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心と象徴


 このエッセイで挙がる作品は基本的に好きなものばかりだ。

 だから、たとえ何らかの作品を批判するようなことがあっても、それは愛情からのことであり、ディスるつもりはない……、と予防線を張っておこう。


 成功例もあるし、失敗例もある。だから、必ずしも悪いとは言えない手法がある。

 なんのことかというと、「群像劇」のことだ。

 wikipediaによると群像劇とは「それぞれの物語を持った複数の登場人物によって進行していく創作作品の総称」らしい。


 前述の通り、群像劇という手法自体が悪いわけではない。

 ところが失敗している場合、どれも失敗の仕方が同じだ。


 大抵はこんな感じだ。

 登場人物が増えてきて(でた!嫌な要素1つめ!)、そして登場人物一人ひとりに物語をつくって丁寧に描写する。

 初期にあったコメディータッチは息を潜め、インフレーションの快感やスピード感もなくなっていく。

 えんえんと主人公がいないシーンが続き、主人公が空気化する。

 「なんか失速してる。初期の方がおもしろかったな……」


 具体例を出そう。

 「ひぐらしのなく頃に」(竜騎士07)

 「まおゆう」(橙乃ままれ)

 どちらも同じように主人公が空気化し、失速している。。

 

 「まおゆう」に関しては勇者/魔王システムの否定というのがテーマなので、主人公が空気化するのは仕方がないのかもしれない。主人公が空気化してカタルシスもなくなっていくのなら、テーマ自体に問題があったのだ。

 問題というのは悪い意味でのことではない。エンターテイメント向きではないテーマだったということだ。


 ちなみに「まおゆう」の原作である2ちゃんねるの書き込みには登場人物紹介があるのだが、すべてのキャラに主人公と書かれていた。そりゃ当初の主人公は空気化するわ。


 失敗している群像劇、それって結局のところ、「嫌な要素4つ目 Side XXX」なんだよね。

 自作は一人称視点だし、前述の通りSide XXXはやらない。

 だから、主人公が空気化することはないと思う。群像劇の失敗ケースにはならない。


 じゃあ、群像劇でどうすれば成功するんだよ?と思わなくもないが、自作には役に立たなそうなので、考察しない。

 群像劇みたいな仕掛けの物語をやるつもりはない。嫌いじゃないけどね。今回は採用しない。


 さて、プロット作成の続き。っとその前に、作品のカラーを決めておく。

 いや、決めるもなにもない。

 バッドエンドや鬱展開は意味がわからない。哀しい話でも希望に繋がる救いが欲しい。

 笑えて、燃えるバトルがあって、途中ちょっと泣けるシーンはあっても、最後は一発逆転のカタルシスがあるハッピーエンド。

 そんなのがいい。


 今度こそプロット作成の続き。


 テーマは

「(1-a)死にたがりの冒険者」 の状態だった主人公が、

「(1-b)冒険者ギルドの閉鎖騒動」を通して、 「(1-c)死にたがらない状態」になる物語。

 

 「シナリオの方程式」(江本あやえもん)に沿って作成していこう。


 上述のテーマにパラメータを加えて、話を展開していく。


 まず、このテーマを心と象徴(一対一で対応する関係)に分ける。


------------------

心の状態

「(1-a:M)初期状態」の状態だった主人公が

「(1-b)スペシャルワールド」を通して、

「(1-c:M)最終状態になる物語」


象徴

「(1-a:S)初期状態」の状態だった主人公が

「(1-b)スペシャルワールド」を通して、

「(1-c:S)最終状態になる物語」

-------------------



「(1-b)スペシャルワールド」はもう決まっているから、とりあえず埋める。


------------------

心の状態

「(1-a:M)初期状態」の状態だった主人公が

「(1-b)冒険者ギルドの閉鎖騒動」を通して、

「(1-c:M)最終状態」になる物語


象徴

「(1-a:S)初期状態」の状態だった主人公が

「(1-b)冒険者ギルドの閉鎖騒動」を通して、

「(1-c:S)最終状態」になる物語

-------------------


 さて、ここで「心の状態」と「象徴」について説明する。

 「シナリオの方程式」では「心の状態」は目に見えないもの、「象徴」は目に見えるものとしている。

 ただ、「象徴」に関しては目に見えるもの、というよりは心の状態「以外」のものとした方がわかりやすい。

 その上で、象徴が目に見えないものならば、目に見えるものとして代替を考えた方がよさそうだ。


 さて、当初のテーマの「(1-a)死にたがりの冒険者」、「(1-c)死にたがらない状態」は、心の状態だろう。そのため、これを心の状態の方に当てはめる。


------------------

心の状態

「(1-a:M)死にたがり」の状態だった主人公が

「(1-b)冒険者ギルドの閉鎖騒動」を通して、

「(1-c:M)死にたがらない状態」になる物語


象徴

「(1-a:S)初期状態」の状態だった主人公が

「(1-b)冒険者ギルドの閉鎖騒動」を通して、

「(1-c:S)最終状態」になる物語

-------------------


 象徴の方が埋まっていないので、考えていく。

 死にたがりの象徴ってなんだ?


 「死にたがり」ということは、逆に言えば、「死ねない」ということだ。

 死ねない理由としては、生理的、心理的なものが考えられる。


 生理的:不死の呪いにかかっていて、死ぬことができない

 心理的:果たさなければならない使命があって、果たすまで死ねない


 生理的な方を取るなら、結末でも不死の呪いは解けていない方が自然だろう。

 なぜなら、不死の呪いが解けているなら、死ぬことが怖くなっても不思議はない。

 だから「死にたがらない状態」になっても何の意外性もない。むしろ、不死の呪いは解けていないにも関わらず、自殺願望はなくなっているべきだ。


 心理的な方なら、結末は使命を完了しているだろう。

 これも生理的な方と同様に使命を完了しているにも関わらず、死にたいと思わなくなっている方がドラマティックだ。


 どちらの方を採用するかだが、心理的な方にした。

 その理由は

 「死にたがり」→「死にたがりじゃなくなっている」

 「不死」→「不死」

 だと一対一対応にならないからだ。


 「死にたがり」→「死にたがりじゃなくなっている」

 「使命未完」→「使命完了」

 だと綺麗な対称になっているしね。


 さて、方程式を埋めよう。


------------------

心の状態

「(1-a:M)死にたがり」の状態だった主人公が

「(1-b)冒険者ギルドの閉鎖騒動」を通して、

「(1-c:M)死にたがらない状態」になる物語


象徴

「(1-a:S)使命未完」の状態だった主人公が

「(1-b)冒険者ギルドの閉鎖騒動」を通して、

「(1-c:S)使命完了」になる物語

-------------------


 次回は対立関係の作成。


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