サキュバス、あんな体の何が気に入ったんだろうな?」
「さあ、私にもわかりかねますねえ。さてと、では次いってみましょう」




