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美少女くん。  作者: ミスト
第一章 美少女と仲良くなろう
3/12

美少女は気づいた

「こんな所で何をしている」

 そう言われて振り返ったオレが見たのは、小柄な人物だった。

 しかし、ただ小柄なだけじゃない。華奢。そう、華奢なのだ。透き通るように白い肌、小さく形の良い鼻と唇、憂いを秘めたつぶらな大きな瞳、肩口で切りそろえられた黒髪セミロングの真ん中分け。完璧なる美少女だ。

 だが男子用のブレザーとズボンを身につけているため、オレはその信じられない美形が野郎だということに気づいた。no,気づいてしまったのだ。

 まさか、こんな美人が男子なのかよ。

「何をしているんだと聞いてるんだ」

 美人はややいらついたように高圧的に言った。ハスキーな声がオレの鼓膜に突き刺さる。オレはハッと我に返った。

 そうだ、こいつは男子だ。ならば恥じらいやデレなど一切無用。「仲良く談笑してるだけですけど何か?」と堂々と言い返してやれ、晃範!

「逢い引きです「ちょっと待てえぇぇッ!!」

 オレのとっさの必死のツッコミに武者小路がきょとんとした顔をした。きょとんじゃねぇよかわいい顔しやがって! つーか逢い引き? 江戸時代の人かよ!

 美人がイラッとした顔になった。そりゃあそうでしょうね。オレはほっといたらますますくだらんこと言ってオレを困らせてくれそうなどうしようもない武者小路さんの前に立ちふさがり、美人と真っ向から向かい合った。そして後悔した。

 いやぁ、美しいって罪だね。

 オレはスペシャルビューティフルボーイを目の前にし、湧き上がる得体の知れない緊張と戦いながら引きつった言葉を絞り出した。

「オレたちはただの友人だ。逢い引きなんかじゃねーし、恐喝でもねーよ」

 美人がじっとオレを見る。なんだか値踏みされる食用牛になった気分だ。だが、美形に挟まれ逃げ場のないオレはひたすら我慢するしかなかった。畜生、美形共め。顔面格差を見せびらかしやがって。

 と、美人が呆れたように鼻を鳴らした。

「年上には敬語を使え、新入り」

 オレは速攻で頷いた。よくよく見ると名札の文字の色が赤だったので、確かに年上のようだ(オレたちの学年カラーは青)。ああ、悲しいかな、オレの中の美人を怒らせたくない・美人に嫌われたくない本能が働いてしまったようだ。そして気づく。美人の左腕に巻かれている腕章に。

 “生徒会執行部 書記”

 へええ、こいつ生徒会役員かよ。小さくて女子みたいなのにやるなぁ。オレたちに声かけたのも生徒会の仕事だったからか?

 そう考えると去っていく小さな背中に少しだけ好感が持てた。もちろん美人だったからじゃない。断じてそうじゃない。

「彼、生徒会役員のようだね!」

 なんだか常に楽しそうな武者小路の声がした。オレははいはい、そのようですねーと答えながら振り返り、相変わらずテンション高そうな武者小路を見た。こいつも相当な美形だが、さっきの奴も負けてなかったなー。

 と、武者小路がん? と首を傾げた。

「…何だよ?」

 オレの問いかけに武者小路は首を捻り、頭をかかえ、それから硬直した。

「そうか!その手があったんだ!」

「わっ!」

 急にわけのわからんことを叫んだ武者小路に驚いたオレは危うく階段を背中から転げ落ちそうになった。

「おどかすんじゃねーよ! オレが後頭部から階段滑り落ちて後頭部擦って後頭部ハゲになったらどうすんだ! お婿に行けねーじゃねーか!」

「生徒会だよ! 生徒会だよ晃範くん!」

 なんだか会話が噛み合わない2人。もともと何もかも噛み合ってないが。

 オレは顔を赤らめ興奮気味にまくし立てる武者小路を眺め、微かににやーとした。必死な美少女というのもなかなかかわいいもんだ。悪くない(この時のオレははたから見たらただのキモい眼鏡だったにちがいない)。

 武者小路がオレの腕を掴み、嬉しげに叫んだ。

「ボクたち二人とも生徒会に入るんだよ! そうすれば、生徒会の仕事という名目のもと公然といちゃつける! キミともっと一緒にいられる!」

 そしてオレに抱きついた。オレはまたしても1500のダメージを受けた。






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