ストーリー14のステップと1-1.喪失と抑圧
前回までで対立構造の構築を行ってきたが、今回から対立構造を一連の物語に変換していく。
「シナリオの方程式」(江本あやえもん)に沿って、作業を続けていく。
対立構造の構築の次の作業は「ストーリー十四のステップ」への落とし込みだ。
以下、「シナリオの方程式」(江本あやえもん)より「ストーリー十四のステップ」を引用。
さすがにテキストで表現するのは無理だったので、画像を貼り付ける。
(あ、ちなみに今まで特に説明はしてこなかったけど、「シナリオの方程式」の筆者には、本エッセイを始めるにあたって引用の許可を取ってあるよ)
上の図だが、今まで三幕の対立構造の構築を行ってきたので、なんとなく意味がわかる。
このエッセイを始める前、プロットの作り方を勉強しようと色々調べたんだけど、そのときには三幕構成ってよくわからなかったんだよね。
例えば、wikipediaの「三幕構成」。これ、そもそも説明がわかりにくいし、創作に流用しようと思っても、まずできない。
なぜかというと、「三幕構成」の構築は作業としてはカッティングに近いから。
キャラがあって、イベントがあって、それをどの順番で、どう配置していくか、そんな感じに利用する場合はいい。でも、それは編集すべき素材がなければできない作業だ。
本当は「三幕構成」の構築の前にやるべきことがあって、それがないと「三幕構成」が利用できない。
過去に物語を作った経験がある人にとっては当たり前に知っていることだと思う。
でも、初めて物語を作ろうと思っている人間からすると「何か欠けてるぞ」と思いつつも、何が欠けてるかわからなくて、「三幕構成」をどう使えば良いかわからなかったのだ。
三幕構成の構築の前にやらなければならなかったもの、それが今までやってきた対立構造の構築だ。
さて、今後「ストーリー十四のステップ」への落とし込みを行うのだが、その前にまず「ストーリー十四ステップ」自体の説明をしておこう。
「ストーリー十四のステップ」はできごとを時系列で並べたものだ。時系列をいじったり、視点を変えたり……という作業はもっと後の工程だ。
十四のステップには、設定として決めておくが作品内で描かれない部分もあるだろう。どこから物語が始まるか、どこから描くか、誰の視点で描くかは別の問題だから。
まずは第一幕の説明から。第一幕は6つのステップからなる。「方程式」から引用する。
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・1-1.喪失と抑圧:ここで、第二幕対立関係で作った「喪失」と「抑圧」を配置します。
・1-2.問題を抱えた日常:ここから第一幕対立関係が始まります。ヒーローは問題を抱えながらも、毎日を生きている状態です。
・1-3.問題の発生:スペシャルワールドへ誘う使い(ヘラルド)が訪れて、ヒーローの長所が無効化され、犠牲だけが残ります。
・1-4.変化への抵抗:ヒーローは現状にしがみつこうとして、変化に抵抗します。しかし事態は悪化していくでしょう。
・1-5.問題解決方法の説明:犠牲に対して苦しんでいるヒーローは、その対処法を知ります。問題解決の糸口が見えますが、それには自分を変えなければなりません。
・1-6.問題対応の受け入れ:トリガーによって、主人公は問題対応をすることを受け入れます。同時にスペシャルワールドに入ります。
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裏事情を書いておく。このエントリの時点でできているのは、第一幕のプロットと本編「1-2.問題を抱えた日常」の一部だ。
このエッセイで第一幕のプロットを書いてしまったら、更新が止まりそうで怖い。
というか、第一幕は6つのステップは今まで大体書いてしまっているよね。
・1-1.喪失と抑圧
「方程式」から引用。
「ヒーローもシャドウも、最初の最初は対立関係のない完全な状態、いわば幸せな状態にいます。しかし何かしらの事件や出来事があって、大切なものを喪失してしまいます。両者共にそれを癒すことができず、その傷を回避しようとすることで、長所と犠牲という偏った特性を持つようになります。(省略)これらについて、喪失として何が起こったのか、そのためにどういう傷を負って、癒されなかったのかを書いておきます。」
では、本作の1-1を書いていく。
廃都の冒険者協会 1-1.喪失と抑圧
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旧世紀と呼ばれる高度魔法文明が滅んでから300年後、旧世紀の王家(魔王)だったゴルロール家は、表の世界に出ることはなく、ひっそりと隠れ暮らしている。
ゴルロール家には神代から伝わる使命がある。それは、魔王の中に封印された神と和解し、世界に返すこと。
魔王の位は代々直系が継いでいた。しかし、魔王は世襲制ではない。
魔王に必要なのは、魔法の才能だ。今までは単に直系の人間に魔法の才能があったため、世襲のように受け継がれてきたに過ぎない。
次代の魔王として選ばれたのは直系のレオではなく、分家のアランだった。
魔王継承の儀式が行われ、神の封印がアランに引き継がれる。
神の封印、それは魔素の無限吸収。
神の体は魔法の燃料である魔素で構成されている。魔素を吸収(MPドレイン)することにより神の活動を停止させる仕組み、通称「神殺し」。
「神殺し」を受け継いだアランは魔法を行使する能力を失う。
継承の儀式の最中にクーデターが起こる。王位を簒奪されたレオがゴルロール家の人間を殺していく。
あとはアランを殺して、「神殺し」の力を奪い返すだけになる。あと少しでアランを殺すところに、前当主より強制転移の魔法を掛けられ、遥か遠方に飛ばされる。
ゴルロール家は滅び、アランは天蓋孤独の身となる。
レオは「神殺し」の力で、ゴルロール家を再び世界の王へと復興させようとしていた。ところが、アランにすべてを奪われてしまう。
「もし、自分のもっと力があれば……」と力に対する渇望を持っている。
アランは望んだわけでもない魔王の位を引き継がされ、逆に自分の魔法を失う。
「力なんていらない……、こんなものなければ誰も死ななかったのに」
アランはそれから、自分の力や正体を見せることがなくなる。
冒険者となった後も、自分の実力を見せることを極端に嫌がる。パーティを組まないソロ冒険者として活動する。
ただ、本能的に全力を出したいと欲求はあるが、それも「神殺し」のために適わない。
意識に上ることはないが、ゴルロール家の使命を達成した後、全力を出して戦って、その戦いの中で死にたいと思っている。
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以上が過去の喪失と抑圧だ。ちなみにこの過去話、おそらく作中ではプロローグで軽く触れる、または回想シーンで出すぐらいだろう。
多分、まともには描かない。
一つアイデアがある。
こんな感じ。
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炎の燃え盛る中、傷だらけで倒れている少年。周りには血塗れで倒れている家族。
炎の中にたたずむもう一人の少年=魔王。
父親が少年に転移魔法を掛け、気が付くと知らない場所にいる。
少年は泣きながら魔王に対する復讐を決意する
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普通にこれを読めば、主人公の少年が魔王に復讐する話に見えるよね。つまりミスリード。
本当は主人公が魔王で、「少年」は敵なんだけどね。
まあ、このエッセイを読んでしまえばミスリードも何もないんだけど……。
次は「1-2.問題を抱えた日常」を。