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第一幕の対立構造

 昔、アガサ・クリスティーというミステリ作家がいた。

 「そして誰もいなくなった」や「アクロイド殺し」等の名作を書いた作家だ。


 アガサ・クリスティーに関して調べたことはないのだけど、おそらくこんな風にして創作していたのだろう。


 “色々な犯人のパターンを並べた後、一作一作それを潰すようにして書いた”


 ミステリの黎明期だからできた手法だ。残念ながら、現在ではパターンは出尽くしていて、そういう作り方はできない。


 ではクリスティーの頃のミステリのように、ネタが出尽くしていないジャンルってあるだろうか?

 なろう風異世界転生がその答えだ。


 異世界転生、つまり現実世界から異世界に行くわけだが、その際に何を持っていくか。

 そのパターンはまだまだ出尽くしてはいない。だから異世界転生をやるなら今がチャンスだ。


 前述したように異世界に何を持ち込むかを意識することが非常に重要だ。実際、異世界転生モノとして始まったものの、

 「先生助けて! 異世界転生という設定が息してないの!」という作品はよくある。

 異世界転生はチート能力取得の理由に過ぎなくて、以降転生設定は生かされてないっていうね。


 最近読んだものでは、日刊ランキングに上がっていた「冒険者パーティーの経営を支援します!!」(買い物コンサル+靴作り)や、完結済みから“内政”で検索した「異世界商売記」(石鹸作り!)なんかが現実世界から持ち込んだ知識で活躍する物語だった。

 今なら、まだ現実世界の知識を持ち込んで活躍する話は、出尽くしてない。

 例えば、保険営業員のおばちゃんが、フィナンシャルプランナーの知識を生かして異世界で無双する物語とか面白そうじゃない?

 それこそクリスティーのように、やってないパターンを書き出して、一つ一つ潰していくとか……。


 さて、枕はこれくらいにして……、今回は第一幕の対立を構築していく。

 前回の前提知識のおさらい。


 ・第一幕:スペシャルワールドに入るかどうかの対立

 ・対立構造を物語に変換するには「トリガー」と「昇華(止揚)」が必要になる。

 ・トリガーは安定した対立構造を変化させるきっかけのこと

 ・昇華は対立した問題の答えを得ること


 第一幕の対立(スペシャルワールドに入るかどうかの対立)に関しては、物語構造について調べたことがない人にとっても非常にわかりやすいと思う。

 とくにアニメをよく見る人にとってはね。


 例えば「けいおん!」

 主人公の唯は高校生になって、何かやりたい、やらなきゃという問題意識を持っている。

 そこで出会ったのが軽音楽部だ。ところが唯は楽器が弾けないという理由で入部をやめようとする。

 他のメンバーは唯を引き入れるために、演奏を行う。

 「あんまり巧くないですね! でも、なんだかすっごく楽しそうでした!」

 そして唯は入部を決める。


 特に部活モノはわかりやすいのだけど、こんな感じで主人公がスペシャルワールドに入ることを拒むというフォーマットは本当に多い。


 「けいおん!」の例でいうと、第一幕は

 ・唯の長所:軽音楽部に入らないことで他のメンバーに迷惑をかけない

 ・唯の犠牲:部活に入らないことで充実した高校生活を送れない


 ・軽音楽部他メンバーの長所:唯が入部すれば軽音楽部は廃部にならない

 ・軽音楽部他メンバーの犠牲:素人が入部することになる

 という対立になる。


 何もイベントが起きなければ、この対立関係は解消されずに安定し、いつまでも対立状態のままとなってしまう。

 この対立を解消するきっかけが「トリガー」で、「けいおん!」の場合は他メンバーによる演奏だ。


 トリガー:他メンバーによる演奏


 他メンバーの演奏があまり巧くないことから、唯は気軽に軽音楽部に入部を決めることができるようになる。


 昇華:軽音楽部への入部


 となる。


 では、第一幕の対立の構築を始めよう。

 方程式は以下の通り。

------------------------------------

***********************

ヒーロー:「(2-x)ヒーローである対象」が

「(3-1b)スペシャルワールドへの態度:(入る/入らない)」ことで

「(3-1A:S/M)ヒーローの長所」

 │

 対立

 │

「(3-1B:S/M)ヒーローの犠牲」

***********************

        │

        対立─「(3-1t)トリガー」─「(3-1c:S/M)スペシャルワード突入」

        │

***********************

シャドウ:「(3-1y)シャドウである対象(ヘラルド)」

***********************

------------------------------------


 上記の方程式は「シナリオの方程式」に書かれているものより簡略化している。

 削った場所は、シャドウ側の長所と犠牲の記述欄だ。

 それらはヒーロー側の長所と犠牲をひっくり返しただけのものだ。


 第一幕のシャドウはヘラルド(使者)と呼ばれることもある。ヘラルドはヒーローをスペシャルワールドへ誘う存在だ。

 ここでは「ギルド本部からの監査人」としよう。

 ある日、監査人がやってきて、「この支部は利益がでていない、早急に何とかしないと閉鎖だ」と宣言する。


さて、その後の流れだが、「シナリオの方程式」には、以下のように書かれている。

 「ヒーローはスペシャルワールドに進んで入ろうとはせずに、現状にしがみつこうとします。そのため、第一幕でのヒーローの長所については、テーマである象徴(2-A:S)(2-B:S)とのみが異なっていて、心の状態(2-A:M)と(2-B:M)については全く同じである場合が多いでしょう。」

 心の状態は同じ場合が多いということだが、ここでそれに逆らってまでやりたい(書きたい)ことは特にないので、(2-A/B)と(3-A/B)は同じにしよう。


 次に象徴の方を考える。

 普通、ギルドが閉鎖されるという宣言に対して、ギルマスなら何とかしようと動くはずだ。

 ところがそれを拒むということは、主人公が進んでギルマスという立場にあるわけではない(やらされている)ことを示している。

 もともと好きでやってるわけじゃないところに、上から文句言われたら、止めたくもなるよね。


 しかし、好きでやっているわけじゃないとしても、ギルマスであることのメリットはあるはずだ。

 ここは主人公が果たさなければいけない使命と絡めよう。

 ギルマスでいることによって、使命を果たすための情報が入手しやすい。それがギルマスでいることのメリットだ。


 トリガーをどうするかはある程度見えてるんだけど、まだ悩んでいる。

 とりあえずはこんな感じ。

 主人公が“冒険者ギルド憲章”を見る。そこにはこんなことが書かれている。

 「冒険者はときには命を掛けて依頼を遂行する。だからといって、依頼者にただ利用され、消費されるだけの存在であって良いはずがない。冒険者ギルドは依頼者と冒険者の間を取り持ち、冒険者の権利と尊厳を守る」


 主人公は冒険者の意義、そして今までの経緯を思い出す。


 冒険者は「死にたがり」だ(主人公も)。だからといって、自分の命を軽くみているわけではない。

 たとえ死ぬとしても、それが誰かを救う道になると思えば、悔いなく笑いながら死んでゆける。

 けっして、命の無駄遣いをしたいわけじゃないのだ。


 冒険者がそれこそ命を掛けて廃都を攻略し、街と冒険者ギルドを築いた。

 ここで街の放棄につながるギルド閉鎖はその苦労を無駄にすることだ。

 冒険者ギルドは冒険者のためにある。利益が云々とか、馬鹿にするのいい加減にしろ!

 

 これがトリガーだ。


 そして昇華は「主人公は冒険者ギルドを立て直すことを決める」となる。


 ちょっと文字数的に多くなったので、今回はここまで。

 第一幕の方程式は次回改めて提示する。


 PS.トリガーの項を書いているときにタイトルが浮かんだ。「ゆにおん!-廃都の冒険者協会-」

 なんで組合ギルドじゃなくて協会ユニオンにしたかって?

 そんなの「けいおん!」に似せるために決まってるだろ。全部言わせるなよ恥ずかしい。


 次回までにこのエッセイのタイトルも変えるつもり。

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