隠し事。王族としては。
一通りの情報収集を終えたのちニコラと合流し、求めていたこの国で一番内情に詳しい男と話すことが出来た。
彼はギルドのメンバーでありつつも王宮に出入りが許された特別な人間であり、その実力もスベラル王国護衛団と何ら遜色ないと言う。
さらに、国王周りの事も熟知しており彼は前国王、つまりギルメイの兄の頃から王宮に出入りしていた為に王が変わってからの国の代わりようなども知っているのだ。
彼いわく、今の国王は推進派に変わって命を落とした前国王の意思を継ぎたいのか、それとも単純に武力による鎮圧が怖いのか、推進派の思想が強いらしい。
だが、スベラルもサブラスと同じで国民的には否定派の集まりだ。当然反感を買うだろう。
そこで、王は考えた。
国力と武力が一番のサブラスに戦争を仕掛け、勝った暁には国民は王様を認めざるを得ない状況になり、推進派になることに文句のあるやつは居なくなるだろうと。
国王は推進派による圧力に怖がった。国王は小心者だった。
だが、サブラス程じゃなくともスベラルは大きな国だ。
もし、この国が推進派を掲げてしまえば、推進派の力は増すだろう。
身体を機械に変え、永遠の命が手に入ると謳う推進派。
その実態は未だに掴めないが、少なくとも推進派が増えればこの世界は終わりだ。
人間が居なくなるのだから。
人類が淘汰された時、その時何が残るのだろう。そもそも、機械化してまで手に入れた命を持つものたちを人類としてカウントしていいのだろうか?
この世界に来て、まだモドキとは出会ったことがない。
だけど、ろくな目にあっていないことは確かだ。
そもそもの話、推進派になってしまえばサブラスと戦争して勝ったとしても、他の国が黙ってないだろう。
否定派の国は多いし訳の分からん技術を信用するなと愚の骨頂と謳う国だってある中、みんながみんな機械化を推進している訳では無いのだ。
国王はビビってるが故に推進派に取り入ろうとするが、ほんとにそれでこの国が救われるとは思わない。
むしろ、機械化の扱いに手を焼いている今の世界だからこそ、問題を先送りにしてことが進むなんてことも有り得るだろう。
人権はどこにあるのかとか、話してそれは人間なのかとか、その辺の諸々の課題だ。
そもそも、機械になっただけで永遠の命が手に入る、なんてのは美味すぎる話だ。
裏はきっとあるだろう。
そこら辺は、推進派をまだ目の当たりにしてないからなんとも言えないが、推進して機械化を遂げた先に何があるのかは知る必要がある。
もし、推進派の幹部や根幹にいる黒幕が黙ったとしても、僕には記憶を覗く力がある。
それを使って、無理にでも目的を聞き出すことは出来るだろう。
⋯まあ、推進派のトップがヒトガタとは限らないが。
ギルドでの聞き込みが終わり、当初予定した場所でギルメイとエルメロスと落ち合うことになっている。
時間的にはそろそろ二人も戻ってくるはずだと。
二人がこの街で何をしてたのかはニコラは教えてくれない。
なにか教えたらダメなところでもあるんだろうか。
教えちゃダメなこと⋯いかがわしいこと?
そんなわけないと思うから多分、合流したら話してくれるのだろうか?
こちらとしても、ギルメイと話し合いはしたい。今後のことについてだ。
おそらくギルメイが王座に座ることを考えてくれれば、すぐにでも争いは終わるだろう。
もっとも、ギルメイは否定派だし少なくとも推進派に乗り換えてもらうための戦争なんて起きないだろう。
宿を出て、国の真ん中の噴水地区で待機する。
しばらく待っていると、二人が顔を出した。
「すまない、待ったか?」
「いや、こっちも今来たとこだ」
ギルメイとニコラは何やら情報を共有しており、蚊帳の外だった。
そんな退屈そうな顔をしている僕を見かねてか、エルメロスが面白い話をしてくれた。
「そういえば道中で聞いた話なんだがね?」
「え?あ、はい」
「各国に推進派のスパイがどうにも紛れているらしいよ」
「各国に?」
その話を聞く限りサブラスはスベラルも例外では無いらしく、まだ足取りは掴めていないが存在しているらしい……って、なんで知ってるんだ、そんなこと。
「いやね、ニコラに頼まれてたことやってる道中で怪しいヤツとっ捕まえてね。そいつがたまたまスベラルに潜伏してるスパイだったって訳!」
「とっちめたんですか!?」
「危ないことはしてないよ?ギルメイが威嚇したら吐いてくれた」
スパイというからにはやはりモドキなのだろうか。
いやでも威嚇でビビったってことはヒトガタの可能性もあるな⋯どちらにせよ留意しておいた方が良さそうな情報だ。
スパイが入れば記憶を覗くことも可能だったろうが⋯
どうやらスパイはこの国での悪事をしない代わりに、なにかしらで脅されたらしい。ビビりまくってチビってたって話だ。
何をしたんだろうか、あの二人⋯
「面白いことにね、そいつはヒトガタだったんだよ」
「モドキじゃないんですか?」
「らしいね。僕たちも最初は驚いた」
推進派、とひとまとめにしていても色々派閥があるらしく、スパイをしていたヤツは推進派から高い金で雇われた推進派でも否定派でもない一般人らしい。
自分たちの足のつかないように⋯ということだろう。
身を隠すなら徹底して、という向かうの宣言みたいなものなのだろう。
推進派、思ったよりも厄介かもしれない。
エルメロスとの話が終わり、ニコラ達の話も終わったところで本題に入った。
ニコラが二人に支持していたのは、この国におけれ「大臣」の存在の調査だったらしい。
どうにも前国王の思想の変化には大臣が絡んでいる、というのを耳にした為、その大臣の情報を漁っていたらしい。この辺は、ギルドでは情報が出回らないため二人に任せた、ということだ。
ギルドは国の経営する組織であるため、そういう王宮内のいざこざは情報統制されているだろう。
それに、王宮に詳しいのはなにもギルドだけではないし二人は自由時間でその調査をしてきた、とのことだ。
そして、エルメロスは先程からギルメイを見つめている。
「つかぬ事を聞きますが、テオさん」
「なんですか?」
「ギルメイさんの記憶、見ましたか?」
「いや、見てなーー」
「正直に答えてください」
ああ、これはエルメロスは知っているんだろう。ギルメイの過去を。
調査しているうちに自然と耳に入ったのか、それとも最初から知っていたのか。
エルメロスは厳しい顔で僕を見つめると嘘は許さない、と。
「はい、見ました」
「ならあのことは知ってますね?」
あのこと、は恐らくギルメイがスベラル王家のものである、ということだろう。
ここで嘘をついて空気を悪くしては元も子もない。素直に答えるのが正解だろう。
「知ってます。僕も、知ったのはさっきですが」
「でしょうね。訓練中はそこまで記憶を遡らなかったようですし」
訓練中に見た記憶はメモリーストーンになったし、それは今はニコラが保管している。
そこで見た記憶にはギルメイの過去はなかったし、それは全員が確認したので知っている。
「本人には酷でしょうが、その事で相談、ということです」
ああ、どうやら隠しきるというのは無理らしい。
もっとも、時間の問題だとは思っていたが。
「ふう、さて。エルメロス、ギルメイから話は聞いた。今後のことをーー」
「その前に。私からいいですか?」
エルメロスは僕にアイコンタクトを送ると、話してもいいですよね?と言わんばかりに睨みつけてきた。
ギルメイには悪いが、僕もここは彼の本来の地位を利用する他ないと思う。
この国には元々戦争を止めるために来たのだ。使えるものは何としても使いたい。
本人もそれが分かってて苦悩していたんだろうし、今更かもしれないが。
「話?大事な話か」
「ええ。今回の旅の目的、テオくんの手を借りずとも何とかなりそうです」
「それはホントか!」
そういうと、ギルメイの顔色が少し悪くなった。多分、何となくで察したんだろう。
「ということで、ギルメイさん。洗いざらい話してもらおうか」
そういうとギルメイの目が泳ぎ、必死に僕に何を話したと言わんばかりに目配せしてきた。
だけど、今回に関しては僕は何もしていない。
エルメロスが調査中にたまたま知ってしまった、という感じだし。




