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なぜプロットを作るか

 ちょっと予定を変更して、プロットに関する話をしよう。

 秋月忍様から、プロットは書かないという感想を頂いた。


 格好良いことを言いたいが、恥を忍んで正直に告白しよう。

 自分はプロットが書けない。過去に書こうとしたこともあるけど、まったく書けなかったのだ。

 (だから、今回は再挑戦といった意味もある)


 今までどのように物語を作っていたのかというと、それこそシャーマンのように自動筆記に任せる。

 最初から完成敲を目指し、まずいところがあれば完成敲を直す。

 大体、プロットを書いて、完成敲を書くというのは二度手間なのだ。プロットと完成敲が同じものなら、最初から完成敲を目指せば良いではないか。


 では、なぜ今回プロット作成を行おうと考えたか? それはプロット作成のとある利点を猛烈に欲しているからだ。

 その利点とは修正コストの低さだ。


 「プロット 必要か」でググると、なぜプロットが必要か/不用かの議論が沢山検出される。だが、意外にコストに言及した意見はない。

 「漫画 ネーム 必要か」でググるとどうだろう。該当するものは検出されない。

 漫画の世界はネームを書くのが常識で、必要かどうかの議論はない。

 なぜか? それは漫画の完成敲を修正するコストが高すぎるからだ。

 ネームを使ってコマ割や構図を試行錯誤した上で、完成敲に望む方が二度手間でも結局は安くつく。


 映画撮影においても、撮影前にストーリーボードや絵コンテを書く監督は多いようだ。

 映画の場合、出演者の時間を抑えるだけで金がかかるから、どの現場で何を撮るか、あらかじめ決めないわけにいかないのだ。


 自分が今まで書いてきたのは、ショートショートや短編ばかりで修正のコストが低かった。

 だからプロットなんて必要なくて、プロットを作る技術も発達しなかった。


 今回書こうとしているのは長編だ。しかも、書きながらアップするなら連載形式になる。

 おそらく途中でこけたらエタることになる。自分はそれが怖い。だからプロットを作ろうと考えたのだ。


 秋月忍氏がプロットを作らないのは、おそらく

 ・つくらない、といいつつ無意識に脳内でプロット作成をしている

 ・秋月氏にとって、修正のコストが低い

 ・修正の必要がないほど、いきなり完成敲が書ける

 のどれかではないかと思う。


 ちなみに以下は昔2ちゃんねるに投下したゾンビ小説だ。

 完全なワンアイデアもので、もちろんプロットなんて作ってない。

 最近はこういうアイデア取って出しみたいなやり方がしんどくなってきた。

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「フォン・ノイマン・マシン」

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普通、精肉所と言えば、まあ肉を加工するところ

なんだろうなと思う。しかし、ハラペコ星において、

精肉所はすなわち最先端の技術研究所と同義だった。

そして、今日は政府の役人による精肉所の視察の日なのだった。


「ようこそ、我が精肉所へ。みなさんを歓迎しますよ」

精肉所の所長は揉み手をしながら役人を迎えた。

なにしろこの視察で今後の政府からの助成金の額が決まるのだ。

役人の機嫌を取っておかなければならなかった。


「みなさんご存知の通り、かつてのハラペコ星は人口爆発による

食糧難に瀕していました。我々は人肉食に倫理的抵抗がありませんから、

当時は死体や死刑囚を食べることもあったようです。

しかし、ひとつ大きな問題がありました。それは我々ハラペコ星人が

とても不味いということです。そこで我ら精肉所が誇るゾンビが

状況を打開したわけですが、歴史的な話はともかく

実物をお見せいたしましょう。


所長は一同を奥へ案内した。そこにあるのはバケツに入った

ゲル状の物体だった。


「これがゾンビかね。私が思っていたのと随分違うな」

「これはまだ変態前の状態ですので。さて、我々はこの状態の

ゾンビをロケットに乗せて、標的の星に向けて打ち上げます。

標的の星についたゾンビは周りの状況を調査した後、

最も数が多く、繁殖力が強く、栄養価が高い食材に疑態します。

これは食材の油断を誘うためです。


ゾンビは食材の油断をついてガブリと噛みつきます。

ゾンビのおなかの中にはワームホールがあり、精肉所のポータルと

繋がっています。こうして我々は新鮮なお肉を

手に入れられるというわけです」


「しかし、いくら油断をつくと言っても、食材から反撃を

くらうこともあるのだろう?バケツ一杯のゾンビで大丈夫なのかね?」


「その点においても問題ありません。ゾンビがガブリと

やるときには肉を食い千切るだけではなく、同時にナノマシンを

注入しているのです。食材に注入されたナノマシンは内部から

食材をゾンビに改造してしまいます。そしてゾンビの数が少ない間は、

優先的にゾンビを増やす行動をとるようプログラミングされています」


なるほどよくできているな、と何人かの役人がうなずいた。


「今日は食材入手の場面をご覧いただきます。こちらへどうぞ」

所長が次に案内したのは巨大な映像スクリーンと

黒々とした大穴のある部屋だった。


「この穴は食材を運び入れるポータルです。今日ご覧いただくのは、

最近ゾンビを送り込んだ地球という惑星の様子です。

この地球という星はとても珍しい星で、表面の多くが水に覆われています。

このスクリーンでゾンビの眼を通した映像を見ることができます」


所長が職員に命じるとスクリーンに映像が現れる。

そこにはゾンビが地球人を襲う様が映し出されていた。

やがてポータルにゾンビが食い千切った血肉が送られてきた。

役人の一人が肉片を摘み上げるとぺろっとつまみ食いをする。


「むっ!これは!所長!今回の獲物はアタリだな。実に美味いぞ!」

あわてて他の役人も肉片に群がる。


「まあまあ、あわてずとも肉は送られてきますよ。

それより今は地球の様子をみましょう。通常ゾンビは自律的に行動します。

しかし、こちらから遠隔操作も可能です。

どなたか試してみたい方はいらっしゃいませんか?」

「私がやってみよう」

一人の役人が挙手した。


役人にゾンビのコントローラーが手渡された。ゾンビのコントロールに

慣れるまでしばらく時間がかかったが、もともとそう難しいものでも

ないので、やがて思うままにゾンビを動かせるようになった。

役人の動かすゾンビは一人の地球人に狙いをさだめると襲い掛かる。


ポータルから血肉が送られてくると観衆もどっとわいた。

ゾンビは次々と地球人に襲いかかり、新たな血肉を精肉所に送り続ける。

役人たちもヒートアップし、そこだ!やれ!などと歓声を上げ始めた。

これで助成金は得られるな、と所長はにんまりとほくそ笑んだ。


「おい!あそこの地球人!何か乗り物で逃げようとしているぞ」

そこに映っていたのは、波止場からクルーザーで逃げようと

している一団だった。ゾンビの操作になれた役人はすかさず

逃げようとしていた地球人を襲い掛からせる。


しかし、ほんの少しだけ間に合わずクルーザーは発進してしまった。

ゾンビは襲い掛かった勢いを殺しきれずに走り続けるのだった。


「あ、落ちた!」

一人の役人が声を上げたが、それを言い切らないうちに

ポータルからあふれた海水が精肉所ごと吹き飛ばした。


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「フォン・ノイマン・マシン」 完

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