プロローグ.『平和の反逆者達』
魔王軍と人類の大規模な戦争から15年、決着は着かなかったものの、両者大きく被害を出し、活発な行動はどちらも出来なくなっていた。
そしてそれは、ある意味平和な時代がやって来た事を意味していた。
魔獣や魔族は時折人類を攻め入ることはあるが、力のある魔王軍からの攻撃は無くなっていたため、エルルギ王国は穏やかな日常を暮らしていた。
「セグル勇者団一行が、魔王軍の幹部を討ち取ったらしいです。」
王国の騎士である男の報告に会議部屋にいる貴族達は一斉に眉間に皺を寄せた。
「...あまり、活発な行動は避けて貰いたいんだがな...。下手に魔王軍を刺激すると、また戦いの時代が起こる。」
「その通りだ。平和を崩そうとするのは逆賊に等しい。」
「どうせ魔王討伐もできない勇者団が、中途半端に魔王軍を減らして怒らせるから、前のような戦いが起こるのだ。」
「陛下、セグル勇者団、どうなさいますか?」
貴族達の言葉に対して、玉座に腰をかけるグリファ・エルルギ王は、深いため息の後言い放った。
「無論、捕縛しろ。」
その一言だけで、騎士達は一斉に動き出した。
「全く、勇者なんてものは厄介な存在だ、民衆にもてはやされ勝手に魔王軍に喧嘩を売り、勝手に死んで行く。怒る魔王軍の相手をしなければならないのは誰だと思っているのか。勇者なんてまるで、平和を壊す反逆者ではないか。」
王は暗い表情をしながら、死した勇者達に向けて冷酷な眼差しを向けるように、ガラス窓から空を眺めた。
「おっと、と言ってもお主は例外だぞ?勇者ハリベルよ。お主の力は『英雄』の名に相応しい。是非、魔王の首を取ってきてくれたまえ。」
と、顔色を変えて王の前に立つ青年に向けて言葉をかける。
そして、その相手である青年、勇者ハリベルは白いマントを揺らしながら王に膝を着き忠誠を誓う。
「ありがたきお言葉です、陛下。ご期待に添えるよう、全力で励みます。」
「期待しているぞ。」
そんな会話を、会議部屋で見やる貴族達、その端にいる女貴族、アビウス・エルルギは細い目で見やるのだった。
その晩、セルグ勇者団は騎士達に捕縛され、牢獄へと幽閉された。




