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美少女くん。  作者: ミスト
第一章 美少女と仲良くなろう
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クラスメートに取り囲まれた

 武者小路忍に告られた翌日。教室に入るなりオレはクラスメートに取り囲まれた。え、何。何なの?

 オレがあからさまにキョドっていると、クラスの中でも一際目立つイケメングループの1人が探るように尋ねてきた。

「張君、昨日さ、男子トイレ前で女の子と話してたよね。あれなんだったの?」

 oh……もう広まっちゃってんのかよ……。ちなみにここは特進クラスなので、さすがに金髪のホスト風チャラ男はいない。そのかわりみんな冷静で狡猾……おっと失礼、とても賢いので、なんだか腹の内が読めなくて怖い。オレの偏見かもしれんが。

 だが、男子部女子部という名の頑丈な檻に閉じ込められ異性との楽しみを中途半端に奪われたなんだか煮え切らないオレたちにとって女子といちゃつくのは命懸けの行為だった。特にオレのような平凡な凡人(あれ、意味被り?)の場合は。まあ、チャラチャラ女口説くのが生きる意義のような奴らやモテて当然でしょ? みたいな顔したエリート君はしぶしぶ黙認されているが、オレの場合はそうはいかない。なぜなら平凡だからだ。それが全ての理由だ。

 オレは慎重に言葉を選びながら答えた。

「いや、オレもよくわかんねーよ。あいつ知り合いじゃなかったし。……人違い、じゃね?」

 うおお、イケメンの視線が痛い。つーか全員の視線が痛い。なんでオレがこんな目にあってんだ。畜生武者小路のやつ、今度会ったら気が済むまで文句言って散々罵倒してそれから謝ろう。オレは小心者だからな。

 あ、つーか今日もあいつに呼び出しくらってたわ。目立ちたくないからつきまとわないでくれと失礼にも勇気ある発言をしたオレに「ならここで逢い引きしよう!(どや顔)」とかわけのわからんこと言ってきて、しつこいからしょうがなく同意したんだっけ。ああー、マジないわ。武者小路といると調子狂いまくるから嫌なんだよね。クールなオレのイメージが台無しだよ。

 もちろん武者小路を本気で嫌っているわけではない。かわいいし、かなりかわいいし、超絶かわいいし。しかし、こちらは何の取り柄もないどこにでもいるありふれた超一般的平凡普通系男子高校生なのだ。それが急に美少女に告られる? そんな漫画のような展開に身も心もついていくものか。ついていきたくても、オレには無理だ。舞い上がりすぎて理性が機能せず恐らくはプーでパーのアレな人になってしまう。ような気がする。

 とにかくオレは厄介事を起こしたくない。そんなことを考えながら周りの突き刺さる視線に耐えた。めっちゃ耐えた。すると神の計らいか、ホームルーム開始のチャイムと共に担任の通称恵比寿が入ってきた。それに気付いたクラスメートが俺の周りから散っていく。オレはほっと胸を撫で下ろした。

 ありがとう、恵比寿! この恩は忘れないよ、恵比寿!

 オレは心の中でそう叫び席につくと、ちらりと例のイケメンを見た。確か杉内とかいう名前の奴だ。あいつは苦手だ。なんとなく。

 と、その杉内君がオレの方を振り返った。ぎくりとした。えー、なんかすげー怖い顔してた。顔はそうでもないけど、目が怖かった。

 とりあえずあいつには気をつけよう。オレは自分にそう誓った。




 オレはなんとなく、仕方なく、しょうがなく武者小路との待ち合わせ場所の例の体育館外階段に向かっていた。激しい部活動勧誘を退け、バカップルがいちゃいちゃくねくねしてる中庭を通り抜けて。ちなみにこの中庭は男子部と女子部の敷地を繋ぐ中間地点で、バカップルがバカっぽくいちゃつくことから通称恋人の園と呼ばれている(意外と普通のネーミング)。男子部体育館外階段はここの隅に位置するため行くにはこの恋人の園を通らなければならないので、すごく不愉快だ。不愉快ですとも。

 やっとこさあの不愉快な中庭を抜けて体育館外階段前にたどり着いた。よくやったよ、オレ。つーか来てんのか武者小路。これでいなかったら気が済むまで文句言って散々罵倒してそれから以下略。

「待ってたよ晃範くん!」

「ぎゃああッ!!」

 体育館外階段を上がろうとするとなんと! 美少女武者小路が飛びついてきた! 晃範は1500のダメージを受けた! 晃範は武者小路が意外と胸がでかいということに気付いた!

 とりあえずひとしきり驚いたオレは武者小路とだらだら話をすることにした。

「武者小路は部活かなんか入ってんの?」

 武者小路は首を横に振った。へえー、意外。運動部か演劇部っぽいと思ったが。

「君と一緒にいる時間を減らしたくないから」

 ……そうくるか。オレはリアクションに困りつつ次の話題を振った。

「兄弟とかいんのか? オレは妹二人と弟がいるけど」

 オレの問いかけに武者小路は何やら意味深な笑みを浮かべた。そして、ぐいと顔を近づけて

「どうしたの? 積極的じゃないか、晃範くん。もしかしてボクが好きになり始めた?」

「自信家ですねっ!!」

 オレは焦ってツッコんだ。近くで見た武者小路の笑みがあまりにも蠱惑的で綺麗だったからだ。やべーやべー、こいつのテンションに飲まれないようにしねーと。オレのキャラが崩壊しちまうよ。

 武者小路はそんなオレの反応に気を良くしたのか、ふふふとかわいらしく微笑んだ。なんつーか、もう、かわいいですね。とにかく。

 と、

「こんなところで何をしてる」

 という、ぞっとするような声が聞こえた。



 


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