美少女に告られた
個人的趣味入りまくってます。ボーイッシュな女の子とか肉食系な女の子とか出てきます。とりあえず女の子はどのタイプも好きです。そしてイケメンが残念です。自分でもびっくりするくらい。
また、かるーくですが同性愛や性的(主に下ネタ)な要素があります。所詮ギャグですが、苦手な方は気をつけてください。
※SCHEMERとのギャップがすごいです。注意してください。
「張晃範くん! ボクのお嫁さんになってくれ!」
「……はあ?」
入学式も終わり桜高校での生活にも徐々に慣れ始めた4月の終わりごろ、なんだか見知らぬ奴に告られた。しかも、男子トイレのど真ん前でだ。
おい、空気読めよ。オレ今まさにトイレ入ろうとしてたぞ。周りの奴らの視線もすげーし。つーか、
「なんで女子がここにいんだよっ!?」
そう、そうなのだ。一番の問題はそこなのだ。こいつが黒目がちでやや童顔で色白でショートカットのすげー美少女なのに『ボク』の『お嫁さんになってくれ!』とか言ってるってことよりも。
ショートカット女が満開の笑顔で元気に答えた。
「君をストーカーしてたんだっ!!」
……言葉を選べ。オレは何も言えずに目の前の馬鹿を呆然とみていた。
ここ、桜高等学園は、男子部と女子部に別れた半共学高校だ。まあ、簡単に言うと男子校女子校よりは異性と接触する機会はあるが、同じ敷地内に異性がいるのに使う校舎が違うので一緒に授業受けれない・一緒に体育祭出来ない・一緒に修学旅行行けないというなんとももどかしい高校だ。要するにほぼ男子校と女子校(が並んで立っているというだけ)の学園だ。ある意味生き殺しである。
また、学力と運動能力の差が極端に大きい学校でもある。瓶底眼鏡で色白ぽっちゃりでT大医学部志望とかいう奴もいれば頭七色に染めて鼻輪とかつけて「マジ合コンしてーし! ギャハハ!」とか言ってるヤンキー? ギャル? みたいなのもいる。現役プロボクサーとかプロピアニストとかもいる。とにかくいろんな奴がいる学校だ。
もちろんオレはごく普通の男子高校生だけどね。少し背が高くて眼鏡かけてるだけの。
なのに、そんなオレがなぜ。
「いいじゃないか! 結婚してくれよ! なあなあ、結婚してくれよ!」
とか言われてんだ。
オレは超真剣な顔で結婚してくれと連呼する馬鹿美少女に慌てて言った。
「いや、おかしい。まずあんたがここにいることがおかしい。女子は男子部の校舎に普通入れねーだろ? それに、結婚してくれ? オレあんたのこと知らねーし、そもそも結婚できる歳じゃねーし」
「なら婚約しよう!」
同じ意味だろーが。ドヤ顔で言われても困るんですけど。
ますます集まるオレたちへの「トイレ前でいちゃついてんじゃねーよ。つーか、え? 女子? なんで女子いんの?」みたいな非難と好奇をはらんだ視線が痛い。うわあ、焦る。
「よくわからんが、先公に見つかったら面倒だからとにかく場所移すぞ!」
「そうだね! さすが晃範くん!」
オレは早足に廊下を歩き始めた。女が嬉々とした目でオレを見ながらついて来る。正直げんなりした。美少女だが、ほんとになんなんだこいつ。つーかテンションたけーな。
オレたちは今、体育館外階段にいた。ここなら使う奴もまずいないし、人からもあまり見えない。オレはおっさん臭くよっこらせいと階段に座ると、隣にぴったり張りつくように腰かけようとした美少女を片手で制した。待て待て、近い。いくらなんでも大胆すぎるだろ。そもそもオレ的にあんた初対面なんだけど。あんまり近いと美少女を前にめっちゃドキドキしてるオレのハートの音が聞こえちゃうんだけど。
その元凶がはっとしたようにオレを見た。そして照れたように笑う。
「すまない、嬉しさのあまりデリカシーのないことを。親しき仲にも礼儀あり、だね!」
親しくねーよ、初対面だろーが。謎の女子はオレより少し下の段に優雅な挙動で座った。謎の女子の天然馬鹿っぷりにオレは少し冷静さを取り戻し、一番気になっていたことを尋ねた。
「えーっと、オレの知り合い?」
謎の女子は迷うことなく首を振った。頬を染め、やや恥ずかしげな顔をしている。おおう、なんつー美少女フェイス。中身はともかく。
「君はボクのことを知らないだろうな。ボクが一方的に君に恋慕の情を抱いていたから」
その割にしょっぱなから飛ばしてたな。無神経なのかシャイなのかわからん奴だ。告白の経験など皆無、ましてやおなごと会話したことすら数えきれるほどしかない恋愛スキル0のオレは、突然の告白にどう対応すればいいのかわからずしばし黙り込んだ。いや、嬉しいよ?すげー嬉しいけどさ? なんでオレ? つーかなんで男子トイレ前?
まあ、相手も緊張してるようだしオレも素直に言ってみよう。的な心理が働いた。
「……あー、わりぃ。こーゆうの初めてで、なんて言えばいいのか……。まあ、でも、気持ちは嬉しい……かな」
オレの歯切れの悪い言葉に謎の女子はパァと顔を輝かせた。後光が差し花びらが舞うような悩殺スマイルだ(オレはぶっ倒れそうになるのをなんとか耐えた)。女はそのままの笑顔で俺に言った。
「ありがとう……。呼吸困難に陥りそうなくらい嬉しいよ……」
「大げさだな。つーか呼吸困難はやめてくれ。保健室の場所知らないから」
謎の女子はくすりと笑った。
「大げさじゃないさ。今だって、この胸の高鳴りが君に聞こえはしまいかと心配なんだ」
詩人かよ。つーかイケメンだな。イケメンだなおい。美少女なのにイケメンなのかおい。
謎の女子は硬直するオレの前に立つと、真っ直ぐにオレを見た。アーモンド型の濡れた瞳に見据えられ、心臓がぎりりと痛くなる。あれ? なんだこれ。オレの心臓しっかりして!
謎の女子は柔らかい笑みを浮かべた。
「ボクの名前は武者小路忍だ」
緊張のあまり声がうわずるのを抑えながら、オレはとっさに返した。
「侍なんですか忍者なんですか?」
ええー何言ってんだオレ!
が、オレのトンチンカン発言をまったく気にする様子もなく、謎の女子は眩しすぎる笑顔で答えた。
「王子だ! 友だちにはそう呼ばれてるよ!」
そうくるのかよっ!
「AorB?」で「C!」なのかよっ!
オレは軽くパニクりながら頷いた。確かに雰囲気は『王子』だ。優雅な物腰といい、話し方といい。たぶん、女子部じゃ宝塚の男役のように相当モテまくってんだろう。
と、武者小路がオレの手をとった。その紳士然とした動作はまるで王子様だ。じゃあオレが姫? ふざけんなっ!
「ボクと結婚してくれ、晃範くん」
王子──武者小路忍が、甘くとろけるような声で囁いた。台詞は王子なのに、反則的なかわいさだ。オレはその作り物みたいに綺麗な顔をほうけたように見返すことしかできなかった。
夢でも見てんのか、オレは。
とりあえずこんな感じで続きます。ゆるーく楽しんでくれたら幸いです。感想などありましたらどうぞ!