五人目:魔術師団長リディル
王国騎士団長ロザミアの話を聞けた二人。
これで四人と話をしたことになる。
二人を除くと最後の人物、リディルに話を聞く。
◯登場人物
サトリーヌ王妃
25歳。たこ焼き大好き。サスペンス大好きで好奇心旺盛。
セシリア
32歳。サトリーヌの専属女官。
カイン国王
30歳。異世界転移してきたサトリーヌの美貌とその才覚に惚れ、求婚し、めでたく正妻として迎えいれた。
ギルバート王弟
27歳。元々サトリーヌと婚約していたものの、他の女性にうつつを抜かしていたため、結局独り身。兄に多額の借金をしている
サーシャ
26歳。数年前に、ギルバートを誘惑し、サトリーヌとの婚約を破棄させた元凶。王城の炊事などを担当している侍女。
ロザミア
30歳。女性の王国騎士団長。カインの同級生であり、若き頃は良きライバルだった。
リディル
27歳。女性の王国魔術師団長。ギルバートの同級生。王国最強の魔力を誇る。
「ごめん、セッちゃん。申し訳ないんやけど、ひと言だけいい?」
どうせロクなことを言うに違いないと思うよ。大丈夫?セシリアさん。
「はぁ、なんでしょうか」
「ウチってな、25歳なんやけどまだまだ育ち盛りなんよ。それにこれからもカインちゃんを支えていくために元気をつけていかないとあかんのよね」
「で?」
ついにセシリアの返事がぞんざいになってきた。
「晩ごはんそろそろ…」
「挟みません!!」
「わかったわ…じゃあ次のリーちゃんが終わったら…」
「それは考えておきます」
まぁ、日々の激務とか、様々な周りからのストレスなどで、きっと疲れているし、せめて食欲だけでもちゃんと満たしてあげたいとは、思っていたセシリアであったが。ただ、サトリーヌを甘やかし過ぎると、それはそれで良くないこともわかっていた。
ドアの向こうで、二回、間をあけたノック音がした。そして、リディルが入ってくる。
「サトリーヌ様、こんばんは。セシリアさんも」
「リーちゃんハロー。最近の魔術の出来はどない?」
「んー…まぁぼちぼちですかね」
王国の女性魔術師団長であるリディルはサトリーヌと歳が近いこともあり、割と話し方も気安いようだ。ちなみに魔術の出来というのは、ベイルーン王国では、どちらかというと炎や水、風や土などの自然と融和したような魔術よりも、精神的なほう。たとえば人の感情を操作するような、怒り・悲しみ・安心・喜び・愛など精神魔法についてより深く研究されている。
その研究のリーダーを魔術師団長であるリディルが受け持っているというわけだ。
「ぼちぼちなのはいいが…さきほどからかけている、精神強化の術を解いたらどうだ?リディル」
「あ…バレてましたか。すみません、変な意味はなくて、あたし割とコミュ症なもんで。胃がやられないようにかけてたんです」
魔術師団長がコミュ症だなんてあるんだね〜!でも、そういう上の立場に立つ人のほうが、より色々なプレッシャーがあったりもするのかな?
「リーちゃん、そんな尋問とかをする気はないから、リラックスしてお話しよな。あ、さっきも飲んでたんやけど、ローズマリーティーやったっけ?あれにレモン搾って、はちみつ入れたらめちゃくちゃ美味しかったで。さっきのオヤツもまだもし残ってたらもってきてもらおか?」
「あ、いえ…お構いなく。で、用件は例の盗難のことですか?」
リディルは少し緊張した面持ちでたずねた。サトリーヌの代わりにセシリアが答える。
「そうだ。お前の前に国王陛下、ギルバート殿下、サーシャ、ロザミアは話し済みだが、先に何か言いたいことはあるか?」
リディルは少しの間目を閉じて考えた。そして、目を開けて口を開く。
「国王陛下と…カイン様とサトリーヌ様はもうお契りになったのでしょうか…?」
お契りて!!なんかオニギリみたいな言い方になってますけど。
「リディル…お前な…」
「リーちゃん、もっかい言うてもらっていい?そのカインちゃんとウチが…?」
「お契りに…」
「いやん、リーちゃんそんな恥ずかしいやんか〜!!もう契っては投げ、契っては投げやんか〜!」
いや、その千切るじゃねえよ!
「サトリーヌ様、リディル。話を進めますがよろしいでしょうか?」
「「はい、すみません」」
二人揃って反省している。
「まぁ、そのリディルの話を拾ってではないのですが、王家の血筋の者、およびその者と契りを結んだ者は、秘宝の効果を全くゼロではないが、かなり受けにくくなる、と言われてはおります。なので、先ほどサーシャが言っていた、王家の血筋と関係のない者が、更に容疑が濃くなるかもとは思われますが…」
「あっ、セシリアさん、それなんですけどね。サーシャがどう言っていたかわかりませんが、婚姻としての契りだけではなく、肉体的な契りを結んだ場合も、その秘宝効果の低減になるとしたら。その対象はまた広がるのではないですか?」
あ、そう言われたらそうだよね。そもそもまだ秘宝の力はみなさんには公にされていないわけなんだけども、みんなはどう思う?うーん、これは要検討だね。
「あぁ…まぁそれを言ってしまうと身も蓋もないのだが…カイン陛下はともかく、ギルバート殿下が過去に関係を持った人物を特定しようとすると、そのほうが難しいことになるな」
やっぱりそうなんだ。まぁ…人は恋をする生き物だから、生きてきた年数やその環境にもよるけども、生涯を誰か一人だけに捧げる人もいれば、複数の人と、関係を持つ場合もあるにはあるよね。て、なんの話だ!
「あ、リーちゃん、一個だけウチから聞きたいことあるんやけどね」
「はい、どうしました?」
「リーちゃん、さっき食事室を通った時に、今日の晩ごはんのメニューとか聞いてないかなと思って…」
セシリアは鋭い目つきでサトリーヌを睨んだ気がしたが…それはガン無視のサトリーヌ。
「あっ、全部は見てないですけど、メインはフライドチキンのようでしたよ〜。あたしサーシャの作るフライドチキン好きなんですよね!」
「おぉ!フライドチキン!!ウチ、それにちょっぴり粒マスタード付けて食べるんめちゃくちゃ好きなんやけど〜!粒マスタードリクエストしとこかな…」
ふいに、テーブルをドン!と叩くセシリア。サトリーヌとリディルが二人ともびくりとなる。
「話はもうないのですね。リディル、もう下がっていいぞ」
気まずい雰囲気の中、リディルが退室する。
「う〜ん、リーちゃんも特に怪しいところはなかったような気がするやんね。セッちゃんはなんか思ったりしたことある?」
「いえ、特になかったですね…さて、一通りは怪しい人物と思われる五人とは話しましたが。あとは私と、サトリーヌ様ですね」
セシリアは表情を引き締めてサトリーヌに話す。
「セッちゃんとウチ…あっ、じゃあさ、もう晩ごはんここに持ってきてもらって食べながらとか…」
「食べながらは…!あ…でもたまにはいいかな。もしかしたら話が長くなるかもなので、サーシャに少しつまめるような食事を用意させましょうか。フライドチキンもいるのでしょう?粒マスタードを添えて」
「あぁ…セッちゃん…マジ神やわぁ〜。ありがとう、ありがとう」
本気でサトリーヌはセシリアに感謝した。
ついに念願の。
念願の…晩ごはんではないけど、軽食を出してもらうことになったサトリーヌ。
ホントによかったね。
さて、セシリアとの話はどうなるのかな?
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次のエピソードで、物語のある程度の回答が出ることになります。
◯王家の秘宝の力とは?
◯そして秘宝を盗んだものは誰か?その理由は?
もしよかったら、みなさんも考えてみてください。
ちなみに感想欄には、考察、回答、推理、なんでも書き込んでいただいて大丈夫です。
あまりヒントもなく、そもそもの秘宝の力も伏せたままで考察もあるかい!という感じなのですがw
ここまで読んでいただいた段階での、皆さんの思い思いの意見や感想を聞けたらなと思いました。
次のエピソード9で回答編、ラストのエピソード10でエピローグとなります。




