第十八話 インフルエンザになっちゃった 戦士の見舞い
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俺は戦士だ。今、俺は買い出しを終えて、仲間といっしょに泊まっている宿屋に戻ってきたとこだ。俺の仲間の一人の武闘家が熱病になってしまった。
市場の雑貨屋の親父に、仲間が熱病になったので見舞いになるような品はないかと聞いてみると、甘酒が効くと言われたので、甘酒を買った。また、野菜売りのおばちゃんに同じように聞くと、長ネギが効くと言われたので、長ネギも買った。・・・長ネギ、どう使うのだろう? 粥に混ぜると良いのだろうか? おばちゃんは「痔じゃなけりゃ平気だよ」って言ってたが、痔? ・・・よくわからんな。
長ネギについて考えていると、俺たちが借りている宿の部屋の前にたどり着いていた。
「武闘家、調子はどうだ? 入るぞー」
俺は扉を軽く叩いてから中に声をかけて部屋に入った。
「なんだ? ここは動物園か?」
部屋の中には武闘家の姿は無く、代わりにニワトリと豚と猫がいた。
「コケッ、コケッ、コケーッ」
「ブヒッ、ブヒブヒッ、ブヒーッ」
「ニャーッ、ニャーッ、ニャーッ」
三匹の動物たちが俺を取り囲んで一斉に鳴きだした。
「うわ、なんだよ、うるさいな。・・・武闘家は部屋にいないか。それにしても、こんなに動物を連れこんで、あいつは何やってんだ?」
ベッドが空だということは、もう熱病は治ったのだろう。あの武闘家だからな、すぐに治るとは思っていたが。俺がそんなことを考えていると、ニワトリが俺の手提げ袋の中の長ネギをついばみだした。
「あ、おいっ、それはお前の餌じゃないぞ。・・・あ、まあいいか。もう必要ないだろうしな」
「コケッ、コケーッ」
気づけば、豚と猫も俺の手提げ袋の中をあさって見つけた甘酒を飲みだした。
「おい、お前らもか。というか、器用だな、お前ら」
豚と猫は酒瓶に入った甘酒を器に注いで飲んでいた。よく見ると、豚も猫も顔が赤いが、もう酔ったのだろうか?
武闘家を看病していた賢者も宿の中で見かけなかったが、まあ、そのうち誰か戻ってくるだろう。今日はもう出かけずに、ここで皆の帰りを待つとしようか。
「なあ、お前ら、俺も混ぜてくれよ」
俺は豚から酒瓶を受け取ると、テーブルの上に余っていた器に甘酒を注ぎ、それをあおった。
「あー、たまにはこんな甘い酒もいいもんだな」
俺がそう言って、ふーっと長く息を吐いていると、猫が俺の空になった器に、酒瓶から甘酒を注ぎ足してくれた。
「お、気が利くねー。よくできた猫だ」
俺は猫の頭を撫でると、猫はニャーと鳴いた。
「うん、そうだ。今日は武闘家の快気祝いにあいつを酒場にでも誘ってやろう」
「コケッ、コケーッ!」
「ニワトリ、お前は喧しいな。おとなしく長ネギでも食ってろよゴブ。それにしても、誰か早く帰ってこないかな、ゴブ」
長ネギをどこぞに突き刺すという民間療法を耳にしたことがありますが、都市伝説みたいなものだろうと思います。
さて、四章はこれで終わりです。次章からは、また別の話になります。
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