2−1
グレーの空から雨粒が落とされる音で目がさめた。
厚手の遮光カーテンを開けると目に映るビルも家も、道路も、木々の葉も雨に濡れていた。
雨か…、冬の雨って暖かいから、ちょっと嬉しいかも。
んっと背伸びをして、なはぁっと眠気をとばす。
今日は久しぶりに孝之に会える。
久しぶりすぎてちょっとにやけてしまう。
待ち合わせまでは後三時間、洋服選びに靴選び、整髪に化粧。
やることはたくさんある。
二度寝する暇は、ない。
パイピングの入ったモカ色のプリーツスカートと、黒いタートルに鮮やかな青ニットボレロ。
ちょっと長めのAラインのコートに柔らかなワンピース。
それともベルベットのジャケットに白いシャツ、厚めのタイツをはいて昨日の沙里みたいに軽やかに風揺れるようなシフォンのスカート…は、ちょっと寒いかな。
鏡の前とクローゼットを行ったり来たり、クルクル回っては、うぅむと唸る。
いつのまにかソファーの上に洋服の山ができている。
久しぶりに会うんだから、キレイだとかとか、可愛いだとか思われたい。
コイツが彼女で良かったって、やっぱり私を好きだって深く思って欲しい。
そして笑って。
私の大好きな、私の中に潜む影を全て吹き飛ばしてしまうような孝之の笑顔を見せて欲しい。
ただそれだけあれば生きていける、私のその想いが錯覚であると誰に言われても拒絶できるくらいに。
パールピンクの爪先も、長くカールさせたまつ毛も、全部愛されたいから。
何かが足りない私を埋めてくれるのは、孝之しかいないから。
孝之が放つ私への想いをスポンジのように受け止めて、ようやく私は私になれる。
更新遅れてて申し訳ないです。
しっかり、定期的にできるようがんばります。